衆院の特別委員会は、安全保障関連法案を与党単独で可決した。安倍政権親衛隊を自認する産經新聞は、7月16日付け「主張」欄に以下のような記事を掲載している。
《2015.07.16 産經新聞:主張より抜粋》
法案に対する国民の理解が十分でないことは、首相も自ら認めている。中国が軍事力を背景とした活動を活発化させるなど、日本を取り巻く安保環境は悪化している。政府はそのことを国民に率直に説明すべきだ。参院での充実した審議も求めたい。 民主、維新、共産の野党3党が特別委採決に加わらなかったのは、法案への立場を明確にする責任を放棄している。衆院本会議では採決に加わるべきだ。安倍政権は昨年7月、集団的自衛権の限定行使を可能とする憲法解釈変更を閣議決定した。それに伴う法制の整備を唱えて昨年末の衆院選で勝利した。 与党が公約した政策を進めるのは議会制民主主義の常識だ。安保法制の整備は、野党の言うように突然、降ってわいた話ではないと改めて指摘しておきたい。
産經新聞の主張は、一見して至極もっともな主張のように聞こえる。今回の安全保障関連法案審議は、一年前の「集団的自衛権の限定行使を是とする憲法解釈変更の閣議決定」から始まるものであり、その後は年末の総選挙で大勝利を得ることによって、国民からは信認または支持されていると自民党及び安倍政権、そして産經新聞は主張する。
このあたりは、当時の記事「2014.07.01という日付 2014年7月2日 」に記すとおりである。解釈改憲と云う禁じ手を国会並びに総選挙で厳しく追及しなかった野党とマスコミの無為無策が今日の事態を招いたといってもよいのであろう。その意味で、マスコミも国会議員も一般市民も「Too Late Too Fazzy Too Easy」なのである。 なによりも市民の無関心さが総ての根源であろうと思われる。
ナチスが登場したのも、日本が太平洋戦争になだれ込んでいったのも、もとを糾せば国民の無関心さが招いたことと、多くの史書が指摘しているところである。市民が無関心であり、野党は反応が遅く党利党略に明け暮れており、マスコミは安逸に流れ、政府は曖昧な説明に終始する。 安倍総理は「安全保障関連法案は合憲であると確信しています。」と述べるが、確信に至る合理的で明確な説明がない。説明責任は為政者にこそあり、こんないい加減で無責任な答弁はない。だけれども、こんな答弁を唯々諾々と見過ごす野党議員もだらしないのである。
日本を取り巻く安全保障環境が大きく変化していると政府与党は主張する。尖閣諸島問題、南沙諸島問題を筆頭として中国の軍事的プレゼンスが大きく増しているのは事実であろう。しかし、軍事には軍事、力には力という反応は際限ない軍拡競争に陥るものであり、ますます歯止めがなくなるものである。 個別自衛権に限定し、専守防衛を国是とする戦後七十年の日本のあり方を変更しなければならない理由は何処にも認められない。まして専守防衛から大きく踏み出す行為は明らかに憲法違反であり、立憲主義を踏み躙るものである。
国民はもっと関心を持つべきである。是々非々はともかくとして、もっと関心を表わすべきである。私が鑑定業界で、悉皆調査、有機的ネットワーク構築、地理情報をテーマとして活動をしていたとき、最も脱力感に襲われたのは会員の無関心さであった。 国民が無関心であることは、与党にとって「やり易さ」という追い風となるものであり、野党にとっては「のれんに腕押し」的な虚しい逆風となるのである。マスコミだって。事なかれ主義や事大主義になってしまうだろう。
これでお終いではないのである。参議院審議もあるし、来年に予定される参議院選挙もある。裁判所による違憲審査だって存在する。そういった意味では、これが始まりなのであり、改めて、福井達雨氏の「負け戦にかける」を思い起こし、 久野収氏の「どんな敗北の中からも民主主義完成の契機がある。 どんなに敗北を重ねても負けない自分がここにいる。」を思い起こすのです。
あらためて、小泉 ファナティック政権を吟味し直し、その後継である岸(祖父)ノスタルジー・安倍政権が唱える「戦後レジュームの見直し」について、その是非を問い直さなければならない。 半月ほど前に年金では暮らせないと、新幹線で焼身自殺を図った高齢者がいた。 茫猿自身も含めてまわりの高齢者はミーイズム《自分の幸福や満足を求めるだけで他には関心を払わない考え方。自己中心主義。》に陥っていると思われる。 団塊の世代をはじめ、今の日本の多数派を占める高齢者がミーイズムと自らに関わらないことに無関心であることが、いかに子や孫の後世に悪影響を及ぼすかとくと考えなければならないのだが、高齢者は「関わりない」と蛸壺に籠るのである。
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