評価の電算処理-1

 茫猿の周辺で、評価作業工程に数値比準表を採用した電算処理が一番
最初に導入されたのは固定資産税標準宅地評価替え業務に関してであっ
た。 94年評価替え業務に際して導入されたから、導入時期としては92
年ないし93年のことである。
 その後、固評標準宅地評価業務も97年評価替え、2000年評価替えと回
を重ねることにより、電算処理ソフトの充実、処理ノウハウの蓄積によ
り比準表も充実し、評価工程の透明化と整合化が進んできた。
さらに、地価公示や地価調査評価作業の電算化の進捗と並行して、公示
・調査においても比準表を駆使した作業が普及しつつある。
 不動産の鑑定評価に数値比準表を導入することについては、未だに賛
否両論が存在するのは事実であるが、多数画地の評価の場合や複数の評
価主体が同時に評価作業に参加する場合において、互いの評価作業の目
線を統一するという意味からは、比準表という評価上の物差しの平仄を
合わせることは、秤量比較の透明さや衡平さの観点からは望ましいこと
であり、合理的なことであると間違いなく云える。
 すなわち、単独の評価主体が多数画地の評価を行う場合においても、
錯綜する多数の事例地と多数の評価対象地相互比較において、最初の比
較結果から最後の比較結果に至る全ての平仄を確実に整合せしめること
は、数値比準表を利用した電算処理を行わなければ相当の難事である。
 まして、複数の評価主体が取引事例作成作業と評価対象地比準作業を
重複重層して行うときに、全体の整合性を保持するのは十分に難いこと
である。つまり事例要因作成及び評価対象地要因作成の統一マニュアル
化と比較尺度の統一は避けて通れないといえる。
 このことを指して、多量重層的評価においては数値的土地価格比準表
の適用が望ましいと申し述べる根拠なのである。また、茫猿が比準表と
云う場合には、「数値的或いは数値化土地価格比準表」を指しており、
これは後述の「国土庁・土地価格比準表」を直ちに指すものではない。
この数値化比準表についての具体例は、フリーウエアとして「鄙からの
発信」に公開している数値比準表を参照して下さい。
 以上のことに関しては、茫猿が過去に繰り返し述べてきたことである
からくどく再説はしないが、「鄙からの発信」の以下の頁に掲載の通り
であり、ご関心をお持ちの方は、お目通し頂ければ幸いです。
【茫猿遠吠・鑑定評価のデジタル化 99.09.08】
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=985099496
【茫猿遠吠・土地価格比準表・99.9.17】
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=985100611
【茫猿遠吠・数値比準表の採用 99.10.25】
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=985100944
同じく、「鄙からの発信・鄙巷交歓・ダウンロードコーナー」には下記の
評価モデルを掲載してありますから、ダウンロードしてご参考になさっ
てください。
「hyouka.exe  数値比準表を使用した評価モデル、主に固評対応」
 さて、比準表を語る上で、国土庁・土地価格比準表を避けて通ること
はできない。1975年1月付けの50国土地第4号通達に始まる「土地価
格比準表」は、その後の数次の改訂を経て比準表自体も充実し現在に至
るものである。
同時に、当時の時代背景として、国土利用計画法施行に伴う届出等土地
価格審査の適正化及び迅速化という要請があったこと。同時に現在と異
なり電算利用が一般的でなく、せいぜい電卓利用の時代であったという
ことも忘れてはならない。
 このことを最も如実に示しているのが、五次改訂・土地価格比準表の
手引き(住宅新報社刊)18頁から19頁にかけての記述である。少し長い
が引用する。
<引用開始>
「地域要因の格差率は、地域要因の項目の大分類となっている条件ごと
に計算された格差率を相乗して求めることとしている。ただし、同じ条
件のもとでの各細項目ごとでの格差率は加算して求めることとしている
ことに注意する必要がある。
価格形成要因としてのそれぞれの細項目は、各々個別的に独立して価格
を形成するというものではなく、大なり小なり有機的に関連し結合し合っ
て価格を形成するものであるから、条件相互間においては相乗して求め
ることとしている。一方、それぞれの条件における細項目において加算
することとしているのは、むしろ計算を簡明にするためである。
<引用終了>
 つまり、細項目における格差率は加算によるというのは、計算を簡単
明瞭にする、つまり計算上の便宜を優先したということである。それで
も個別的要因画地条件では、加算ではなく格差率の相乗を採用している
のは、加算方式では計算上の開差或いは誤差が大きく成りすぎるからで
ある。
 例えば、+7と-3の総和は(100+4)/100=1.04であるが、1.07と0.97の
積は1.038であり等しくはならない。同時に細項目格差を大きくした場
合にはマイナス値を生じる可能性もあり、適用価格帯に制限を加えなけ
ればならない。
 今や、電算処理の時代であり、計算行程は加算でも相乗でも問題はな
い。とすれば、より合理的と考えられる各要因格差率の相乗方式を全面
的に採用すべきではなかろうか。「むしろ計算を簡明にする」という意
義は既に失われているのではなかろうか。
「以下、次号に続く」

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