土佐”電”日記-3

2017/12/19 12:00 土佐電伊野線踏破から戻った茫猿は、島に暮らす次男とホテルに残した妻と待ち合わせて、高知観光に出かけるのである。行く先に特段の希望がない茫猿と妻は、次男の運転する車にすべてを委ねるのである。したがって、観光定番の高知城も桂浜も妻が希望しないので割愛するのである。唯一、はりまや橋だけは前夜にチョイと立ち寄ったのであるが、ホテルで見た”手書きパンフレット惹句”のとおりに、ポケットパークのような場所に復元されている”有名だけれど期待には及ばない”小さな赤い欄干橋だった。

この度の土佐電探訪の旅を企画した時に、久しぶりに離島に住む次男の暮らしぶりを夫婦で訪ねてみようと知らせておいたところ、車で市内を案内しましょうと高知までやって来てくれたのである。

昼飯を何処で摂ろうかと彼が尋ねるけれど、朝食をとって間がない妻は特に慌てないと言うし、私にしても朝食は欠かさないけれど昼は抜くことも多いから、昼は程々にして夕食を楽しむこととし中土佐町へと車を走らせるのである。目的地に近くなってわかったことであるが、中土佐町というから何処か判らなかったので「久礼(くれ)」と知れば、「カツオ漁で有名な彼処か知れるのである。

1975年から1986年にかけてビッグコミック誌に連載された「青柳裕介作・土佐の一本釣り」の舞台が漁師町久礼なのである。1975年といえば、岐阜市に不動産鑑定事務所を開設してまもない頃である。日々、休憩に立ち寄る今小町交差点角の喫茶店で毎週の新刊を楽しみにしていたことを瞬時に思い出した。「カツオ漁師純平と二つ歳上の姉やん八千代」の青春日記の世界を欠かすことなく読み続けていたものである。いつからか多忙にかまけて読み続けなくなったこの「純平・八千代」の成長日記の後半を、旅から帰った今、ネットで改めて追体験するのである。

その舞台の一つでもある久礼大正町市場である。市場通り入り口には赤い丸型ポストが鎮座している。画面左の店舗は木造三階建である。延長100mにも満たない細い路地の商店街両側は魚屋が連なっている。店先には水揚げされたばかりの大型のカツオと中型のブリが並んでいた。《共に体長70〜80cmくらいの》カツオは一尾12,000円、ブリは15,000円の値札が付けられていた。

太平洋に面する久礼町は南海地震による津波襲来の危険が常にある。通りの電柱には安政元年の津波到達位置が記されていた。《高知市内で見かけたマンションの分譲広告には、津波が到達しない高台に位置することが大きく掲載されていた。》
  

久礼市場をざっと眺め、近くの”道の駅中土佐”内の風工房というお店で遅い昼食をとり、次の目的地に四国霊場31番札所・五台山竹林寺に向かうのである。高知に来たのであれば八十八ヶ所の1ヶ寺くらいはという心づもりである。長い階段と石畳坂道だったが、境内の閑かさも山門や本堂の佇まいも心地好いものだった。
  

五台山を降りて市内に戻った茫猿一行はホテルに車を預け、夕食を求めて帯屋町・ひろめ市場に向かう。ひろめ市場とは土佐藩の家老であった深尾弘人蕃顕(ひろめしげあき)の屋敷跡「弘人(ひろめ)屋敷」に由来する。市場には和洋中様々な飲食店が約40店舗、物販店が約20店舗混在する屋台村施設である。入場するとまずテーブルを確保しておいてから、好きな店から好みの料理を買って楽しむのである。

食したのは、カツオ塩たたき、ドロメ、土佐鶏から揚げなどである。ドロメ《イワシの稚魚・土佐方言》はドロメ丼にしたいと思って購入店でご飯を尋ねたら、売り切れたからあちらの店で買ってくれと言うのである。まさに一皿づつ買い求めて楽しむ「ひろめ市場」なのである。数人の若者グループもあれば、数人のおばさん《昔ハチキンだっただろう?》グループもあれば、茫猿たちより年配と見受ける老夫婦もいる。可盃《ベクハイ》箸拳《ハシケン》で有名な酒豪土佐ならではのひろめ市場の賑わいである。

連夜のカツオ塩タタキであるが、この夜に家内が買い求めた塩タタキはプレカットされて白い発泡スチロール皿に載りラップされたもの、次男がテーブルに運んできたのは注文を受けてからカットされ美しく盛り付けられた一皿である。もちろん値段も違うが、三人が異口同音に旨いねと口にしたのは次男が運んだ皿。久礼大正市場で見かけたカツオも次男が運んできた皿と同じ味がするのだろう。

「鄙からの発信」では定番となっているものの、旅に出ることが少なくなった最近では収集すること少なくなった「蓋」である。左が高知市、右が伊野町の蓋である。
  

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