癌と終末期治療

昨夜のNHKクローズアップ現代は、癌闘病における終末期治療を取り上げていた。昨夜に限らず、最近のクローズアップ現代は終末期治療や介護の問題を取り上げることが多い。

愛し 書き 祈る ~瀬戸内寂聴 93歳の青春~ (2015.05.14)
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“最期のとき”をどう決める~“終末期鎮静”めぐる葛藤~  (2016.01.16)
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がんを“生ききる”~残された時間 どう選択~ (2016.02.09)
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02.09番組の冒頭で取り上げていた、「五十代の研究者が向き合った余命告知と治療法選択」、「三十代の母親が幼い娘と向き合った残された時間」などの例は厳しく痛ましいものであり、七十を越えた者が語り得るものなど何も無い。

しかし、ゲストの樹木希林さんが語る癌との向き合い方、あるいは2015.05.14放送の瀬戸内寂聴さんが語る闘病そして余命との付き合い方には頷けることが多い。茫猿自身の身近にも癌による余命告知を家族のみが受けた者、本人が受けた者、はっきりとは告知されなくともおのずと悟っていたと思われる者などがいた。叔母、叔父、母、そして友たちである。

とは云うものの、彼ら彼女たちの全てが、本当のところ、秘めた心の奥底で何を考えていたのかは知り得なかったことである。余命告知を淡々と受け入れているように見えても、日々衰えてゆく体力と向き合うなかで、肉体の痛みに耐えているなかで、何を考えていたのか、理解のそとにある。考えていることも伝えていることも日々刻々に変化していたことであろう。最も身近にいた母にしてからが、私が理解できていたことは極々僅かであったろうと思われる。何も理解できていなかったのかもしれない。

そのようななかでも、母の意思を優先し母の命の尊厳を何にも優るものと考えて末期の母に寄り添っていようとしていたと思い出す。

そして、今やおのれ自身である。加齢に伴う幾つかの症状は現われているが、余命告知を受けなければならないような病を得ているわけではない。でも確率的に確かなものとして、脳梗塞や心筋梗塞による突然死の到来も避けられないし、年毎に癌発症も避けられないものであろう。正月を迎えることも誕生日を迎えることも、「冥土の旅の一里塚」を過ぎてゆくことに他ならないことである。

そこで、病とどのように向き合うのか、「余命告知」という得難い機会をどのように迎え過ごしてゆくのかを、日々考えていたいと思う。 常々は無理としても、折々に思い描くことが、ことに臨んで狼狽えること少なく、取り違えたり思い煩ったりすることが少なくてすむであろうと考えている。

それにしても、樹木希林さんと国谷裕子さんの対話は時間切れ尻切れトンボに終わった。樹木希林さんから「クロ現に出て国谷さんにお会いするのが楽しみでした。」、「私ね、国谷さんは本当に素敵な仕事ぶりだと思っているの。NHKは大変な財産をお持ちだなと思ってます。」と感想を述べた。 言われた国谷さんが言葉に詰まり、涙ぐんでいるようにも見えた。近いうちに、動画と全文表示がアップされるだろうから、改めて確認してみたい。KUNIYA

《02.12追記》変だぞ、NHK!!
02.08放送分と02.10放送分は、動画と全文表示がアップされているのに、02.09放送のこの日に関しては、未だに動画も全文表示もアップされていない。編集しようにも既にWEBで様々に文字起こしされているから、扱いに困っているようだ。

《2016.02.17 追記》ようやくにして、全文表示がアップされた。樹木希林さんの番組最後のコメントを転載しておく。

「10年以上、がんと共に暮らしてこられたが、どうやったらうまく生きることができるのか 今そこから感じていることとは?」《国谷さんの問いかけ》

私の場合は、役者であるってこともそうなんですけれども、ちょっと自分をふかんで見る、第三者の目で見るってところがあるんですけれども、それでも、ずーんと落ち込むことがあるわけですよね。仕事では落ち込まないけど、命というものを最初に、あっ、ないんだっていうふうに思ったとき。

でもね、昔、井戸ってこういうのあったじゃないですか、くむのね。
ああいう井戸みたいに、最初は水が出てこないの、空気だけ。
だけど、それと同じように、いつも仏頂面しているんですけれども、そういうときは誰もいなくてもね、笑うの。

笑うの。 笑うの。
そして、ちょっと自分の頭をなでるの。
そうすると、なんか笑ってるうちに、井戸じゃないけど、だんだん水がこみ上げてくるみたいな、そういうやり方ね。
それから、うれしいことをするっていうかね。
例えば、「クローズアップ現代なんですけど、出てくれますか」って「出ます!」。
「なんで?」「国谷さんに会いたいから」って。
私ね、国谷さん、本当にすてきな仕事ぶりだなと思っているの。
NHKは大変な財産をお持ちだなと思って。
私はいつもね、大好きな番組です。

 

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