天災か人災か

 9月11日から12日にかけて、東海地方は大きな水害におそわれま
した。多くの方からお見舞いを頂きました、ここにお見舞いへのお礼を
申し上げます。茫猿も12日は東京へ出張の予定でしたが、新幹線不通
により全ての予定をキャンセルするはめになりましたが、直接の被害は
なく無事に過ごしております。
 名古屋市の西側に隣接する西枇杷島町では新川の決壊により全町が水
没し多くの家屋が床上浸水の被害を受けました。西枇杷島町の町域は約
3.4平方キロ、世帯数 6,600、人口 17,400人です。他にも名古屋市内や
愛知県大府市などで多くの家屋が被災しました。また名古屋市内地下鉄
線路の冠水が今回の水害の新しい様相です。
 この水害の原因は新川という都市型河川が計画雨量を遙かに上回る雨
量に耐えきれず決壊したことにあります。新川の時間当たりの計画雨量
50mmに対して、100mmを超える降雨量に遭遇したことが原因です。
 東海地方では1959年に死者約4,500人を出した伊勢湾台風による大災
害や、1976年9月の長良川決壊による災害等の経緯を踏まえて木曽川や
長良川・揖斐川などの大河川の整備は比較的進んでいますが、中小河川
の整備は進んでいません。さらに都市周辺の中小河川は河川区域ぎりぎ
りまで都市化が進行することにより、堤防補強もままならない状況にあ
ります。そこへ計画雨量をはるかに超える雨が降れば、河川の流下能力
を超えた雨水は溢れざるを得ないと云うことです。
 1995年には、100mm/h雨量は全国で1件しか記録されていませんが、
99年には10件を数えていると云うことです。異常降雨量が異常でなくな
っている兆候なのかもしれません。この夏の猛暑も併せて考えれば、温
帯気候から亜熱帯気候に移りつつあるということかとも思います。
 そして、都市化の進行が水田という自然の貯水池をなくし、都市内の
湛水排除能力の向上が河川の流下能力を上回る雨に遭遇すれば堤防を越
える溢水を招き、さらに堤防をあふれる溢水が堤防決壊につながると云
うことでもあります。
 一昔前なら、日照りで凶作を招き大きな話題になったような異常旱天
の後に、異常降雨による災害を受けた訳です。流域の降雨量を排水する
ための整備は進みましたが、その雨水排水を引き受ける河川の能力には
限りがあり、異常降雨時には水害を避け得ないということなのかもしれ
ません。
 名古屋市内の多くの地下鉄線路が冠水してほぼ一日不通になったほか、
名古屋市と岐阜市を結ぶJR東海道線や名鉄本線も西枇杷島町内で線路が
冠水して約2日間不通になりました。都市型水害の危険に準備しなけれ
ばならない時代に入ったと言えるのではないでしょうか。
 西枇杷島町の災害が大きいので、報道量としては少ないのですが、見
逃せないのが中山間部の災害です。山間部では今回の異常降雨による多
量の流木が土石流を引き起こし、各地で道路を寸断しました。特に岐阜
県恵那郡上矢作町では、土石流による国道や県道の寸断で孤立する集落
が多く出ました。家屋の倒壊や農地の流失も起きたようです。
 多量の流木の発生は、80年代以降の山林の荒廃が大きな原因です。
杉に代表される針葉樹の一斉植林と、過疎化によるその後の育林放置が
杉山の荒廃を招き、台風や異常降雨によって山林崩壊を引き起こし流木
を発生させるのです。この件に関しましては、昨年の10月に「山が泣
いている」と題しまして只管打座に書きました。再説はしませんが、毎
年山崩れに悩まされる時代に入ったと考えていいのではないでしょうか。
 都市型水害も山間地の水害も詳しく原因を探れば、人智を超えた天災
ではなく、自然の摂理を甘く見た人災の一面が否定できないのではと考
えます。むやみな都市化や植え放しの山林が報復を始めたと思えてなり
ません。
「99年10月2日:山が泣いている」
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_shikan/newspaper.cgi?action=view&code=985130240

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