ウチナーンチュの慟哭

今こそ沖縄の声に真摯に向き合うべき時である。今、沖縄の声を聞かずして、いつ聞けば良いと言うのか。沖縄の声を聞くことはそんなに難しいことではない。沖縄県における新聞購読シェアで、90%を軽く超える地元新聞、沖縄タイムズと琉球新報両紙の社説を読めばよいのである。

しばらく前に偏向しているとか、潰せばよいとか、本土の心なき人々から揶揄された琉球新報と沖縄タイムズである。しかしながら沖縄の人たちに支持され、沖縄の人たちの声を代弁する地元両紙の社説を読めば沖縄の声を聞くことができる。今般発生した「米軍属暴行殺害事件」について、「伊勢志摩サミット開催を控える最悪のタイミングで発生した」と嘯く声が、外務省周辺などから聞こえてくると本土のマスコミは伝えてくる。一体、政府は何処を見ているというのか。

「外交と安全保障は中央政府の所管事項」と菅官房長官は05.23午前の記者会見で述べたが、沖縄県民の安全を保障する外交こそが政府の最優先事項であらねばならないはずである。このような事件が起きるたびに政府や本土マスコミは、米軍の綱紀粛正・再発防止を常に言うけれど、いつも言葉が踊るだけである。米軍地位協定の見直しに、政府が腰を据えて向き合った形跡は一度も認められない。

今こそ沖縄の声を聞き、琉球の人たちの心と正面から向き合うことこそが、十万人余の沖縄県民犠牲者を出した沖縄上陸戦の悲惨さを体験し、戦後七十年余の長きにわたり米軍基地存在の重さに耐えてきた沖縄の人たちの心に応えることであり、琉球の心に寄り添うことである。

《最近の沖縄タイムズ社説》
社説[オバマ氏との面談]政府の責任で実現図れ 2016.5.24
社説[無言の意思表示]沖縄の怒り、見誤るな   2016.5.23
社説[米軍属暴行殺害供述]再発防止策は破綻した  2016.5.22
社説[女性遺棄事件]声上げ立ち上がる時だ 2016.5.21

《最近の琉球新報社説》
社説[在沖米軍の規律]人権感覚欠如は構造的だ 2016.5.24
社説[米軍属女性遺棄]大人の責任果たせていない 2016.5.23
社説[全基地撤去要求]日米政府は真剣に向き合え 2016.5.22
社説[殺害示唆]植民地扱いは限界だ 許されない…  2016.5.21

《2013.11.28 石垣島グランヴィリオホテルにて》20131128ishigaki

《沖縄地元紙についての尚書き》
沖縄県における沖縄タイムズと琉球新報の購読率がほぼ寡占状態にある理由は、両紙の主張が沖縄県民に受け入れられているということであるが、同時に歴史的背景なども見逃せない。米軍施政下にあった琉球において本土全国紙は販売されない状況が長く続いていた。本土復帰後においても、全国紙は沖縄で印刷されず、航空便で輸送される状況が今も続いている。全国紙朝刊を朝早くには読めないと云うことである。

もう一つ沖縄独特の地域慣習が存在する。死亡広告を新聞に出すのは本土でも見受けられるが、沖縄では親戚一族連名で大きな広告を新聞に載せるのである。

本土同様の死亡広告の記事内容に続いて、喪主から始まり、喪主の嫁、長男、長男嫁、長女、長女婿、次男、次男嫁、次女、次女婿、孫、孫嫁、孫婿、曾孫代表、甥姪代表、自治会長、老人会長と延々と名前が続くのである。在沖縄のある朝に見た10件ほどの死亡広告の内、最大記名数は合計60余名連名の死亡広告でした。

若い方(享年16歳)の方の場合は、父、母、兄弟姉妹、父方母方双方の祖父母、叔父叔母、伯父伯母、従兄弟、親戚代表、友人代表、在籍学校長、PTA会長と、やはり多数の連名広告でした。

これは、沖縄というより琉球の風土及び風俗慣習に根ざすものだと教えられました。御承知のように琉球の墓は、本土と異なり立派なものです。中国風の屋根を持ち、重厚な扉と墓室を持っています。建設材料は石造或いは鉄筋コンクリート造であり、敷地も30平方メートルを超えるものが多くあります。清明節には墓前に一族が集まり、故人を偲のぶ集まりが催されるのである。

この死亡広告に欠かせないのが、沖縄地元二紙なのである。沖縄県における販売部数は、琉球新報の163,475部、沖縄タイムス160,625部、日経5,794部、朝日1,105部、毎日280部、産経285部、読売795部であり、地元紙と全国紙は桁数が違うのである。《日本ABC協会 2014年前期レポート》

 

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