固評スキーム試案

 先日の公取委警告を受けた後、来年度の15年固評評価替え業務に際
して、士協会は何を為すべきであるのか、何を為してはいけないのかと
いう点を主眼点として対応策をまとめて関係方面に私案として具申しま
した。
読者諸氏にとっても、関心事であり、また何かのご参考になるかと存じ
まして公開致します。
 改革私案には、総論、固評分科会設置規程、固評委託契約特記仕様書
が含まれます。設置規程や仕様書は地価公示関係を基礎にして作成して
いますこともあり、成否が確定するまで掲載を省略します。また組織系
統図はメール送信ができませんので割愛します。
※あらかじめお断り致しますが、一連の改革試案はあくまで、茫猿の私
案です。(社)岐阜県不動産鑑定士協会の正式案でも無ければ、士協会で
検討中の試案でもございません。この点には呉々もご注意下さい。
 また、私案たる存在を一歩も出ないものであり、私案が採用されるか
否かは、士協会と県所管課の意向に係っているものであります。
試案の骨子は以下のとおりです。
一つは、多様な契約の存在を是認するものであり、士協会は士協会包括
取纏契約を希望される市町村との契約を辞退するものではないが、積極
的に士協会契約を推進しようとするものではない。
一つは、県及び市町村の支援と参加協力を得て、県土地協(県土地評価
協議会:自治省通達廃止後、既に消滅している都道府県も多いと聞きま
すが)に固評分科会を設置することである。
 また、士協会は固評業務に関して分科会運営にその機能を特化させる
ものである。同時に分科会の担当地点数等を考えれば、公示調査等より
は分科会数が多くなると予想される。
 また、分科会運営に際しては、公示並みあるいはそれ以上に実質性を
持たせ、形式的存在にはしないことに主眼点がある。
一つは、固評業務委託契約または鑑定評価員委嘱状に付加する特記仕様
書に固評分科会参画義務を明記することにより、鑑定評価員の固評分科
会への参画義務を双方の契約によるものとし、固評分科会の存在基盤並
びに存在意義を明らかで確固たるものにする。
一つは、固評委託業務の結果として得られる固評標準宅地位置図をはじ
めとする多くの資料を一義的には市町村に、更には一般に公開してゆく
ことにより、公益に資するべく努める。
以下は試案(総括)です 
 我が士協会は、先の公取委警告を真摯に受け止めております。ことの
重大さに鑑みれば、固評問題に関する士協会活動はしばらく自粛し、ひ
たすら恭順すべきであるとも思料いたします。
 しかしながら、平15固評業務の開始は目前に迫っており、県をはじめ
県下市町村ご担当各位のご関心も高く、専門職業家集団としての社会的
使命を考えれば、ないがしろにはできないことと存じます。
 私は現下の状況に鑑みて、固評業務に関する私ども士協会の今後のあ
り方を含めて、H15固評スキーム試案を上申致します。貴下の施策ご検
討の一助にでもなれば幸いと存じます。諸事ご多用中のこととは存じま
すが、お目通し願いまして、宜しくお計らい頂きますようお願い申し上
げます。
 さて、固評業務は、その目的の社会性及び作業の時間的制約並びに地
域精通性と多数地点鑑定評価である専門技術性から、不動産鑑定士であ
る個々の専門家の作業というだけでは足りず、専門家間の十分な討議と
専門知識を備えた事務局の設置等、制度的な支援・調整が不可欠である
と認識しています。
 そして、士協会の存在意義並びに社会的職責からすれば、その機能を
前記事項の遂行に特化してその与えられた使命を果たしてゆかねばなら
ないと自覚しております。
 従いまして、士協会は、士協会及び不動産鑑定士に対する県民の信頼
回復に尽力する立場に徹し、来る平15固評については直接契約の当事
者となることを避け、純粋に社団法人として社会的責務を全うする立場
にあるべきと考えます。
【基本姿勢】
1.固評業務受託契約について
 今回の公取委の警告示達を真摯に受け止め、士協会が随意契約の当事
者になることを積極的に望むべきではないと考えます。
 但し、平成6年意向の各年次固評評価替えに際して随意契約を頂いた
市町村については先方からの希望があれば、過年度の経緯に鑑みて随意
契約を拒むものではないと考えます。
2.公益法人としての責務
むしろ平成15年度評価替えに関しては、士協会はその職務の社会性を
自覚し、公益法人たる専門職業家集団の職能をもって評価替え事業に貢
献したいと考えます。
3.平成15年評価替えに向けて
 士協会が士・業同体の社団であることから、誤りや様々な誤解を招く
ことが危惧されますが、早急な組織変更も手続き的に困難なことから、
可能な限り不動産鑑定士会としての潔癖性の保持に努め、平成15年度
評価替えに関しては当該業務を指導される県担当課、あるいは業務を直
接執行される市町村税務担当課への組織的・継続的な助言等を通じて、
県・市町村民の信頼回復に努めたい所存でございます。
【固評業務の特徴について】
1.固評業務とは
 固評評価替え業務は、ご高承の通り全国一斉に評価作業が行われる最
大の鑑定評価業務で、最低限県域内で同時均衡的な地価バランスが保た
れる必要があり、一方でミクロの評価精度についても均質的で公正性を
実現する組織的な対応が必要となります。
2. 受託鑑定士の現状
 一方、不動産鑑定士側には事務所立地条件等から地域精通性において
一律でなく、単独不動産鑑定士事務所が多いことから業務処理と業務完
遂能力に限界とリスクが不可避であります。
3.鑑定士の地域精通性
 従って、地域に精通した複数の不動産鑑定士によって業務を遂行する
ことが前項2の欠点を補うものと考えますが、評価手法の一元化等につ
いて複数人の作業となることで新しい課題も生じることになります。
4.土地協の在り方
 土地協はそのための組織として設置されていると理解しておりますが、
専門分野に関する現実的課題解決の場として機能するように充実させる
余地が多く残っていると考えます。
 従いまして、県指導課と市町村担当者及び受託鑑定士のほかに、県指
導課と市町村担当者側に立つ専門家で構成する専門部会、並びにその内
部機構として固評分科会を設置充実させる必要があると考えます。
 また、士協会においては、この固評分科会の実質的運営に関して尽力
すべきと考えます。
【固評分科会の設置及び留意点】
1.固評分科会の設置
 固評分科会は業務委託者である市町村と業務受託者(委嘱状受理者)で
ある不動産鑑定士との契約にその存在基盤を委ね、土地協主宰者である
県の関与のもとに構成されるものと考えます。
 同じく固評分科会は、県の地域行政単位に対応した設置が適切と考え
ます。土地協の指名する固評分科会幹事または、県の統括、あるいは幹
事市町村が各固評分科会を主催し、受託鑑定士には固評分科会出席と運
営協力義務を鑑定評価委託契約仕様書に明記したいと考えます。
 さらに複数の固評分科会を統括する機構として固評幹事会を設け、土
地協専門部会に代わる権能を持たせたいと考えます。
2.固評分科会の設置根拠及び設置基準
 土地協に固評分科会設置規程を設けます。設置規程案は別添の通りで
あります。同じく、鑑定評価委託契約或いは鑑定評価員委嘱状には、別
添の固評委託業務仕様書の添付を、市町村に是非とも要望したいと考え
ます。
3.固評分科会と固評鑑定評価
 不動産鑑定評価は厳密にいえば委任契約に属する契約であり、不動産
鑑定士はその良心に従い誠実な鑑定評価を行う職業的義務を負うものの、
依頼者の価格バランス等に係る意思を一義的には尊重する義務のないこ
とに留意しなければなりません。
 従って、市町村内で複数鑑定士が評価を行う場合には、地点割にして
単純に個別担当地点の鑑定評価を委託するのでなく、連帯して各担当地
点の価格を判定すると共に相互にバランスの検討を行うことを義務付け
ることとし、バランス上の観点から整合し得ない地点については、当該
固評分科会の協議のもとに、改めてバランスに配慮した鑑定評価を別の
不動産鑑定士に行わせることも考えなければならないと存じます。
 また、業務遂行中に不慮の事故等が発生した場合においても、円滑な
業務引継と完遂を担保する評価作業の進捗・管理並びに評価情報の共有
を行いたいと考えます。
【固評分科会の機能】
1.固評標準宅地の評価替えに際して、標準宅地の点検及び選定替えに
ついて、鑑定評価員の意見取り纏めを行うこと。(点検並びに関する意
見の表明業務)
2.土地価格比準表の共同作成
 市町村ごとの状況類似地区に対応した一元的な土地価格比準表を調整
・作成すること。(土地価格比準表作成業務)
3.取引事例資料の作成
 取引事例資料の収集に努めるとともに、取引事例が極端に少ない経済
環境に留意し、事例の重複採用における整合性を保たせること。(格差
比準論理性)
3.収益価格の検討
 本来的には交換価値ではなく使用価値が課税客体である側面をもつと
考える固定資産税標準宅地評価においては、今後ますます収益価格の重
要性が高まるものと考えられる。
その観点から収益価格について、同一市町村内において統一した価格ア
プローチが行われるように配慮し指導するとともに、収益・賃貸資料の
収集に努めること。(収益価格の重視)
4.地価動向情報の交換と分析
 地価動向に関する情報交換並びに、固評分科会が所掌する市町村の価
格形成要因の分析を十分に行い、適切且つ均衡を得た鑑定評価に努める
こと。
同時に、地価公示標準地価格や地価調査基準地価格との整合性を一層高
めること。(地価情報の共有)
5.固評分科会の開催
 固評分科会等は、成果物の納期までに5回以上開催する。
また、業務委託契約終了後においても次期評価替え期に至るまでは、
標準宅地評価格の時点修正業務その他の関連業務に際して、随時開催さ
れる固評分科会に、鑑定評価員は参加し情報交換に努めること。(固評
分科会の3年間通年開催)
6.業務完遂担保について
 鑑定評価員の不慮の事故に対して作業承継等が円滑に行われるよう、
作業の進捗状況を的確に把握し、収集データの保全に配慮すること。
(評価情報の共有と業務完遂)
7.その他
 直面する課題というよりは、将来に向けた課題でありますが、固定資
産税標準宅地評価を充実してゆくために、同業務の公的・公益的背景を
充実してゆくために、固評分科会並びに士協会は次の事業の充実に努め
るべきと考えます。(固評分科会の充実と発展性)
l 取引事例及び賃貸事例の一層の充実に努める。固評分科会並びに固評
幹事会が主体的かつ通年的に事例収集に努める組織にもってゆきたいと
考えます。
l 固評分科会並びに同幹事会の所管事業として、標準宅地情報の地図情
報化を図ることにより、評価の精度向上に寄与すると同時に、その公開
により公益に資するべく努める。
l 同じく、固評業務を通じて得られるであろう多くの資料を背景として、
土地取引の動態的分析資料、賃料インデックス等を作成・公開すること
により、公益に資するべく努める。
【以上、総論終了】

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