メダカの呟き

庭の隅に小さな池がある。池と云うよりは水瓶である。睡蓮を育てているというほどのこともなく、水中に沈めた鉢に幾株かを植放してある。昨夏には何輪かの花も咲かせた。 昨年の夏前に息子が縁日でメダカを何匹か買いもとめ、この水瓶に放った。 しばらくはゼロ歳児の娘と楽しんでいたが、いつのまにやら誰の記憶からも忘れ去られていた。

先ほど、何気なしにのぞいてみたら、暖かくなった日ざしに誘われてか、三匹のメダカが泳いでいた。水瓶のなかで夏と冬を越したようである。 真夏にはぬるま湯くらいには水温が上がるだろうし、真冬には氷が張る水瓶のなかで、耐え過ごした三匹のようである。 しばらく覗いていたが、一冬を越して水面に浮かんでくるのは三匹だけのようである。 もともと年魚といわれるメダカである、この夏までながらえるのか、それとも孵化する子孫があるのか、いずれにしても転変有為なきメダカは何を思うのかと柄にもなく考えた。140409medaka

メダカの呟きを聞こうかと思ったのには訳がある。 それは、昨夜「TED Talks」に嵌っていたからである。《TED:Technology Entertainment Design
なかでもPlaylist「Are we alone in the universe?」を見ていたから、470億光年の彼方にまで広がる宇宙には無数の恒星と、恒星を巡る惑星が存在し、宇宙に溢れている有機物質の量からすれば、生命の存在はありふれたものである可能性は高いという「御伽噺」を聞かされていたからである。 地球や人類が特別なものとか、選ばれたものなどというのは烏滸がましいことであり、130億年の宇宙の歴史のなかで、たかだか数万年に過ぎない、有史という意味では1万年にも満たない歴史しか持たない人類の思い上がりに過ぎないと聞かされたからである。

健気に一冬を生き抜いたメダカに比べて、「文句があるなら次の選挙で落とせばいい」と嘯いた安倍総理はなんと傲慢な方だろうと思った。 彼が嘯いた《うそぶいた》時に、とても大きな違和感を感じた。しかし、違和感が何からもたらされたのかが思い浮かばなかった。
※正しくは、憲法解釈について「最高責任者は私。その上で選挙で審判を受ける。」と2月12日の国会にて答弁したのである。 (直前国政選挙で大勝した驕りが云わせたものであろう。)

国政選挙で三分の二に近い多数を与えたとしても、4年間の無制限な権限を彼に与えたわけではない。 安倍自民党の総選挙勝利は民主党の自滅によるところが大であろうし、安倍自民党が公約した事柄への支持を与えたに過ぎない、それも国会の審議を経ることを前提とするものであろう。 しかも安倍自民党を支持した選挙民の多くは経済回復は期待しても、解釈改憲まで願ったとも思えないし、総理に解釈改憲の権限を与えたとも思えない。 野党支持者と棄権した選挙民のことを考えれば、「文句があるなら次の選挙で落とせばいい」とは、とても言えないことであろうと考える。
※この件に関して、内田樹氏の「赤旗日曜版のインタビュー」と題する記事は、示唆に富むものである。
※白川勝彦氏も集団的自衛権についての論考記事を公表している。

日米安保は片務契約だから集団的自衛権を認めることで双務契約へ移行し普通の国になりたいと安倍総理とそのお仲間は言うのであるが、日米安保は決して片務ではない。沖縄をはじめ首都圏にも横田基地や横須賀基地など大きな米軍基地を貸与しているし、いわゆる思いやり予算も提供しているのである。 なによりも米国が片務契約であり割に合わないと考えるのであれば、日米安保条約の解消を求めてくるであろう。

《安倍総理がことあるごとに言及する「有識者会議」というものがあるが、この有識者会議なるものは法令のバックアップも国会の承認もない、安倍晋三氏のただの私的諮問会議である。 いうなればお仲間やお友だちからなるワイワイガヤガヤ懇談会なのである。 とても有識者会議などといえる代物ではない。 アベノミクス=アブナイミクスなのであり、有識者会議=お仲間座談会なのである。 籾井NHK会長や百田NHK経営委員は安倍晋三氏のお仲間なのであり、第三者性を有する有識者などではないが、NHKはこれに言及しないのである。》

昭和憲法の前文と第九条は、平和を指向する日本の文化的財産でもあると考える。 集団的自衛権の解釈改憲や武器輸出解禁、特定秘密保護法、原発輸出など安倍内閣の目指す方向は、軍事国家指向であり、戦前の日本への回帰なのである。

消費税が増税されたけれど、この機会に様々な生活物資の値上げが続いているようである。考えてみればアベノミクスの帰結として当たり前のことである。 異次元の金融緩和と財政政策は大幅な円安を誘導し、公共事業の増発を行った結果、原油や小麦をはじめ輸入商品の値上げを招いて市民生活を圧迫するのである。 円安による輸出拡大効果は一部企業の増益と株高を招いたが、その多くは市民には無縁のものである。 公共事業の増発は、縮小していた土木事業者に繁忙を与えたものの、急激な拡大は資材と労務費の高騰を招いたのである。 何より問題なのは、その土木業者の繁忙と資材の高騰が、それでなくとも遅れている東北震災復興に少なからぬ影響を与えていると云うことである。

ここまで分析してみれば、舌足らずな物言いをする三代目お坊ちゃんの笑顔に隠して、安倍内閣が何を指向しているのか自ずと見えてくるのである。 安倍内閣が指向するのは、輸出産業、兵器産業、原発産業の増収増益なのであろう。 その挙げ句に教育改革を目論み、戦争のできる国家を目論むとしたら、こんな内閣を選挙で支持した国民の咎は大きいものがあるといえよう。 ところが最大の輸出企業であろうと思われていたトヨタ自動車グループにおいてさえ、2013年生産台数が史上初めて1千万台を突破したというに、グループ輸出台数200万台は微減だという。アベノミクスのトリックは既に破綻していると云えるのである。

季節はずれですが、昨夏のスイレンの花を再掲します。《2013.06.26 撮影》130626suiren

 

 

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