大学入試センター試験初日の今日、全国的に雪模様の予報は当地でははずれた。朝方は小雪が舞っていたけれど今は《2017/01/14 08:30》晴れ間がのぞいている。とはいえ北陸など日本海側では豪雪模様のようである。毎冬、降雪渋滞やインフルエンザ蔓延などのニュースと一緒にセンター試験開始を知らされると、この試験の時期をなんとかできないものかと思わされる。三月四月への繰り下げが無理なら十月十一月への繰り上げができないものかと思わされる。
数十万人の若者たちが一生に一度のチャレンジをするに相応しい季節と云うものがあるだろうと思うのは老人の感傷だろうか。若さが有れば寒さなどは吹き飛ばすだろうし、風邪に注意するという自己管理も挑戦の一つではあろうけれど、然は然り乍らと思う。
冬枯れという季節が為さしめるのであろうか、それとも為すことが無いから過去の記録《”鄙からの発信”や”母の旅支度”など》を読み返すことが多いからだろうか。「2017」と記すたびにまた新しい年を迎えた、また今年も生きている生き延びているなどと思うのである。
記録から蘇る父母や友などの面影を偲んでいっときを過ごしてしまうことがしばしばなのである。デジタルサイトというものは便利なものであり、一つの記事から関連する記事へとんでみたり、タグから過去記事を読んだり、過去の記事一覧から数年前あるいは十年前のある月の記事へとんだりしていると、由無しごとの澱の底に沈んでいた記憶が蘇ってくる。
「母の旅支度」というのは、母が病床に就いた頃からの日記である。いまは「晴耕雨読」と名前を変えて間遠ながらも記録し続けている日記である。「鄙からの発信」であれば最大18年前、「母の旅支度」であれば多寡だか7年前のことであるのに、すっかり忘れていることが多いのに驚かされる。老いると最近の記憶が残らないとは云うけれど、それにしても憶えていないことの多さに驚くのである。
こんな埒もないことを記すのは、来年にあるいは再来年にこの記事を目にすることがあれば、なにを思うだろうか考えるだろうかと思ってのことである。昨日に同じく変わらぬ日々を過ごしているように見えても、その底ではやはり何かが変わっている。変わってゆくという実感が少なからず有るからなのである。
《中略》
年年歳歳花相似 年々歳々 花は同じく咲くのに
歳歳年年人不同 歳々年々 人はかわってゆく寄言全盛紅顔子 若い盛りの 少年が指して言う
應憐半死白頭翁 白髪頭の爺さんは 気の毒だと
此翁白頭真可憐 こんな白髪の爺さんだって
伊昔紅顔美少年 昔は美少年だ いずれ君だって
《中略》
一朝臥病無相識 ひとたび病に臥せば 見舞客も無し
三春行楽在誰辺 あの日の賑わい 今いずこ
《『代悲白頭翁』 劉廷芝(唐詩選)《茫猿超訳》》
「年々歳々花相似たり 歳々年々ひと同じからず」という常套句は、「鄙からの発信」初期からよく引用しているが、ほぼ全文を引用したのは2011/04/08 そして2015/03/31 に再び引用している。いずれも鄙桜の季節に引用している。2015/03/31 には「もの憂さの源はどうやらこのあたりのようである。それにしても齢をとるということは愚痴っぽくなるものだ。」と記している。
“歳々年々人不同”とうつろいゆく歳月を詠じたのは2010年代までの頃、”此翁白頭真可憐” と少しばかり強がっていたのは2015年くらいまで、今や”一朝臥病無相識 三春行楽在誰辺”が実感を伴って眼に映るようになったのであろう。五年と云わず来年はこの詩をどのように読むのだろうか。”惟有黄昏鳥雀悲”の終句を、どう読みどう感慨するだろうかと思わされるのである。
《今朝の蠟梅》昨夜のNHKニュースで「梅が咲きました」と季節だよりで、”蠟梅”の花を映していた。ロウ梅とも唐梅とも云うけれど、梅はバラ目バラ科サクラ属の花木、蠟梅はクスノキ目・ロウバイ科・ロウバイ属であり、まったくの別種である。今朝の蠟梅は雪をのせて透明感を増している。
今日は朝から雪模様であるが、昨夜は夕刻から吹いていた風も止んで空は澄み渡っていた。夜空には十六夜の月が煌煌と輝いていたし、星もよく見えていた。凍てつく寒空ながら、何やら美しい夜だった。
母の亡くなる前、二十日間ほどの日記を読み返してみた。痩せ衰えた母が、それでもトイレだけは自分で為そうと今際の気力を振るう様を思い出した。軽くなった母を抱いてトイレを使ってもらったこと、白湯を含んだガーゼを唇に当てたことなどは思い出したが、その頃の母の顔は思い出せない。思い出すのは、病床に臥す一年も前に写した最後の写真の顔だけである。 病床の母を撮っておけばと思わないでもないが、いやあの頃の写真など無くて好いのだと思い返している。
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