数値比準表99’

 公的評価の鑑定評価書公開が現実のこととなり、鑑定評価書の記載について精密な検証が問われています。特に複数評価主体の評価書の整合性が問われています。比準価格においては、同じ事例を複数の評価主体が採用した場合における、事情補正、時点修正、標準化補正、そして地域格差補正並びに個別格差補正の整合性が問われています。
 幾つかの、疑問や批判が存在するにしても、取り敢えず、明らかな整合性不一致は避けなければならいない状況にあります。


 そこで、茫猿の所属する分科会の協議結果を基礎にして、地価公示採用事例を標準化補正するために数値比準表モデルを検討しました。モデルと云うほどの大げさなモノではなく、簡易補正表程度のものではありますが。  これを公開しまして、斯界各位の御批判を頂き、よりよいものに直してゆきたいと考えます。又、この連鎖として標準地も同じ目線で個別格差補正する必要があると思います。
事例標準化補正並びに出力データ印刷モデルの概要は以下の通りです。
1.事例標準化モデルは、データの貼付用シートである
a.「JIREI10」、
b.時点修正率入力シート、
c.格差率入力シートおよび
d.出力データ印刷シートで構成されます。(他に非表示シートあり)
このモデルで一度に補正可能な事例数は500件です。
2.使用手順は以下の通りです。
 まず、地価公示業務支援ソフトのデータ授受で、取引事例をエクスポートし、作成されたファイル「Jirei10.txt」をエクセルから開きます。(カンマ区切りテキストで開く) 次に、エクセル形式で開いた「Jirei10.txt」のデータ部分をコピーし、事例標準化モデルの「JIREI10」シートに貼付します。
※注意、事例標準化モデルの「JIREI10」シートを削除すると補正率計算セルがエ ラーになる。消去コマンド使用のこと。
※シートの移動・コピー機能は使用できません。貼付で十分です。貼付をした時 点で、500件以内の事例については補正率計算を自動実行します。 マクロ機能はヴィールス感染を避ける為に使用していません。
※補正事例件数が500件以上の場合は、モデルを改訂するか、モデルを複写し てご利用下さい。
※時点修正率は、価格帯に応じた年率の変動率を予め入力し ておきます。
※事情補正率の判定は時点修正及び標準化補正後の価格を検討し て、最後に入力 します。(入力・印刷表グリーンの欄)
※次いで、入力・印刷表を開い て、標準化補正後および時点修正後の標準価格を検討します。必要に応じて事情補正率を入力して、標準価格を固定します。
※月次変動率=「-」は、月次変動率=「0」です。入力・印刷表を印刷して、事情補正率、月次時点修正率並びに各欄の要因補正値をオプスソフトへ転載入 力します。
※補正事例数に応じた印刷頁数は、入力印刷シートのAJ2セルに表示されます から、印刷ダイアログで頁指定を行ってください
※街路方位 北=0(補正を要しないと云う意味からは標準値)、南=3
※接面条件 商業角地=7、住宅角地=5、他に二方路地補正もある。
※他には画地規模、接面高低差、画地形状、間口奥行対比率、舗装、系統連続性も補正対象としています。
※画地規模については、面積過大は検討対象としていますが、面積過小は検討外としています。以上の格差率は分科会の協議結果を反映した数値比準表に拠ります。
 このモデルの副産物として以下の問題点が指摘できます。
1.固評や相続税標準地評価では、当該評価基準で画地補正が必要でないものとしての標準価格を試算の上、評価書を報告致しますが、地価公示では試算過程には存在しますが、公表はされません。鑑定評価としてはそれでよいのでしょうが、標準地選定の中庸性の原則や標準地選定の個別的要因の要件との対比からすれば、側道等補正や接面道路方位補正、一部には画地形状補正等に、公表値と実際標準値との間に問題点を内在しているのではないでしょうか。
2.正面道路の幅員については、現行の六次改訂土地価格比準表では、個別的要因と地域要因の両者において比準因子として取り上げられていることから、地域要因比較に委ねてあります。ただし、4m以下については、当然に別途セットバック計算が行われること、無道路地は別途補正することで、一部は充足していると考えます。
3.角地・二方道路地等の道路幅員と方位については考慮していません。しかし、本来的には以下のように考えるべきではと思います。正面道路の幅員と方位を論ずるのであれば、側道幅員及び側道方位を論じないのは整合性を欠くと考えます。それらを総合すれば、道路に関わる標準化補正率=正面幅員×正面方位×側道等幅員×側道等方位×(セットバック減価×建蔽率加算)ではないかと考えます。かっこ内は項目を分けて計算してもよいでしょう。
4.何よりも、六次改訂土地価格比準表を含め抜本的に見直すか、既存の土地価格比準表と本稿で論じているような数値比準表とは別個のものとしての、比準表の新規構築等を考えることが必要なのではないでしょうか。分科会或いはブロック単位で統一された数値比準表を用いて評価を行うに際して、
a.個別的要因と地域要因の比較因子の相乗効果を生みやすい重複の解消、
b.数値比準表を有効に使用するために必要な比準項目の設定、
c.定性的補正項目の再検討、 d.技術的・細部的には総和と相乗の再検討、
e.距離条件についてはマトリックス比較ではなく、リニア比較を行うべき、
f.数個の事例地と一個の標準地の比較という比準過程ではなく、一圏域内の全評価対象地と全収集事例との一括比較という過程を経る。
等々、多くの課題が残されています。これらの課題を放置したままで、発車することの危うさを感じます。
 ちなみに、筆者の周辺ではb項目について、圏域中心点(通常は市区町村毎に設定する中心点・最高価格地点にほぼ同義)として、施設或いは交差点を協議設定して、設定地点からの道路距離を要因として捉えて、重要比準項目(当然にリニア比準・無段階比準)としています。
 又、いわゆる個別的要因は画地条件に限定し、その他の要因は全て地域要因として便宜的に比較するという比準工程も採用されています。
各位のご参考になればと思いましてと云うより、各位の御批判や御意見を伺いたくて、この事例標準化補正モデルを公開します。【圧縮自動解凍・564KB】
ご希望の方には添付ファイルでお届けします。
同時に、既に同様のソフトやモデルを作成・使用されておられる方は、ソフトの交換を願えないでしょうか。
ご希望の方は、 所属分科会、 事務所名、 氏名、 年齢を明記の上、私まで、ご希望Mailをお寄せ下さい。
 尚、このモデルは国土庁提出用の統一フォーマットである「Jirei10.txt」をもちいて、(有)オプス社の地価公示支援ソフト(’99)での検証を行いましたが、他社ソフトでの検証は未確認であることを御承知下さい。同時に、進行中の公示作業に合わせてのものであり、拙速の御批判は甘受します。 又、匿名の方にはお応えはしません。

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