陽春なれど憂春

五月の連休は鄙里も一番美しい季節である。様々な若葉が浅緑のグラデーションを飾り、ヒラドツツジやサツキ、ドウダン、ボタン、ヤマブキ、シャクナゲ、ハナミズキなどが華やかな色を添えている。時を同じくして畑では、種蒔き、苗の植付けに忙しく、行楽日和《晴天》が続けば水撒きに忙しい。今、一番気がかりなのは植え付けたばかりの安納芋が活着するかどうかであり、雨を待ちわびる日々である。

先月初めに”帯状疱疹”を患った。ストレスか免疫力低下が原因といわれるが、”ストレス・レス”の鄙暮らしであれば加齢による免疫力低下が主な原因であろう。最初は痛みを感じなかったから放っておいたら、疱疹が消えた後から痛みが襲ってきた。診療を受け鎮痛薬を飲み始めて痛みは軽減されたものの、いまだにビリビリと厳しい痛みが襲ってくる。これも加齢の為せるわざかと思えば、些かせつなくもある。《帯状疱疹は後遺症の神経痛にご注意あれ。》

咲き始めた牡丹である。

鄙桜は葉桜となり、はや桜の実を付けている。

標題の憂春であるが、憲法記念日に安倍自民党総裁は2020年目標という改憲日程を公表した。憲法九条について「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方を示して、国民的な議論を期待すると述べた。額面どおりであるのならば検討に値するかもしれないが、当の自民党は「改憲草案」は撤回しないとしているから”羊頭狗肉”の臭いもする。《安倍総裁のビデオメッセージ》

そもそも、憲法九条二項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と規定する。実戦こそ経験していないが、世界有数の戦力に成長した自衛隊を、九条二項の規定と矛盾無くどのように位置づけようとするのであろうか。

九条改変と、”教育法改正と予算措置で実現できる高等教育無償化”を抱き合わせるなどは小賢しさを感じさせる。若者の教育機会実現や子供の貧困化対策と抱き合わせ、無関係な東京五輪開催を口実にして、自衛隊戦力の憲法明文化実現を図るなどとは狡さ丸見えである。

キナ臭いと云えば内閣府が公表している「国民保護ポータルサイト」が噴飯ものである。先の戦時中における竹槍訓練や回天魚雷を思わせる。北朝鮮の核開発やミサイル開発問題が緊張感を高めているから、iNet界隈で話題になっているけれど、これこそ昼下がりのワイドショーが面白おかしく取り上げる話題であろう。国民軽視と云うよりも無視に等しい啓発PDFパンフレットである。

内閣官房・国民保護ポータルサイト「武力攻撃やテロなどから身を守るために ~避難にあたっての留意点などをまとめました~」は、このように啓蒙するのである。

弾道ミサイル攻撃の場合など、いずれも屋内退避や地下街退避を指導しているが、最も愚かしく笑わせるのは「6頁  (5)ⅲ 核物質が用いられた場合」である。
◎核爆発の場合
・閃光や火球が発生した場合には、失明するおそれがあるので見ないでください。
・とっさに遮蔽物の陰に身を隠しましょう。近隣に建物があればその中へ避難しましょう。地下施設やコンクリート建物であればより安全です。
・上着を頭から被り、口と鼻をハンカチで覆うなどにより、皮膚の露出をなるべく少なくしながら、爆発地点からなるべく遠く離れましょう。その際、風下を避けて風向きとなるべく垂直方向に避難しましょう。

「核爆発の閃光を見たら失明するおそれ」と云うけれど、焚き火やネオンサインでもあるまいに、一瞬の閃光を見ないで済む方法があるのなら教えてほしい。とっさに遮蔽物の陰に身を隠せというけれど、そのとき既に被爆しているのだ。福島原発の水素爆発で放射線被爆を身をもって教えられた国民を愚弄するにもほどがある。

2020年、東京オリンピックの年には改憲新憲法の施行をと言い出した安倍自民党総裁、その安倍内閣の内閣官房が国民に示している核爆発退避策、然るに安倍内閣は原発再稼動に際して30km圏内の住民退避策も満足に示していない。《仮置き場の満杯が近い放射能汚染廃棄物の処理に至っては、無策のままに放置されている。》 このチグハグさというよりも愚かしくもマンガチックな政治の一つ一つが、帯状疱疹後遺症に悩む茫猿を憂えさせる陽春なのである。それでも、鄙里は一番艶やかな《あでやかな》季節なのである。昨夜の夕食は鄙の雑木林で摘み取ってきた蕗と油揚げで作った炊込み御飯、一度は作ってみたかった蕗飯だけど、素朴で野趣溢れる旨い草深包丁だった。

 

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