アピール

昨日のメールニュースで、建設省建設経済局不動産課及び財団法人土地総合研究所が主宰する「不動産投資市場整備検討会」が発表しました「今後の不動産投資市場の整備について(中間報告要旨)」についてお伝えしました。


お伝えしたかったことは、同中間報告の枢要の部分が「不動産投資顧問業登録制度創設」に割かれているのに、そのなかで、助言業務を行うのに適当な既存資格者として、不動産コンサルタント技能者やビル管理士等が挙げられているのに、不動産鑑定士が挙げられていない片手落です。
又、この報告は中間報告といいながら、3月末から投資顧問業登録制度の受付を開始するとうたっています。時間が無いどころの騒ぎではありません。
もう一つは「不動産インデックスや不動産時価評価」についてであります。これらは鑑定業界や鑑定協会が大きな部分を担うのが当然であるのに、我々が蚊帳の外に置かれている感じがするからです。
中間報告は以下のように示します。
「証券等のように組織的な取引市場による市場価格がないため、投資家の信頼に応える評価手法の確立や時価評価を行う仕組みの検討が課題」と前置きして「今後これについては、守秘義務を負う第3者機関が各ビル所有・管理会社等から正確な賃料情報の提供を受けてインデックスを作成する仕組みも含め投資家の信頼にたえる不動産インデックスの整備について十分検討を行うべきである。」と示します。
不動産インデックスについては、その必要性が前から云われながら等閑にしてきた我が鑑定業界の身から出た錆とも云えますのでヤムを得ないところもあります。ここに云う不動産インデックスとは、正確且つ豊富な事例を基礎とする、取引利回りと還元利回りの把握にあると、茫猿は考えています。
さらに、根幹をなす評価については、「また、時価評価の仕組みについては、第三者機関による評価システムについても検討を行うこととする。この場合、第三者機関による評価の義務づけはファンドの運営コストの上昇と投資家の負担の増加を伴うものであるので、その必要性について慎重に検討するとともに、任意的に利用できる第三者機関の可能性についても不動産投資商品の信頼性向上の観点から検討していく必要がある。」と示します。
守秘義務を有し、永年地価公示に携わり高度の専門知識と経験を持つと自負する(社会から観れば勝手に自負しているのかも?)我々鑑定業界や鑑定協会は片言隻句も出て参りません。それが、鑑定業界の発憤を促す愛の鞭であるとするならよいのですが。
1月の公認会計士協会の販売用不動産の強制評価減と、あまりにも文脈が似すぎてはいるのではないでしょうか。過去の[鄙からの発信]で茫猿は繰り返し申して参りました。
鑑定業界は「生い立ちの不幸を背負う」と。即ち、制度発足当初から地価公示制度と一卵性双生児であったことです。その後も地価調査、届出添付鑑定、届出第三鑑定、民事執行法施行に伴う競売評価、そして固定資産税標準宅地評価、最近は不良債権処理附随評価等々、常に建設省と国土庁の庇護育成と業務提供のもとにありました。
今でも、公示調査で毎年数十億の予算が鑑定業界宛に支出され、三年に一度は数百億の地方自治体予算が支出される恵まれた温室環境にあります。だから、「ものを言わず沈黙を守って、霞ヶ関のご指導に従っておれば悪いようにはならない。」という、従順な子羊体質が骨の髄まで染
みついてしまったのではないでしょうか。二年に一回の協会役員選挙でも候補者の多くは、「地価公示の報酬引き上げ、地点増設に努力します」ということ以外は、抽象論が殆どです。
平成に入ってからの数回の選挙でも、潮流の変化を見据えて我々の向かうべき具体的方向性を示した候補者は僅かです。最近では地方社団や部会或いは鑑定協会の役員立候補者が見当たらないというお寒い状況もあります。
国土庁が国土交通省に変わるのは目前です。何よりも霞ヶ関が音をたてて変わりつつあります。霞ヶ関頼りの業界は、切り捨てられる時代に入っています。霞ヶ関に提案し、時に議論を挑み、対等のパートナーとしての自覚と責任を分け持つ気概と努力が求められているのです。
建設省と朝日新聞のWeb上における「長良川河口堰論争」も、霞ヶ関の変化を物語っていると考えますが如何でしょうか。(建設省HP参照)
公認会計士会の全頁広告に始まり、最近は税理士会の全頁意見広告が全国紙に掲載されました。高々5千名の鑑定協会では全国紙全頁広告は予算的に辛いでしょう。しかし、マスコミだけがツールではありません。 Webだって立派な情報・意見発信手段です。
私は、業益を守れと申しているのではございません。勿論、茫猿とて鑑定業で身すぎ世すぎをささやかに行う身です。仕事が増え生活が安定することを願わないわけではありません。
だが、それよりもサムライ稼業を選んだ以上は、ささやかながらも微力ながらも、社会の求めるものに的確・迅速に反応し、社会の求めることが是か非かを信念をもって発信してゆくことが、大事だと考えるのです。
資格を与えられた(獲得して)、エスタブリッシュメントとしての自負・自尊があるのならば、自らの過ちは素直に反省し改め、同時に自分達の果たし得る役割を、アピールしてゆく姿勢が肝心なのだと考えます。
沈黙を守ることは、楽なのです。もの言えば唇寒しとも云います。
茫猿も啼かずば撃たれまいにと、囁く声が聞こえます。でも、云います。
云わずにおいて、後悔するよりも、もの申して後悔しようと考えます。
何がなんでも、不動産インデックスのスキームを、この夏遅くとも秋までには形にする必要があります。そして、時価評価は鑑定士に依頼するのが一番良い結果が得られるという社会の評価と認識をかち得るための努力を重ねなければなりません。
我々を取り巻く環境が我々を無視するのであれば、無視し得ない存在として存在感を我々自身で高めなければなりません。
斯界の各位に申し上げます。積極的に鑑定協会に意見具申を行いましょう。本会だけでなく、単位社団や部会においても積極的且つ建設的な議論の嵐を起こしてください。そして、公認会計士協会や建設省等々に意見を具申して下さい。
同時に土地取引の悉皆調査や賃貸不動産の悉皆調査に着手し、各エリアにおける不動産インデックス作成の準備を始めて下さい。
量的に満足でき、質的に高い情報を収集整備することこそが、評価の精度を高めるスタートです。技術的なハードルは情報整備を行いながら努力を重ねればよいと考えます。
「隗より始めよ」と云います。及ばずながら、茫猿も地元士協会でインデックス作成の為の新規事業を提案し、実現に向けて努力を傾注します。
不動産取引悉皆調査にリンクする不動産賃貸悉皆調査に着手し賃貸情報の系統的整備を新年度事業として提案します。障壁は数えればきりがありません。現実を見れば穴蔵に入りたくなります。
でも、理想を忘れた現実主義者にはなりたくないのです。否定的なことを数え上げるのは二の次にしたいのです。理想と目標は高く掲げ、それに向かって、現実の障壁を一つずつ乗り越えてゆくという姿勢がサムライのあるべき姿なのだと考えます。
※本稿は、過去の[鄙からの発信]を踏まえて申し述べておりますので、論旨が不明確な部分があるかもしれません。不明な部分は過去ログをご参照下さい。(販売用不動産の強制評価減、不動産投資市場の整備
(中間報告)、取引悉皆調査、不動産インデックスは過去ログ有り)
※昨日の協会インデックス専門委員会報告は近日中に掲載します。
※昨今、随所で話題になる「時価評価」を論じるときに、避けて通れない「正常価格論」も近日中に掲載したいと考えています。

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