総理の軽さと日本の軽さ

米国大統領選挙にトランプ候補が勝利したのは11月09日、安倍総理がニューヨークのトランプ氏私邸で世界のトップをきってトランプ大統領予定者と会談したのは、選挙の余韻も醒めやらぬ11月17日である。これをどのように評価するか、評価すると云うよりも”どう見るか見られるか”が問われているだろうと考えている。

安倍総理がペルーで開催されるAPEC首脳会議に向かう途中、政府専用機はニューヨークに立ち寄り、そこでトランプ氏と会談したのである。トランプ氏は当選したばかりであり、来年一月の大統領就任並びに次期米国政府の構成をめぐって大わらわの時である。そんな時期に日本の総理が会ったところで、実のある話しができる訳も無い。当選をお祝いするために私邸を訪問したと云うのが実のところであろう。

そこで考えてみたいのである。今回の米国大統領選挙はトランプ氏の勝利であるが、その実は選挙獲得投票数ではクリントン氏が勝っている。11/21現在で未確定州があるものの、クリントン氏は得票数6131万票強、獲得選挙人数232人である。トランプ氏は得票数6054万票強、獲得選挙人数290人である。獲得選挙人数では大差がついたけれど、獲得票数では僅差ながらクリントン氏が勝っている。つまりクリントン氏は選挙で勝ったものの、米国大統領選挙制度に負けたと云うことなのである。

米国大統領は今もオバマ氏であり、オバマ氏とは2016/05/26 伊勢志摩サミットで会い、広島訪問を受けたばかりである。ペルーのAPEC首脳会議でも顔を会わせるのである。その現職大統領そっちのけで、当選祝いに私邸へ駆けつけたのである。実のところトランプ氏は当選確定状態なのであり、正式当選は12/19 の選挙人投票以後であるし、大統領就任式は2017/01/20 なのである。

水面下でどのような接触をしようと、それは外交の常道であり必然であろう。しかしながら、ニューヨーク・マンハッタンのトランプタワーへ、堂々と車列を整えて日本の総理が表敬訪問すると云うことが、米国内でまた世界でどう受けとめられるだろうかと考えないのかと思うのである。

これを日本の俚諺では「手のひら返し」というのである。逆の立場から見ればよく判るのである。日本の総選挙で野党が勝利し次期総理がほぼ確定した段階で、米国大統領がアジア訪問の途中に次期総理予定者の私邸を訪問したと考えてみればよく判るだろう。日本国民は米国大統領が辞を低くして表敬訪問に訪れたと思うことだろう。でも半数の現与党支持者と現与党の人たちは”その手のひら返し”を何と思うだろうか。

今回の安倍総理・トランプ私邸訪問は、一族郎党が当選お祝いに駆けつけたというものではない。日本の総理が世界の注目を浴びながら、大統領予定者の私邸を訪問したのである。国と国との外交と云うものはプロトコルが大切にされると聞いている。前例に無いことをするなと云うのではない。その行動や言動が与える影響、評価というものを熟慮して為さねばならないと考えるのである。《せめて、トランプ氏が安倍総理の宿泊するホテルを訪ねての会談であったならばと思うのである。そんなことをトランプ氏がするわけないだろうが。》

さらに、首相は会談後、記者団に「同盟というのは信頼がなければ機能しない。トランプ氏は信頼することのできる指導者であると確信した」と述べたという。通訳をはさんだ90分一回だけの会談で「信頼できる指導者と確信」できるのか、それを世界に向けて発信することがどんな意味を持つのか考えたことがあるだろうかと思うのである。

安倍・トランプ会談については、このようなネット記事がある。
松岡正剛の日刊セイゴオ「ひび」】(16/11/09)
最低と最悪の大統領選はトランプだった。アメリカ人も焦っているのだ。これで日本も本気で自立対策に入るだろう。結構なことだ。新政権におべっかするのだけはやめなさい

安倍・トランプ会談を笑うー誰のための会談だったのか? 
安倍総理と米国の次期大統領に就任予定のトランプ氏との会談が行われた。大統領選での勝利後、外国の首脳と会談するのは初めてだとか、1時間半にも及ぶ会談立ったと、日本のメディアはまるで世紀の一大イヴェントのように囃し立てた。会談終了後記者団の前に立った安倍総理は、詳細は話すことができないとしながらも、会談の意義を強調し、足早にその場を立ち去った。(室伏謙一

安倍トランプ会談で世界にさらした恥―ドイツ・メルケル首相が見せた格の違い
大統領選後のコメントで、独・メルケル首相は次のように述べている。「ドイツとアメリカは共通の価値観で結ばれています。それは、民主主義、自由、そして出身、肌の色、宗教、性別、性的指向や政治的姿勢にかかわらず、人間の権利と尊厳を尊重するというものです。この価値観を前提に、私はトランプ氏へ緊密に協力していきます」つまり、差別的で人権を軽視するような姿勢を、大統領になった後も続けるのであればトランプ氏には協力しないと、メルケル首相は強くクギを刺したのだ。(志葉玲 )

トランプ当選の本当の意味
今回、安倍総理はまた改めて思い込みの激しい人だとばれました。9月の時点でヒラリーに会い、敢えてトランプもヒラリーも反対のTPPの必要性を強調しました。これは明らかにヒラリーに以心伝心のつもりでメッセージを送っています
投票日5日前の3日に、首相官邸が共同通信に「2月にもクリントン大統領と首脳会談を検討」と発表させたほどの自信ぶりです。安倍総理にしてみればヒラリーが勝つに違いない、マスコミや議会を動員すれば反対を簡単に封じ込めます。《TPPも》いったん決めてしまえば国民はすぐ忘れるから自分の思い込みでどんどん進めればいいのでしょう。(宋文州

トランプ氏については選挙期間中の言動しか判っていないのであり、せめて就任後の一般教書演説を聞くまでは彼の《公式な》政治姿勢は判らないのである。押っ取り刀で駆けつけて、「信頼できる指導者と確信しました」と世界に向けてアメリカ・ニューヨークで発信することが、どんな意味を持つのか考えるまでもないことである。 何はともあれ、会うことに意味が有ると云う考え方も重々承知している。それでも会い方が国家間外交では問題なのだろうと考える。

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