職能集団の社会的存在感

2018年7月26日に投稿する「復興支援に鑑定士の取組み」と題する記事をフォローして、改めて災害復興支援において不動産鑑定士の果たせるであろう役割を考えてみたい。それは職能集団としての不動産鑑定士集団の社会的存在感を考えることに他ならない。


災害復興支援における不動産鑑定士の役割を考えるうえで「災害復興まちづくり支援機構」の存在を抜きにしては考えられない。

「災害復興まちづくり支援機構」設立の経緯
2004年1月17日、阪神・淡路大震災後9年にあたり、阪神地区、宮城県地区、静岡県地区及び東京地区の各地専門家職能団体、研究者及び各行政担当者が神戸に集い、「全国まちづくり専門家フォーラム」を開催しました。そこでは、災害時に備えて何をしておくことが必要か、ということを議論しましたが、結論として、住民、各種専門家職能団体及び研究者、行政等とのネットワークを構築して災害対策の調査・研究・研修・啓蒙等の諸活動を平常時より積極的に展開するべきことを確認しました。《機構HPより引用

2004年9月21日、大方の団体の意見が集約できたことから、東京三弁護士会が東京の専門家職能団体に対して、共同で「災害復興まちづくり支援機構」を設立することを呼びかけました。そして、正会員、賛助団体・個人会員の皆様及び東京都、(財)東京都建築防災まちづくりセンターの各ご担当者の方々のご理解、ご協力をもって、2004年11月30日に同支援機構の設立総会が開催され、同支援機構が歩み始めることとなりました。《機構HPより引用

災害復興まちづくり支援機構』設立趣意書《機構HPより引用》
大規模災害における緊急・応急対策や復興対策を迅速かつ円滑に進めるには、行政のみならず、数多くの専門知識を有する民間の個人・団体等の支援を欠かすことはできません。
一方専門的資格を有する者といえども、災害時における専門的活動は平常時におけるそれとは異なり、各災害時特有の条件の下での活動が要求されます。また、個別的・断片的に対応するのではなく、相互に連携調整を図りつつ、継続的かつ柔軟に対応する必要があります。
以上から、このような専門家個人や団体が、平常時から連係を密にし、いざというときの活動の仕組みをつくると共に研鑽を重ねて行く必要があると考え、関係各位及び諸団体に広く呼びかけ『災害復興まちづくり支援機構』を設立することにしたものです。

不動産鑑定業界からの機構への参加
機構の正会員に 公益社団法人東京都不動産鑑定士協会が参加し、運営委員、事務局員を派遣している。機構は既に14年以上の活動の歴史があり、東京都不動産鑑定士協会はそこに参加するとともに様々な活動を行なっている。最近の活動の一端を紹介すれば以下のとおりである。

2016.9.2 南阿蘇村訪問及び住家被害認定調査講習会
2018.7.17 近畿不動産鑑定士協会連合会 緊急研修会 講師派遣
2018.7.26 葛飾区との「災害時における住家被害認定調査等に関する協定」調印
東京都士協会HPより引用
《東京都士協会相談事業委員会佐藤麗司朗委員長・つかさ不動産鑑定事務所ブログ

「不動産鑑定士の專門職業家としての役割」
不動産鑑定士業界は地価公示、地価調査、固定資産税標準地評価、相続税標準地評価に関わることにより自らの社会的存在感が実存すると勘違いしているのではなかろうか、実はこれら公的評価は制度インフラなのであり行政的枠組みの一つにしか過ぎないのである。公的評価に関わることにより社会的な存在であると考えるのは鑑定士とその周辺(関わる行政)に限られていると認識すべきであろう。

制度インフラとしての地価公示については、「制度インフラ・地価公示-ⅱ 投稿日:  」記事を参照されたい。

公的評価に関わっていることが即ち社会的存在感を形成しているのではない。公的評価に関わることは不動産鑑定業務の一環にしか過ぎないのである。社会的存在が実存するという実感は業務的対応(業として即ち収益事業としての存在)から生まれるものではなく、無償の行為から生み出されるものである。いや生み出されなければならないと言うべきであろう。《業務的対応を超えた使命感や達成感は、職業的倫理観とも云うべきものでありまた別次元のものである。》

一旦ことある時に(具体的には災害被災時に)、自らの職業的知見、経験、職能の全てを動員して、無償の行為として社会と対峙する時に、社会はその存在を認識し評価するのであろうと考える。《ここで言う”無償の行為”は、最小限度の必要諸経費の授受までを否定するものではない。》

被災地の住家被害認定調査等の支援活動はその一つにしか過ぎないのであろう。他にも不動産鑑定士がその職能の全てを発揮して被災地復興に貢献できる分野はあるだろうが、今は地方公共団体等と緊密な連携を図りながら、可能な限り、住家被害認定調査への支援その他被災地方公共団体等への支援に取り組むべきときなのであろうと考える。

災害復興支援活動を通じて、自らのプレゼンスの向上とか社会的存在感の形成などと云えば、功利的と考えられるかもしれない。無償の行為は何ものも求めない無償の行為であるべきと言うのは正しい。

しかしながら、専門家集団が無償の災害復興支援活動を組織し実行してゆこうとすれば、組織構成員の参加を促し、実行に必要な諸機能を練磨し、さらに実行に必要な諸経費予算を確保してゆかねばならない。その際に組織構成員に示すモチベーション(動機付け)あるいはインセンティブ(動機付け)として、自らのプレゼンスの向上とか社会的存在感の形成などと述べることをあながち否定的に捉える必要はなかろうと考えるのである。

復興支援に鑑定士の取組み  投稿日: 

《2018/08/01  追記》
記事末尾の無償云々について、関係者より以下のコメントを頂いた。
「記事末尾の無償のくだりについては、一応、日当等最低限レベルのものは負担していただくことをお願いしております。いっぱしの専門家をただで使うというのは、先方も支援要請しにくいですし、こちらも後が続きません。他士業も協定等によりこれらをクリアしております。もっとも、鑑定士がお願いしているのは最低限レベルですが。ご認識のほどよろしくお願い申し上げます。」

《2018/08/02 追記》
(公社)日本不動産鑑定士協会連合会 災害対策支援特別委員長 吉村 真行氏が発出する、全国士協会会長宛の「大阪北部地震支援活動及び平成 30 年 7 月豪雨対応報告(速報)」を拝見する機会を得た。

5月22日に設置が承認されたばかりの当該委員会であるが、大阪北部地震及び平成 30 年 7 月豪雨被災において全国 7 箇所で被災地支援活動を実施している。06/25の茨木市支援開始に始まり07/31に至るまでの、全国から各被災地に入った多くの鑑定士の方々の支援活動が生々しく報告されている。

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