日本国民のレーゾンデートル

参議院安保法案特別委員会で強行採決が行われた。野党が違憲立法だと批判し廃案を求めている以上、いつまでも審議を続けていることはできず、どこかでケジメをつけなければならないという与党の主張も《僅かながら》一理はある。

しかしながら、よくよく考えてみれば、安定過半数の議席を有している参議院与党といえども、60%を下回る投票率で得た過半数は、国民全体からすれば少数派なのである。各種の世論調査を見るまでもなく、この国の多数派は無党派層なのである。

民主主義の原則から言えば、棄権も一つの意思表明であり、棄権した50%に近い国民は、投票所に足を運んだ国民に選挙結果を委任したとも云えるのであり、現在の政治状況は、その全てが前回2014年衆議院選挙結果に起因するものである。

前回2014年12月総選挙で与党自民公明両党は合わせて三分の二を上廻る議席数を得たけれど投票率は52.7%だった。 三分の二を得たと云っても半数近い国民が棄権した選挙での結果なのである。また議席数では三分の二を得ていても、得票率を見れば小選挙区でも比例区でも50%前後しか得ていない。得票率から見れば、与党は有権者総数の25%の支持しか得ていないのである。

2014年の暮れに茫猿は総選挙にかかわる記事を何本かアップしている。
詐術・日本統治行為 投稿日: 戦い済んで雪の朝 投稿日:2015年の安倍総理 投稿日:

改めて当時の記事を読み直してみれば、私なりに選挙結果を分析し、今日の状況を予見していたといえる。安倍政権がめざす「戦後レジュームからの脱却」が何を意味するのかを指摘していた。

2014年7月に閣議決定した基本方針《集団的自衛権の行使容認》に基づき、来年の通常国会に向けて、切れ目のない安全保障法制の準備を進めてゆくという、12月24日の安倍総理の記者会見を見るまでもなく、選挙後の安倍政権の目指す方向は選挙前から予想されていたことであり、それを指摘しなかったマスコミに大きな責任が存在するのである。また、アベノミクスというイリュージョンに眼を眩まされて、それを予見できなかった国民にも大きな責任がある。別の表現をすれば、勝たせ過ぎないと云うバランス感覚を失っていた国民に責任があると云える。

さて、問題はこれからである。安保法制に疑問を持ち反対する国民は多数決主義に一度は敗れた。しかしながら、完全に敗れたわけではない。国会で決めたことは国会で改正できるのである。その意味からは2016年7月に予定される参議院選挙がとても重要なのである。自民党議員が鴻池委員長を取り囲んで強行採決に及んだのであり、野党が委員長席に殺到して混乱させたのではない。このことをしっかりと記憶しておこう。

多数派の責任として、決めるべき時が至れば決めるに近い表現を安倍総理はする。しかしながら民主主義とは多数決主義ではないのである。多数派は少数意見にも耳を傾けると云うのが民主主義であり、少数派の疑問に丁寧に真摯に答え理解を求めてゆくと云うのが民主主義である。だから民主主義と云うものは手間暇のかかる《ときに面倒くさい》ものなのである。多数を占める一派が強行してよいというものではないし、多数派横暴を認めるものでもない。

次回参議院選挙は、安保法案と衆参両院における強行採決をどのように判断するかが問われる国民投票だと云うことができるのである。忘れ易いとか、水に流すのが得意とか揶揄される日本人であるが、今回は忘れてはならないのであり、あと十ヶ月のあいだ、2015年の一連のできごとを記憶にとどめておき、来年七月の参議院選挙で意思表明をすべきである。

安保法案審議の終盤における安倍総理の発言は迷走状態にはいっている。主要な法案提出理由に挙げていたホルムズ海峡の機雷封鎖について14日、「現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定しているものではない」と述べた。法整備の必要性《立法事実》がまた一つ失われたのである。

邦人救護にかかわる米国軍艦防護についても、その立法事実が失われている。安保法案提案の際に提示した主要な立法事実二つが失われたのである。さらには「法案に支持が広がっていないのは事実だが、成立した暁には間違いなく理解が広がっていく」とも述べている。

「世論の動向は承知しているが、私は信ずる道を行く」と言っているに等しい。詭弁とすり替え答弁に終始した安保法案国会審議に、国政選挙でどのような審判を下すのかが問われている。

安倍総理が目指し、実行しようとしている
「戦後レジュームからの脱却」は、是か否か。
米軍の指揮下のもとでの自衛隊海外派兵は、是か否か。
原発再稼働、武器輸出解禁は、是か否か。
普天間基地の辺野古移転は、是か否か。

次回参議院選挙は、それらを問い直す実質的な国民投票なのである。日本国民の政治意識が問い直される選挙であり、日本人のバランス感覚が問われる選挙なのである。安倍総理が衆参両院に占める多数議席を主張するのであれば、その多数の是非が問われる選挙なのである。

次回参議院選挙において、安倍政権を信認するのか不信任を与えるのか、日本国民のレーゾンデートルが問われているのである。アベノミクスに期待する国民が多いことを一概には批判できないと考えているし、景気回復を優先し期待する国民が多いことを無下に批判できないと考える。 それでも、いやそれだからこそ、海外派兵を是とする景気回復でよいのか、原発を再稼働し武器輸出を行う景気回復でよいのか、沖縄の基地を放置する景気回復でよいのかが問われている。いわば、日本人の良識と云うものが問われているのだと考えるのである。

16日の国会前では約40両に及ぶ警察車両でバリケードを築き、路上に人が流れ込むのを阻止していた。政府による、なりふり構わない反対集会阻止である。

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