間違いだらけのREA-NET

間違いだらけのREA-NETと題するけれど、REA-NETが間違っていると云うのではない。REA-NETの使い方を間違えていると云うのである。


08/08/15付け鑑105号:地調委員会発、「地価公示業務におけるREA-NETの活用」と題する告示並びに鑑106号告示は、おおもとのところで間違えているのである。この点に関しては、鑑定のひろばNO.163に掲載される「REA-NETに関する一問一答:情報安全活用委員会発」についての記事も類似の指摘ができるのである。

 
間違いの最たるものは、REA-NETをITツールと捉えているところにある。REA-NETはITツール(Information Technology)でもあるが、優れてICTツール(Information and Communication Technology)なのである。似たようなものではないか思われるであろうが、Communication ツールとしての機能を備えているか否かは大きな問題である。情報を共有し共用しようとする、いわばナレッジマネージメント機能の有無は大きな違いであり、それは鑑定協会公式ウエブサイトの一方的な情報発信機能と比較すれば一目瞭然である。

 
ネットワークは全員が参加してこそ、その存在価値が発揮できるものである。一人の会員が参加しなくてもその効能は発揮できないのである。それはファクシミリや電話を考えれば自明である。一人でも不参加会員がいれば電話ネットもファクシミリネットもその機能は発揮できない。郵便に頼らざるを得ないのである。REA-NETの全面利用は印刷通信経費の全面的削減と煩瑣な事務を解消する。電話やファクシミリで日程調整や出欠確認する煩雑さも解消されるだろから、鑑定協会事務局はREA-NETを軸とする協会運営へと、根本的に運営方針を見直すべきである。

 
その情報共有・共用ツールの参加費用を、年額5,000円とは云え参加会員から徴収しようという姿勢こそが、REA-NETの性格も機能も理解されていないことを露呈しているのである。REA-NETの存在価値は、その大きさからREA-INFO(情報の双方向性確保)、REA-DATA(全会員が利用可能な発信ツール)、REA-JIREI(事例の安全な共有共用ツール)の順にあると云える。コミュニケーションツールであればこそ、情報流通の受益者は受発信者双方にある。全会員が加入することにより通信の双方向性が確保されてこそ、その機能を最大限に初めて発揮できると云えるのである。

さらに上記年額参加費用「5,000円」の内訳も問題である。 「5,000円」には接続認証機能の毎年更新費用も含まれているが、これは明らかに無駄である。 認証《Jarea認証》の更新は三年毎の更新で安全性は十分である。ただし業者中心のID&PW発行では、毎年更新も必要になってくるであろうが、鑑定士個人宛のID&PW発行であれば、さほどの更新頻度は必要ないのである。 このあたりも、REA-NETの間違いの一つである。

 
鑑定協会は速やかに、全会員に対してREA-NETのIDとPWを伝達すべきである。鑑定協会に加入することは、即ちREA-NETに加入することであると改めるべきである。REA-NETは開発途上であるが、未完成ではない。現に有する機能は十分にその効能を発揮できるのであり、開発途上という視点から云えば永遠に開発途上なのであり、永遠に進化してゆくツールなのである。

 
REA-NETの全会員加入を求めるときに決まって指摘されるのは、前掲の年額二千万円(会員一人当たり5,000円前後)の件である。このREA-NET維持管理経費の内訳は、サーバの維持管理費、参加登録会員の管理が主なものであるが、この両者は参加会員の多寡によって変動するものではない。 例え参加会員が一人であったも、サーバを維持し全会員の移動管理は行わなければならない固定経費である。だから全額を鑑定協会が負担することにより、全会員の速やかな加入登録を促すべきであり、そのことこそがREA-NETの機能を十全に発揮させることとなる。
では、慢性的な歳入不足に悩んでいる鑑定協会は、このREA-NET維持管理費を如何にして捻出するのかといえば、先ずは通常経費の削減効果が挙げられる。

 
a.理事会や委員会における配付資料は、全て事前にREA-DATAで配付すればよい。事前配付により理事も委員も事前精読が可能になり、ひいては審議の充実につながるであろう。理事会や委員会の開催当日はノートパソコンとプロジェクターを使用すれば、改めて印刷物を配布する必然性は無くなるのである。ここでもREA-NETのモバイル性がその効能を発揮するであろう。
b.次いで、会員録や速報やその他のファクシミリ配信を全てREA-NETに置き換えることが可能である。いわばREA-KAIINROKU(会員録)であり、REA-SOKUHOO(速報)である。 広報誌「鑑定のひろば」もREA-NETに置き換えることが可能であろうが、印刷物の保存性とか協会外配付などを考えれば、しばらくはPDFファイルのアップに止めておくべきであろう。また、協会ウエブに会員専用ページが設けられているが、今やその機能は全てREA-NETに移管すべきであろう。

 

以上の機能移管により印刷費や通信費が大幅に削減若しくは軽減されるであろうから、REA-NETの維持費の多くはまかなえると予想する。
鑑定協会予算書では会員宛の印刷・通信費総額が明らかではないけれど、筆者の手元に届く郵便物やファクシミリの総量から類推すれば、相当程度は削減されるだろうし、会員にとっても配布物の管理が容易になるから、REA-NET配付による受益の程度は大きいのである。

 
c.REA-JIREIの機能的意味
REA-JIREIを使わない士協会は、使わないことによって生じる責任を自覚すべきである。 個人情報保護法を持ち出すまでもなく、全国展開する不動産取引悉皆調査は十全の安全管理措置が求められている。 にもかかわらず今に至るも従来どおりの紙閲覧や紙配付を行っている士協会は、万が一の危険に対しての責任を果たしているのかと云う点を再認識すべきである。
事故は起こさないではなく、事故は必ず起きる、起きた場合に備えて十全の対策を講じていたか否かが問われるのであると自覚すべきである。従来型の管理不十分、追跡追認不可能な閲覧体制を今も維持している不作為を認識すべきである。なお、ここでいう閲覧とは士協会外部に対してのものだけでなく、士協会内部、分科会内部における情報管理・共有・共用をも指していることは云うまでもない。 士協会はREA-JIREIの安全かつ効率的な機能を使わない理由と、それによって生じる責任の負担というものを、今や明らかにすべき時期なのである。

 
d.REA-JIREIの課金機能
REA-JIREIには課金機能が組み込まれている。各単位士協会はその自主的判断によって、REA-JIREIの開示範囲を士協会内外に定めることができるのであり、REA-JIREI閲覧を士協会内部に止めることも自由であるが、閲覧量の増大効果や会員便益の向上や協働性や悉皆調査本来の趣旨からすれば、士協会外へもREA-JIREI接続を認めるべきであろうし、それは士協会財政にも少なからず寄与することとなろう。 同時に鑑定協会はREA-JIREIの利用を開始した士協会に対して、固定経費の負担を求めればよいのである。 もっと大胆にいえば、REA-JIREI課金額の基礎額として閲覧1事例当たり100円程度を「鑑定協会収入:REA-NET維持管理負担額」として上乗せ加算すればよいのである。

 
『結論』
総じていえることは、デジタル化が全てではない。アナログにもアナログの良さがある。時代が変遷しても維持しなければならないアナログ的存在もあるし、それは否定されてはならない。  しかし、電話が、ファクシミリが、ウエブサイトがそうであったように、安全で便利で双方向性が維持できるコミュニケーション・ツールというものが、鑑定士の掌中に入った以上、それを機能的かつ機動的に使わないと云う選択はないのである。  ましてや安全管理というリスクマネージメントを考えれば、より安全と認められている情報交換管理手段を使わないのは『不作為の罪』に問われかねないという認識を、鑑定士は共有すべきである。SNS(Social Networking Service)とか、グループウエアというものが、何故に隆盛を極めているのか、今一度考えてみたいのである。

 
鑑定評価というものの本質は、「ワンフォーオール・オールフォーワン(1人は皆のために、皆は1人のために)」にあると堂守は考えます。事例収集のみならず、地価公示も地価調査も、証券化評価にしたところで利回りや諸経費率のインデックスやベンチマークを考えれば、情報の共有と共用が欠かせないことであるはずです。そのナレッジマネージメント・ツールとしてREA-NETを発展させ拡充させてゆくことが、常に求められていると堂守は考えるのです。

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間違いだらけのREA-NET への1件のフィードバック

  1. 後藤雅文 のコメント:

    「間違いだらけのREA-NET」の発言に賛成します

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