慶事 その後

《何の脈絡もないけれど》岐阜県士協会慶事祝賀会から一夜明けて、今朝の中日新聞一面では安全保障関連法案(戦争法案)の審議入りを伝えている。個別自衛権に行使を限定しもっぱら専守防衛に特化してきた自衛隊が、集団的自衛権行使に踏み込み、同盟国対象の兵站行為や機雷除去という軍事行為を行おうと云うのである。

皮肉なことであるが、兵站補給行為は重要な作戦行為でありながら、旧日本軍では軽視された作戦行動でもある。安倍内閣も兵站補給行為は戦闘作戦行動にはあらずという見解において、旧日本軍と機軸を同じくするのかもしれない。

朝刊一面には並んで、空き家対策特別措置法の施行も伝えている。空き住宅について固定資産税の軽減優遇策の除外も行える空き家対策の実施が本格化する。この特措法の運用は、軽減税制を隠れ蓑にしてきた中古住宅の流通市場を大きく変化させるかもしれない。

昨夜の祝宴席上では、岐阜県士協会が取り組む新しい野心的なプロジェクトについて聞かされたのである。取引価格情報を含む広汎な不動産情報を基盤とする統計会席的な分析をとおして、DI調査と対を為す不動産指数を作成しようと云うものである。びわ湖会議に触発されて、岐阜会は岐阜会なりに独自性と協調性を念頭におきながら、びわ湖会議成果をフォローアップさせようと意図するものと伺った。

事業の具体的な内容は未だ詳らかではないが、察するところ岐阜県士協会が保管する1990年代からの不動産取引情報データも含めて、取引情報から見る二十年間の地価推移を検証しようというものである。 これは複合不動産資料の統計的利用につながる研究でもあり、評価演算モデルの作成なのでもあろう。 不動産評価のアルゴリズムを構築しようとする壮大な意図を秘めるものと期待したい。 同時に地理情報とのリンケージは必須であろうし、Webデータの活用も自明なのであろう。

折しも、日本マイクロソフトとリクルート住まいカンパニー(SUUMO)は5月25日、地図から住宅情報を検索できるサービス「Bing不動産」をリリースした。
詳しくは「ITmediaニュース」が伝えているが、これまでは不動産情報の補充補完的サービスであった地理情報が前面にというか、地理情報が主導する不動産情報サービスが誕生したのである。 不動産センサス、ネットワーク、地理情報の三点セットを倦むこと無く問い続けてきた茫猿としては、「ついにここまで来たか」であり「来るべきものがきた」なのである。

SNSでは、「アルゴリズム VS 鑑定評価」などという受けとめ方をなさる向きもあるようだが、茫猿はそうは捉えない。アルゴリズムというものが「解または最適解」に至るチャートであるとすれば、鑑定評価のチャートをデジタル化&Web化したものが「Bing不動産」などの不動産ネット市場が目指すものであろうと捉えられよう。 であれば、評価のアルゴリズムに基づく最適解がサイエンスであるとすれば、鑑定評価はサイエンスをベースとする、もしくはサイエンスを随伴者とする「アート《全人的能力:リベラルアーツ》」だと考えるからである。

これも鑑定評価に志して以来の自説であるが、「リベラルアーツなかでも哲学を持たない鑑定評価は、鑑定評価にとっても社会にとっても有害な存在である。」と、今でも信じている。しかしながら、このような考え方は今や化石である、いいや化石にすらなることなく雲散霧消してしまった。

「Bing不動産」が何処まで進化してゆくのか想像の範疇外にある。 しかし、不動産に関わる情報すなわち、犯罪発生情報であれ、空き家確認情報であれ、携帯移動情報などの入手可能なマスデータと称される類いも含めて、土地建物にまつろう市民情報はすべて地理情報とリンクが可能であり、ゼンリンやグーグルアースや地理院地図をベースとするWebマップ上に搭載することが可能となっているのである。

それら情報の山から、どのようなアルゴリズムでなにを引き出してくるのか、空恐ろしい感じもするが、同時にワクワクもする。鑑定評価がそこに伍して存在感を見せるか、それとも埋没してゆくのか、今やひと事ではあるがガンバレとエールを送るのである。
そういえば、昨夜の宴席では、「公的土地評価に依存し時に絡めとられている不動産鑑定士」と「鑑定評価の枠を飛び越えて、鑑定評価書を書かない不動産鑑定士《不動産の専門家》」とに二極分化しつつあるという昨今の業界見聞を聞かされた。

※Webでみつけた興味ある情報
一般社団法人滋賀県任意売却再生支援センター設立( 2014年6月2日)
「債務者の再生支援、専門家による相談、適切な任意売却額の査定を行う」
(Web情報)
このセンターは債務者等からの申込に基づいて、法的コンプライアンスを徹底して債務者自身の充分なご理解のもとに円滑に任意売却や資金改善が進められるよう、公明正大を旨として債務者サポートを行うことを目的とした支援機関です。そしてこれは、関係する専門士業が連携することにより債務者が満足する売却等を実現することでその資金計画が改善され、将来の生活や事業の再建・再生を可能にすることが目標であると同時に、ひいては地域社会や地域経済の健全な発展に貢献することを目指しております。

※住宅ファイルに関連して、不動産鑑定士の出番は用意されているか。一事業者が建物を調査してその価値を買主に認めさせるのは、現実的には困難であろうと拝察。不動産鑑定士と金融機関が組むなどして、鑑定評価があると与信枠が広がったり、融資利率が低減される等のサービス提供ができれば、本格的な価格査定が進むのであるまいか。《出典不詳》
近畿圏不動産流通活性化協議会 (http://ofk.jp.net/)

首都圏既存住宅流通協議会 (http://www.seei.jp/confe/002.htm)

日鑑連・住宅ファイル制度推進プロジェクトチーム

 

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