地価公示あれこれ

「商業施設の栄枯盛衰」
 昨日の2001年地価公示岐阜西分科会で羽島市小熊町地内のサテイ (マ
イカル系SC・売場面積8600平方メートル、99年度売上 30億対前年比
マイナス 16%)の営業不振が話題になりました。同店の営業不振が周辺
商業地域の地盤沈下を加速しているという判断があり、そこから地域の
地価水準動向をどのように見るかという議論が行われました。
 ところが、今朝の新聞では同店が2001年2月閉店決定の記事が掲載さ
れました。約5キロ北方に大型複合商業施設「カラフルタウン岐阜」が
2000年11月オープンする影響の先取りと云えましょう。
 公示分科会の検討速度を上回る、事象の先行速度に驚かされます。
と云うより、驚いていてはいけないので、事象の変化を的確に予測して
ゆくことの重要さを改めて考えさせられた茫猿でした。
「標準化補正と個別格差補正」
 価格形成要因について数値比準表を用い、評価主体の目線の平仄を合
わせて、より的確に、よりバラツキを無くす方向での検討が進められて
います。
 茫猿が所属する分科会でも、「道路接面方位」、「接面道路幅員」、
「角地・準角地、二方路、三方路、四方路」、「画地規模」、「画地の
間口奥行」等について数値比準表を用いた標準化補正や個別格差補正が
検討されています。
 そこで、興味ある議論が行われました。
方位については八方位に分類し、各々の格差補正率を示すという案は異
議無く了承されたのですが、角地については議論が百出しました。
 具体的にはこういうことです。正面道路については、幅員・接面方位
について数値比準します。(道路種別・系統・連続性の比準表について
は継続検討課題です)
 それに対して、角地等は「角地として、用途的地域に応じた加算率を
定める」という提案が、比準表検討委員会からなされました。
ここで、異論が出たわけです。つまり正面道路については、前述のとお
り、幅員・方位について要因毎の格差率を判定し相乗値として標準化補
正率等を判定するのに、なぜ側道等については、要因毎の区分を行わず
に一括補正率を採用するのかという疑問です。
 側道等についても、幅員、方位の各要因毎の格差補正率を判定し、相
乗値として角地等補正率を判定すべきではないのかという異論です。
※正面道路(北方位:標準、幅員6m:標準)の画地評点 100/100
※角地a(正面道同じ、側道東方位:+2、幅員4m:+2) 100/104
※角地b(正面道同じ、側道西方位:+0.5、幅員3m:+1.5) 100/102
※角地c(正面道南6m:+3、側道東方位:+2、幅員6m:+3) 100/108
 付設格差評点については、検討の余地がありましょうが、2m以上の
側道等幅員評点は1点以上を加算するとしますと、おおよそ以上の格差
評点が得られます。
 問題点は比準表の構成にあります。正面道路は種別・系統要因はとも
かくとして、幅員・方位という概念(デジタル的概念)が明確な要因を基
礎として検討するのに対して、側道等については、角地、準角地、二方
路等という異なった概念(アナログ的概念)を持ち込むのかという点にあ
ります。
 つまり、質的に異なった概念を並べて比準表を構成しようとすること
により、比準表の全体構成を不明瞭かつ曖昧なものにしてしまったとい
う点にあります。
 もうひとつ、比準表について起きた議論は、用途的に細分類して、方
位・幅員等の格差率を判定すべきではないかという議論です。
 ここまでお読みの賢明な読者諸兄はお判りでしょうが、都計用途以外
の分類概念、例えば標準住宅地域、混在住宅地域、農家集落地域、近隣
商業地域、普通商業地域といった分類概念を比準表に持ち込みますと、
混乱が生じます。
 評価主体によって分類概念は微妙に違います。
 大きな狂いは生じないでしょうが、それでも分類マニュアルの統一や
煩瑣な分類検討等の作業工程が必要になります。それでパフォーマンス
が向上すればよいのですが、かけた手間ほどに効果が生じるとは考えら
れません。このことは比準表そのものに内在する誤差を考えて頂ければ
ご理解願えると思います。
 旗竿分譲地、小規模分譲地、中規模分譲地、大規模分譲地といった分
類概念も同様です。5区画以内、20区画以内、100区画以内、10
0区画以上という数値区分を設けたとして、必ず99区画と101区画
の分譲地の間で格差評点が異なることについての疑問が発生します。
 数値比準表を用いて格差補正を行えば、避けられない問題点です。
アナログ的に行えば、99区画と101区画は同等という補正が可能で
すが、デジタル的に行えばそのような補正はできません。リニアモデル
を使えばよいという意見もありますが、全ての要因にリニアモデルは使
えません。数量化要因については、カテゴリイ毎の格差率が生まれ、格
差の間は非連続となります。
 従来型比準表(アナログ的比準表)の再検討を行わずに、数値比準表
(デジタル型比準表)を持ち込もうとしたことによる混乱だと思います。
表現が厳しいかもしれませんが、木に竹をつなごうとしたことによる混
乱だと思います。読者諸兄はどのようにお考えでしょうか。
 尚、岐阜の東西中各分科会では、事例や標準地のテキストデータを
EXCELにエキスポートして、数値比準計算を行い、その結果を公示ソフ
トにインポートするという手法を急遽検討することになりました。
 成果があがれば、『鄙からの発信』にてまたご報告します。

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