花名刺

花名刺って知ってますか。大きさが縦6cm前後、巾が2cm前後の縦長の
可愛い名刺です。一名、千社札ともいいますが、神社仏閣に貼ってあるよう
な大きなものでなく小さい名刺です。元々は木版刷りの伝統工芸であり、印
刷値段もそこそこしたようですが、最近はパソコングラフィックで作成して
和紙風シール紙に印刷すれば簡単にできますから、特に版元に注文しなくて
もできるようです。
花名刺は今では主に花街(カガイ)の姉様達が持つもので、源氏名以外は花
街の名前と置屋さんの名前くらいしか印刷してありません。「先斗町(花街)
・蔦屋(置屋)・まめや(源氏名)」などと印刷してあります。大体が二三
色の色刷りで、結び文や短冊、季節の花などが図案化されています。
京都の花街界隈のスナックや小料理屋さんでは、柱やカウンターの隅に花名
刺が何枚か貼られています。POP広告みたいですが、芸妓さんや舞妓さん
の宣伝と云うよりも、「花名刺の持ち主が立ち寄られますよ」というお店の
さりげない自己主張を感じます。著名人の名刺や色紙をこれ見よがしに掲げ
るよりは、随分と粋な感じがします。そして花名刺であるからこそ色鮮やか
で艶やかな雰囲気を醸し出しています。
何で、こんな話を書いているのかと云いますと、デジタル化の時代にアナロ
グの極致を見る思いがするからです。電話番号も住所も記載されていない、
小さな花鳥風月図柄の名刺は、掲載された情報は極く僅かですが、僅かな故
に多くのものを伝えるような気がします。秘すれば華とまで云えば褒めすぎ
でしょうか。
Webの時代には、情報が氾濫しています。氾濫する情報のなかで必要なも
のを如何にして取捨選択するかが問われています。同時に、手軽さからか、
書き散らし情報を撒き散らすよりも、控え目に発信すること或いは推敲を重
ねて濃縮した情報を発信するように心がけることこそが問われていると思い
ます。このことは、そのまま茫猿に返しますと仰有れば、まさにその通りで
あり甘受するとともに、自戒したいと考えます。
せんじゃ‐ふだ【千社札】千社詣での人が持参して社殿に貼りつける紙札。
自分の氏名・生国・店名などを書いたもの。のち図案化して木版刷りとなり、
仏閣・橋梁などにも貼る。誹風柳多留34「鳥刺しのやうにはつてる―」

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