菊と鍬

なんの変哲も無い小菊である。野菊と見まごうほどの小菊である。特段の手入れもなく、畑の隅で荒らし作り同然に放置される菊である。それでも霜月に至れば花も香りも楽しませてくれる。畑の隅で咲き始めたから、切り取って無造作に活けてみたのが、この写真である。

たかが小菊、されど小菊なのである。これらの菊の由来はわからない。母がなくなった年の秋に畑の隅に咲いていた菊が目にとまり、切り取って仏前に供えたのである。よく年の三月に芽吹いていた菊を株分けして栽培するようになってから、すでに七年になる。

母の遺した花だからと、毎年株分けして栽培するうちに随分と多くの株になった。その菊が今年も花を咲かせたのである。だから、”たかが小菊されど小菊”なのである。

毎春、株分けするたびに、今年はきちんと管理しようと思うのだが、菊に限らず花卉の栽培には疎いので、ただ荒らし作りのままに毎年が過ぎている。鍬を握って土を作ったり、鋏を持って花芽を摘んでみたりすれば、もう少し大きな花を咲かせるのかもしれない。

野良作業にも随分と慣れてきたから、来年こそはもう少しましな花を咲かせてみたいものだと思っているが、さてどうなるか。
「 菊根分け あとはおのれの 土で咲け 」(伝、吉川英治)
「 菊作り 菊見るときは 陰の人 」(伝、吉川英治)
「 ありし父と 影を重ねて 菊根分 」(桑田眞佐子)

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