奈良・西ノ京駅を降りれば

夏が過ぎ秋の気配が濃くなり始めた過日、奈良に小さな旅をしました。 2014.09.17朝8:34、パートナーと二人 岐阜羽島駅を発ち西へ向かうのである。京都駅にて09:24発橿原行きの近鉄電車に乗り換え、10:11近鉄西ノ京駅に降り立つ。西ノ京駅を降りれば薬師寺門前は指呼の距離にある。

薬師寺は閑静だった。駅前から薬師寺に至る道筋をはじめ、そこかしこに萩の花が咲き、訪れている人はまばらだった。凍れる音楽と称された東塔こそ解体修理のために覆屋に覆われていたが、金堂も西塔も回廊も再建当時のまばゆい朱丹や岩緑青を、それぞれ三十年近くの歳月、雨風にさらされることで落ち着きを増し、古都の風景に溶け込もうとしているかのごとくでした。DSC08432

薬師寺金堂が再建される前だったか、再建間もないころだったかは記憶に無いが、岐阜市今小町に茫猿がよく昼食に通った讃岐饂飩の小さな店があった。その店で高田好胤師とすれ違ったことがある。 好胤師が写経勧進に歩かれる途中、岐阜にも立ち寄られ、誰かが昼食にこの饂飩屋へ案内されたのであろう。茫猿が薬師寺に関心を抱く最初のきっかけだったと憶えている。

薬師寺へは数度訪れている。奈良の寺では一番多く訪れている寺である。 金堂・西塔再建ののちに、大講堂・回廊再建ののちに、玄奘三蔵院伽藍と平山郁夫画伯の手になる大唐西域壁画殿が落慶したのちにも訪れている。訪れるたびに好胤師の温顔を思い出し、自らの若かりし日々を憶い出している。 こたびは思いがけない出会いがあった。自坊からお出でになる途中だったのであろうか、中門をくぐって境内を歩いてゆかれる安田暎胤薬師寺長老にお会いしたのである。 なんの面識も持ち合わせないことだから、立ち止まって老師に深く会釈を差し上げただけのことであるが、のどかな秋の日ざしが満ちている静かな境内をゆっくりと歩いてゆかれる暎胤老師のうしろ姿を見送りながら、得難い出会いを感謝したのである。

金堂に祀られている薬師三尊像を拝観した茫猿たちは、薬師寺北の興楽門から真っすぐに北へのびる道をたどって唐招提寺へ向かうのです。道の両側に老松が並ぶ幅4mもない一本道は行き交う車も少なく、とてものどかな散歩道でした。 時刻は昼近くなり、私たちを追い抜いてゆく修学旅行生のグループも少しはいましたが、喧噪というほどのこともなく、両側の築地塀やあいまにのぞく稔りはじめた稲田や由緒ありそうな民家を見るともなく眺めながらの道筋は心豊かにさせるものでした。DSC08434

前回、薬師寺を訪ねたときに唐招提寺は平成大修理の最中で拝観はかないませんでしたが、この度は修理再建なった天平伽藍を拝観できました。写真でなじみのある金堂の鴟尾も優美な勾配をみせる大屋根もたんのうできました。DSC08441

唐招提寺といえば開祖鑑真和上坐像が有名であるが、和上像は秘仏であり普段は拝観できない。その「お身代わり像」としての模像が美術院国宝修理所によって制作されて開山堂で公開されている。青いスクリーン越しに拝観する和上像は穏やかな笑みをたたえて堂内におわしました。DSC08437DSC08439

 

唐招提寺を出れば時刻はもう昼過ぎになっていました。早朝から新幹線、近鉄線と乗り継ぎ、薬師寺境内から唐招提寺境内へと休みなく歩き回りましたことから、常のとおり朝食抜きのパートナーは空腹と足の疲れを全身から漂わせています。拝み倒して奈良行きを承知してもらった身としては、どこかで休息兼昼食を求めなければなりません。ふと浮かんだのは薬師寺から唐招提寺へ向かう道すがらにあった、一軒のそば屋です。店構えも設えも好ましく見ましたから、昼はここでと決めて暖簾をくぐったのですが、大あたりでした。DSC08447

カウンターに案内されて注文したのは婦唱夫随でお昼セットです。ざる蕎麦に天ぷらと押し寿司がついて確か1,200円でしたか? 一つ一つのあしらいも小ぎれいで寿司も揚げたての天ぷらの味も納得できる旨さ、細めのソバも水準以上の美味しさでした。実は、こののちに麺類を食する機会が二度ほどありましたが、「よしむら」の名残りを損なうのが嫌だから、麺類は注文しないで茶粥などを食したのは茫猿で、麺類を食した家人はその都度「よしむら」はおいしかったという感想を漏らしていたことです。DSC08442
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天ぷらも有ることだから蕎麦屋の昼酒と思わないでもない茫猿ですが、九月半ば過ぎとはいえ日ざしは結構厳しいし、何よりまだまだ歩くことを考えれば、ここは我慢と店内を見回しますと、面白いものを見つけました。毎年五月に行われる唐招提寺のうちわまきでまかれる宝扇とおぼしきものを見つけました。尋ねますと境内でまかれる団扇とは異なって特別に授かる団扇と聞きました。DSC08444

腹ごしらえと十分な休息を得た茫猿たちは、近鉄西ノ京駅にもどり西大寺駅経由で近鉄奈良駅へ向かうのです。 今回の小さな旅の目的の一つ興福寺・阿修羅像との再会、そして家人が楽しみにする「吉野葛切り」を味わうのがこの日午後の旅程なのです。

 

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