世間を騒がせてと云う常套文句

『鄙からの発信』冒頭の特集「岐阜県士協会の独禁法違反容疑」のなかで、
茫猿は次のようにコメントしております。
「中略・・・・・・同時に、いたずらに世間をお騒がせするとともに、
不動産鑑定士に対するあらぬ疑念を社会に与えてしまいましたことにつ
きまして、岐阜県鑑定士協会の一員として深くお詫び申し上げるもので
ございます。」
 この「世間をお騒がせして」という、不祥事に際しての常套文句につ
いては、茫猿自身はかねてから疑問に思っていました。しかし、先日の
ように公取委調査スクープ記事がでたり、警告示達を受けたりして、声
明文等を作成しようとすると、やはりこの便利な常套文句に頼りたくな
ります。
 浅読みで誤解されると困るのですが、
「岐阜県士協会に対する今回の警告は行政指導であり、行政処分ではご
ざいません。抵触する虞有りと警告は受けましたが、抵触する行為あり
とされた訳ではございません。しかし、世間の皆様にはご心配やらご迷
惑をお掛けし・・云々・・」
 というような心情の全てを、「お騒がせして申し訳ございません」と
いう言葉にして片付けてしまっていると言えば、言い過ぎでしょうか。
 勿論、我々はそのように軽く考えている訳では決してございません。
そのことは「茫猿遠吠」の最近記事に詳しく申し述べているとおりです。
ところで、01.01.31付け 日経新聞夕刊「弁護士余録」というコラムに
国広正氏が「不祥事企業のおわび・危機管理能力を反映」と題して論じ
ておられます。冒頭の部分を引用いたしますと。
——– 引用開始 ———
「世間をお騒がせして申し訳ない」というせりふを聞くことがある。不
祥事を起こした企業が記者会見で使うことが多い。これを聞くと「騒ぐ
とか騒がないの問題じゃないだろう?」と文句を付けたくなる。これを
「企業の危機管理」の観点から少し「理論的」に説明してみよう。
——– 引用終了 ———
 として、法律違反や事故などを起こして危機的状況に陥った企業の危
機打開策について述べられている。要約すれば、
1.事実を正確に把握し、原因と責任の所在を明らかにする。
2.そして危機の拡大・再発の防止策を講じる。
3.さらに、危機克服の過程を世間にきちんと説明する。
 ということが大事であり、「世間をお騒がせ」式の対応には、こうい
った視点が欠落していることが多い。
 同時に氏は、危機的状況時は企業(岐阜県鑑定士協会)が世間から注目
を浴びるときであり、この逆境に対処する処し方こそが、その後の企業
(士協会)への世間の評価を左右するとも述べられている。
 茫猿も全く同様に考えます。
00.10.18時点での私たち岐阜県士協会の対応をめぐっても同じ議論が展
開されたし、その後においても同様の趣旨からの御忠告を何人かの読者
諸兄から頂きました。でも現実はなかなか茫猿が考えるようには参りま
せん。
 いわゆる世慣れた日本的で曖昧な対応としては、「世間をお騒がせし
て申し訳ございません。」と申し上げて、後は人の噂も45日と時の過ぎ
ゆくのを「蛸壺」に入って待つ方が楽なのかもしれません。
 でも、茫猿はあえて岐阜士協会の認識や対応状況をご報告して参ろう
と思っていますし、本義に即した対応策を求めてまいります。
「貧しき日本」と威勢良く喝破した手前もありますし、評論家風に終始
して、一見訳知り顔をしながら逃げる世代の一人にならないように少し
でも心がけたいと思っています。
 格好だけ佳さそうで修羅場に弱い、か細きインテリ(自分でインテリ
を呼称するのは面映ゆいが)にならないように。茫猿は何をしている、
何をしようとしていると、自問自答しながらまいります。
【ヤハリ、エエカッコ、ですか!! m(_ _)m !!】
いつもの蛇足です ———
 実は、茫猿は若いときからずっと、不動産鑑定士のレーゾンデートル
に悩んでいるのです。
レーゾン‐デートル【raison d’treフランス】 存在理由。
 他の資格業務種では明らかに見えるレーゾンデートルが、鑑定士には
今ひとつ確かなものとして確認できないのです。鑑定士のレーゾンデー
トルとは一体何なのであろうか。24歳から30年余もこの業界で生き
てきて、今更なんだと云われようが、確かな存在感というか手応えとい
うか、はっきりしないのです。
 先日、今年80歳になるという某不動産業者さんが久しぶりに事務所
にお見えになりました。
 岐阜市近郊の田圃がドンドン安くなっていて、公示価格坪23万円の宅
地の1km先で農用地ではあるけれど「1反750万円」の田圃の売り
物が出たという話やら、
 奥地林地の坪当たり価格は50年前も今も豆腐1丁と同じだなどとい
う四方山話の最後に、
「お陰様で私は不用地を処分して相続税分の現金預金は用意できたので、
いつ死んでもよくなった」と曰いました。
【茫猿はウーンと唸って合掌です】

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