BSでベンチャーズの日本公演の再放送を見ている。録画もした。The Venturesとは結成五十五周年を迎え、何度も日本公演を行っているインストゥルメンタル・バンドのことである。
「結成45周年記念 ザ・ベンチャーズ スペシャルライブ」(初回放送:2004年2月15日 )のBSアーカーブス再々放映である。1962年の初来日以来、日本でのコンサート2000回をこえ、300万人を超す動員数を誇るベンチャーズ。オリジナルメンバー最後の来日と言われている2015年の公演を前に、2004年に放送した「結成45周年記念スペシャルライブ」の再放送番組の再々放映である。
パイプライン、ダイアモンドヘッド、キャラバンなどなど幾つもの懐かしいベンチャーズ楽曲だが、なかでも耳に馴染んでいるのは「京都慕情、雨の御堂筋」などである。 歌詞そのままに、小雨ふる御堂筋を南の難波から北の淀屋橋まで歩いた青春のほろ苦い記憶がよみがえってくる。
学生の頃、学生の身には安くはなかった《と思う》公演切符を手に入れて知り人を誘ったものの、会場の京都会館入り口で待ちわびたけれど待ちぼうけ、結局会場にも入れず切符も無駄にしてしまったほろ苦いというよりも、今となっては甘酸っぱい記憶が甦ってくる。彼女との付き合いはそれっきりになってしまったが、携帯はおろか固定電話も掛けづらい半世紀以上も前の記憶である。
LPレコードと小さなプレイヤーを入手して、アルバイトから帰ってきた下宿の部屋で深夜に聞いていたら、隣室の先輩から苦情を言われたこともあった。青春の頃へのタイムマシーンでもあるベンチャーズである。以前に中村との思いでつながりで書いた「喫茶・ルーブル」のBGMにはベンチャーズがよく流れていた。
ベンチャーズの他に記憶に残るBGMはシルヴィ・ヴァルタン《アイドルを探せ》、そしてハイウェイメン《漕げよマイケル、コットン・フィールズ》である。《BGMを担当しLPレコードを選曲購入していたのは下宿の後輩・磯井くんだった。ルーブルには、彼の企画提案でオートチェンジャー付きのプレイヤーと大型スピーカーシステムが備えられていた。まだ有線放送も未整備だった頃に、とても斬新気鋭なBGM設備だった。》
シルヴィ・ヴァルタンもハイウェイメンもLPレコードを持っていた記憶があるが、今や何処にも見当たらない。仮にまだ持っていたとしても、プレイヤー自体を持っていない。そこで早速に、シルヴィ・ヴァルタンCDをネット注文した。ハイウェイメンの注文は少し迷ったけれど見送った。
私の葬送曲はチャイコフスキーのピアノコンチェルトが好ましいと考えていたが、ベンチャーズメドレーを遺言しておくか、それともマイルスデービス、レイチャールズなども混じえた青春の思い出につながる幾つかの曲をメドレーに編集したCDを用意しておくとするか。 でも見送りにきてくれる人たちに同時代人がいなければ流す意味も伝わらないだろう。
藤沢周平は「周平独言」にて、「ふるさとへ廻る六部は 気の弱り」と記している。老いて若き頃を振り返るのは「ふるさとへ廻る六部は・・・・・」と言うのである。《六部とは巡礼者《僧》のことから転じて旅人などを云う。》
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