復興支援に鑑定士の取組み

岡山県不動産鑑定士協会会長の白神学氏のご活躍に敬服賛嘆することしきりである。六月末の大阪府茨木市内の震災被害調査に始まり、続いて発災した「西日本H30.07豪雨」に被災した地元岡山県被害調査を始め、愛媛県、広島県と連日連夜の東奔西走、獅子奮迅のお働きである。

白神氏をはじめ多くの鑑定士の皆さんの被災地における活動が、不動産鑑定評価の社会的存在感を高め、認知度を深めてゆく大切な活動であると存じます。日頃、建物評価に精通する鑑定士であればこその活動でもあろうと存じます。今は引退する老いの身ではありますが、斯界の片隅に棲息する身としてとても有り難く、感謝申し上げます。

白神氏のご活躍はFacebookから毎日拝見させて頂いているが、まとめてご紹介するに際して、Facebookより直接引用させて頂く方が過不足なくご紹介できて宜しかろうと存じますので、ご了解を得たうえで、氏の投稿を日を追って引用紹介させて頂きます。なお、文面は一部編集させて頂いております。

2018/07/02 茨木市で調査要領をレクチャーする白神学岡山会会長

《2018/06/29》茨木市 1日目終了。17棟でした。木造の一般住宅なら10分ほどで終わるのですが、農家住宅とかになると手間が大幅アップでした。特に増築などされていると、市役所の図面もページが分かれていたり、未登記もあると大変でした。

最初は空気に飲まれてクラック何本とかやっちゃいましたが、結局壁面分割法が一番やりやすいと思い、3棟目以降は壁面分割法で通しました。ただ、建物がコの字型とか作図しにくいし、形状が複雑だと1棟30分以上かかっちゃいました。

《2018/06/30》支援二日目です。今日のお昼はコンビニ飯を車内で。市役所職員さんが飯屋に入ってると、のんびり飯なんかくってないで、さっさと調査せいと通報があるらしいです。

《2018/06/30》二日目終了です。昨日はほぼ全部壁面分割法をしてましたが、佐藤麗司朗さんに運用面のご指摘があり、朝のレクチャーと吉田先生のご意見を踏まえ、20点(半壊)以下が確実なものは暗算版壁面分割法より対応することで、大幅スピードアップ。特に形状が複雑な農家住宅で威力を発揮しました。

(注)佐藤麗司朗氏:東京都不動産鑑定士協会理事・相談事業委員会委員長、災害復興支援に対する東京都不動産鑑定士協会の取り組みを東京会会長の吉村真行氏とともに主導する。《東京士協会吉村会長ご挨拶

《2018/07/06》(白神氏44歳の誕生日) この日に総社市で工場爆発が発災し、異常降雨被害も発災する。特に氏の地元岡山県倉敷市真備町の被害は甚大。
(注)白神氏にとって忘れられない誕生日となったことであろう。

《2018/07/13》午前中、岡山県と岡山市の災害対策本部に住家被害認定調査についての申し入れをしました。午後は平時に支援可能性を申し入れ反応を示してくれた笠岡市と、今回支援要請があった矢掛町に訪問します。時間的な都合で今日は倉敷市は断念。

《2018/07/13》公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会は「平成30年7月豪雨」に関しまして、国土交通省から、被災地方公共団体の行う住家被害認定調査等へ協力することを要請されました。 連合会は、過去の自然災害における支援活動で培ってきた経験を活かし、都道府県不動産鑑定士協会や各地域の不動産鑑定士協会連合会などと連携し、被災された皆さまが一日でも早く安心した生活を取り戻せるよう、関係機関との連携を強化し、支援活動等に取り組んでまいりますと表明する。

《2018/07/19》愛媛県鑑定士協会で水害による住家被害認定調査のレクチャーに参加しております。

《2018/07/20》広島会員による広島坂町の一次調査実地レクチャーにしばし同行して、のつもりだったのですが、レクチャーする側になってしまいました。あとは広島会の皆さんに任せて私は明日の矢掛町との協議のため一足先に早引けしました。

地震との違いは調査表の種類が多いことですね。坂町はゾーニングが出来ていないので、地区に入って数軒こなすまでは、1-Aと液状化の調査表のどちらになるか迷うことが多い印象です。役所にはゾーニングの重要性を伝えましたが、人数的、時間的な問題でゾーニングできておらず、ゾーニング前に一次調査やっつけてしまうという感じです。

罹災証明の受付時の対応や発行の方法にも問題ありそうなんですが、役所は広島市や県との整合性を重視しているようす。

《2018/07/21》矢掛町への支援が決まりました。当方の提案に倉吉市さんが同意していただいたので、矢掛の調査方針や罹災証明書発行方針のほとんどに当方提案を受け入れていただく形になりました。鑑定士は一次調査は月曜日の1日だけですが、二次調査は鑑定士メインの予定です。岡山の鑑定士の皆さん、よろしくお願いします。

《2018/07/24》矢掛町支援2日目、倉吉市さんの班に加わり水害非木二次調査です。

矢掛町の支援の最中に笠岡市から連絡があり、住家被害認定調査支援について協議したいと連絡があり、矢掛町調査の後、笠岡市役所へ。とりあえず土砂災害の一次調査とB表二次調査について支援してほしいということで、あれこれ話しました。色々問題もあるようですが、担当者レベルでは支援する方向でまとまりました。

正式な決定はまだですが、7月31日、8月1日、3日の辺りで支援に入ることになりそうです。岡山の鑑定士の皆さん、矢掛町はほぼほぼ終わりですので、笠岡市への支援ご協力よろしくお願いします。

《2018/07/26》笠岡市、矢掛町の支援ができる岡山の鑑定士を増やすため、明日緊急レクチャーする事にしました。既存の資料を使ってもいいのですが、水害に特化するため、また配色や作図に統一性を持たせるため、床上50cm位の農家住宅を想定して、サンプルを作って見ました。ひょっとしたらミスがあるかもしれませんが、見つけた方ご指摘ください。

自分的にもシミュレーションになったので、良しとします。実際書いてみてわかったのは、木造で1.8m程度の浸水なら二階は調査要らない?! 《以上で、白神学氏のFacebook引用は終了する。》

住宅新報 2018/07/24号 大言小語より全文引用
大阪北部地震に続き平成30年7月豪雨。「有事の際も社会に役立つ専門家」を目指して被災地の住家被害認定調査等の支援活動を行っている不動産鑑定士たちが奔走している。被災者再建の第一歩となる「り災証明書」の取得に欠かせない調査だから、速やかさが求められる。

▼東京都不動産鑑定士協会は14年度から、災害時対応として住家被害認定調査等研修事業を実施してきた。その成果は16年4月の熊本地震で早速、実践で役立つ。都を介して南阿蘇村から支援要請が入った。そこでは全国から応援で駆け付ける自治体職員らと一緒に調査や住民の相談対応、更に不慣れな応援隊などへのレクチャー役など手分けしながら様々な活動を行ってきた。

▼熊本地震の体験を基に独自の教材を作り、災害時に被災者支援の活動ができる不動産鑑定士を増やそうと全国の鑑定士協会に働きかける一方、都内自治体と防災に関する連携体制を構築してきたのが東京都不動産鑑定士協会会長の吉村真行さんだ。

▼5月に鑑定士協連災害対策支援特別委員長にも就任。大阪北部地震では「北海道から九州まで多くの鑑定士が駆け付け」ているし、豪雨災害では愛媛県宇和島市、福岡県久留米市などからの支援要請に地元協会と連携しながら実践的な対応を推進中だ。大災害が続いたことで鑑定士の被災地支援活動はより機動的になり、存在感も高まってきたようだ。《引用終わり》

以上、引用が多くてネットのマナーとしては問題なしとはしない記事であるが、「白神氏のFacebook」記事も、「国土交通省からの被災地方公共団体の行う住家被害認定調査等へ協力要請」記事も、「住宅新報の大言小語」記事もいずれも拡散に値する記事であろうと考える。だから、いずれの記事もリンクを付して「鄙からの発信」に掲載する。

猛暑、酷暑がつづきます。白神氏をはじめ岡山会、広島会、愛媛会の皆様には、お身体に十二分に留意されて活躍されることを祈念します。

《追伸、せめて10年若ければ、足手まといにならぬ程度に働けたのにと、熱中症を避けて養生する老いの身をとても残念に思っています。》

《蛇足を承知の上で追伸》
北大阪震災もH30.7豪雨被災も、ともに大災害である。大阪はともかくとして、岡山、広島、愛媛において地元会中心では人手が足りないであろうと思われる。こんな時は隣接都府県の応援が欠かせないものであろう。具体的に言揚げするのは避けるが、こんな時こそ連合会や地域会の応援ならびに連携活動が求められるのでなかろうか。

被災住家被害認定調査等マニュアルの研修が、未だ十分に行き渡っていないという問題もあろうかと思われる。競売その他で建物調査の経験を積んでいる鑑定士であれば、一日あるいは二日程度の研修で現場調査参加も可能であろうから、連合会、地域会、単位士協会の連携や主導性や、何よりボランテイア意識と社会的存在であろうとする意識が求められると考える。

地元会としてもこれを契機として、社会的活動の裾野を広げる努力を重ねるべきであろう。他都府県士協会の活動に積極的に参加し、住家被害認定調査支援活動の経験を積みノウハウを獲得すべく努力を重ねるべきであろう。その上で、継続的な研修事業や自治体との協力覚書締結などを進めるべきであろう。固定資産税評価業務を始め公的評価に参画する鑑定士であれば、「乃公出でずんば」の心意気が求められるのであろう。

乃公は既に出ている。既に出ている乃公に続こうとすることが大切なのである。先駆者として炎天下に汗を拭きながら活動されている白神学氏、佐藤麗司朗氏、吉村真行氏はじめ各位のご活動の息の長い継続を祈念するものである。

《東京都不動産鑑定士協会のHPより》
2016.3.25「住家被害認定調査トレーニング
2016.9.10「南阿蘇村訪問及び住家被害認定調査講習会
2018.6.29「平成30年大阪北部地震 支援活動について
2018.7.12「大阪北部地震及び平成30年7月豪雨に関する被災地支援活動についての会長声明
2018.7.17「住家被害認定調査等研修会 ビデオ教材の公開について
《調査支援に際して、必須とされる持ち物、衣装などに始まり、調査の実際をビデオで説明する。調査結果のレポートも表示説明されている。上映時間15分》

災害復興まちづくり支援機構』設立趣意書
大規模災害における緊急・応急対策や復興対策を迅速かつ円滑に進めるには、行政のみならず、数多くの専門知識を有する民間の個人・団体等の支援を欠かすことはできません。
一方専門的資格を有する者といえども、災害時における専門的活動は平常時におけるそれとは異なり、各災害時特有の条件の下での活動が要求されます。また、個別的・断片的に対応するのではなく、相互に連携調整を図りつつ、継続的かつ柔軟に対応する必要があります。
以上から、このような専門家個人や団体が、平常時から連係を密にし、いざというときの活動の仕組みをつくると共に研鑽を重ねて行く必要があると考え、関係各位及び諸団体に広く呼びかけ『災害復興まちづくり支援機構』を設立することにしたものです。

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