世事倦怠

表題は世事に倦怠する(飽きあきする)と読んでいただいても宜しいし、倦怠する世事と読んでいただいても所詮は同じことである。「鄙からの発信」は 2019.04.08掲載の「令和の変」以後は、「日本最西端の駅」、「御衣黄桜」、「苗物」、「葉桜」、「シンビジウム」、「白い花」などなど、身辺雑記や終活記事ばかりである。05.13以降、しばらく新規記事の掲載も怠っている。 世事について思うことが無いわけではない。気不せりに思うことばかりであるが、余りにも愚かしくて語る気にもならなかっただけである。

でも、このまま沈黙を続けることは、かつて自らに戒めた「疚しき沈黙」を為すこととなる。だからせめても二件だけでも触れておく。

《二重に愚かな維新の議員だが、愚かなのは彼だけか》
2019/05/11 今やロシアによる実効支配が大きく進んだ北方四島へのビザなし交流訪問団の一員として国会議員が同行し、『団員に対し「ロシア人女性の店に行こう」という趣旨の発言をし、単独行動が認められていないにもかかわらず何度も外出しようとして政府関係者らに止められた』一件、及び『元島民の男性に対し、北方領土問題について「戦争をしないとどうしようもなくないか」「(戦争をしないと島を)取り返せない」などと発言した』一件、

どちらの件一つとっても国会は懲罰委員会において自浄作用を発揮すべきであろう。高学歴(東京大学卒業)、高キャリア(経産省入省)でありながら、戦争に関して日本国憲法も国連憲章も承知していない愚かさである。そういえば丸山氏は松下政経塾に2009年から2012年まで在籍していたという。

丸山穂高衆院議員(大阪19区)は24日、衆院議院運営委員会が求めた理事会での事情聴取を欠席した。丸山氏からは2カ月の休養が必要とする診断書が提出された。関係者によると、病名は適応障害だという。 何ともハヤ、云うに事欠く。

かつて”希望は戦争”と語り世間を席巻した「赤木智弘」氏という論客がいた。彼が語る「戦争」と丸山議員が語る「戦争」は似て非なるものであろう。赤木氏のいう「戦争」は現状改革に破壊的エネルギーを求め、戦争はその究極的な比喩である。丸山氏のいう「戦争」はコミック誌に溢れる絵空事であり、コミックではあっても「水木しげる氏の戦争」とは対極に存在するものであろう。

丸山氏だけではない。エセ右翼だけでもない。「今のぬるま湯に浸り 現状を謳歌している人々に 一度は読み、読んでから考えてほしい ”赤木氏の希望は戦争”である。」

赤木氏の”希望は戦争”(朝日新聞社「論座2007年1月号」)より部分引用。
我々が低賃金労働者として社会に放り出されてから、もう10年以上たった。(中略)平和が続けばこのような不平等が一生続くのだ。そうした閉塞状態を打破し、流動性を生み出してくれるかもしれない何か――。その可能性のひとつが、戦争である。

識者たちは若者の右傾化を、「大いなるものと結びつきたい欲求」であり、現実逃避の表れであると結論づける。しかし、私たちが欲しているのは、そのような非現実的なものではない。私のような経済弱者は、窮状から脱し、社会的な地位を得て、家族を養い、一人前の人間としての尊厳を得られる可能性のある社会を求めているのだ。それはとても現実的な、そして人間として当然の欲求だろう。

そのために、戦争という手段を用いなければならないのは、非常に残念なことではあるが、そうした手段を望まなければならないほどに、社会の格差は大きく、かつ揺るぎないものになっているのだ。

戦争は悲惨だ。 しかし、その悲惨さは「持つ者が何かを失う」から悲惨なのであって、「何も持っていない」私からすれば、戦争は悲惨でも何でもなく、むしろチャンスとなる。 もちろん、戦時においては前線や銃後を問わず、死と隣り合わせではあるものの、それは国民のほぼすべてが同様である。国民全体に降り注ぐ生と死のギャンブルである戦争状態と、一部の弱者だけが屈辱を味わう平和。そのどちらが弱者にとって望ましいかなど、考えるまでもない。

持つ者は戦争によってそれを失うことにおびえを抱くが、持たざる者は戦争によって何かを得ることを望む。持つ者と持たざる者がハッキリと分かれ、そこに流動性が存在しない格差社会においては、もはや戦争はタブーではない。それどころか、反戦平和というスローガンこそが、我々を一生貧困の中に押しとどめる「持つ者」の傲慢であると受け止められるのである。

《注記》日本国憲法
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

《注記》国連憲章第2条3項4項
第3項 すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。
第4項 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

《見せ掛け倒しというよりも腑抜けに見える安倍外交》
北朝鮮拉致問題に関して、05.19開催の国民集会において『金委員長と条件をつけずに会って、率直に、虚心坦懐(たんかい)に話したいと考えている』と述べた。」 今月の始めに安倍総理は北朝鮮と前提条件無しに話し合いたいと述べたものの、具体的な方向性は何も見えてこないし、北朝鮮メデイアも何の反応も示していない。

安倍政権の外交は行き詰まっている。 25日に米国のトランプ大統領が国賓として来日するが、兵器の「爆買い」に加え、貿易交渉でも厳しい条件をのまされそうである。 日ロの北方領土交渉は停滞どころか後退の様相を示し、唐突に対話路線に切り替えた対北朝鮮も簡単に振り向いてくれそうにもない。

大相撲千秋楽の升席千席を確保し”お友だち(櫻井よしこ、金美齢、門田隆将など)”を招き、トランプ大統領夫妻を”おもてなし”する自ら夫婦の姿をテレビ中継させた安倍総理は、日本の国技(伝統的相撲興行)の伝統もたたずまいも蔑ろにして見せた。この絵だけでも安倍氏と櫻井よしこ、金美齢、門田隆将各氏との結び付きを窺わせるに十分なのだが、多くの安倍信者は「安倍さん凄い」と違った評価をするのだろう。

2019/05/26 トランプ大統領は自らのTwitterでこう語っている。「米国が日本との貿易交渉で、重点的な対象となっている農業と牛肉で大幅な前進を遂げている。けれども合意に至るのは今夏の日本の選挙後となる可能性が高い。」 これは即ち、日米貿易交渉で成果を挙げたけれども公表は参議院選挙後にすると云うことである。

ゴルフ、異例尽くめの大相撲観戦、居酒屋接待、極め付きは「令和最初の新天皇会見および宮中晩餐会」の「おもてなし」の見返りが『大幅譲歩の貿易交渉結果公表を二ヶ月延期してあげる』と云うことだとすれば、余りにも情け無い”安倍外交の成果”である。

《追記》門田隆将氏は自らのTwitter でこう語る。「大相撲のマス席をやっと確保できたので、いつもお世話になっている金美齢さん、櫻井よしこさんをご招待して千秋楽を観戦した。退場する時、安倍首相とトランプ大統領が近づいてきて、なんとお二人と握手。隣にいた私も握手させてもらった。サービス精神旺盛のトランプ氏らしい驚きのシーンだった。」 門田氏の確保したと云う席は政府が確保した千席の内ではないのか。

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