PCは万能か

 パソコンを利用した鑑定評価は万能でしょうか。
 パソコンを利用すれば、評価作業の計算負担が軽減されて、作業工程の合理化が図れるとともに計算の正確さが実現できるという新たな神話が一人歩きしています。比準価格も比準表を採用すれば、短時間で多くの事例から数多くの比準結果が得られるし、多変量解析の手法を用いれば相応の解析値が得られます。収益価格については何度もシミュレーションを繰り返すことが容易であり、利回りなどの変動数値に基づいて多くの試算結果が得られます。


 しかし、原始データである取引事例や賃貸事例の量と質を分析することなくして、安易にパソコン解析結果を鵜呑みにすることは大変危険です。又、比準表や基本利率等の変動値を正しく設定しなければ、得られた計算値は砂上の楼閣であります。
 鑑定評価全般において、コンピューター化・デジタル化は時代の要請であり、必須アイテムではあります。如何にパソコン利用を進めても、基礎となる資料が古く、乏しく、信頼性に欠ければ、試算結果に信頼性がないことは自明の理であります。とすれば、広範な土地情報を常時、悉皆的に収集し整理分析することが必要であり、広範な土地情報とは、一義的に所有権の移転情報であり、土地建物賃貸借の開始情報から始まるものと考えます。我々不動産鑑定士はともすれば、価格情報や賃料情報に固執しがちでありますが、それら価格情報や賃料情報の基盤である所有権移転情報や賃貸建物建築情報こそが重要なのではないでしょうか。
 個々の単位会がまずこのことから始めて土地情報の基盤整備を行うことが迂遠な様に見えて、実は土地情報整備の近道なのだと思います。インターネットでも多くの物件情報が提供されるようになりました。特に都市部では有料の情報提供が溢れるようになり、一見すれば資料収集が簡便な時代に入ったように見えます。しかし、土地情報とは悉皆調査に立脚することが重要であり、抽出調査であればサンプリングが肝要ですが土地取引や建物賃貸は時期に応じて偏在するのが通例であり、だからこそ鑑定評価の需要があるのだというジレンマを内在しています。

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