不動産投資INDEX その5

【茫猿遠吠・・不動産投資INDEX-5・・02.08.30】
 不動産投資インデックス事業研修報告に関して、報告漏れ事項や茫猿の提案を
幾つか補足します。
1.事業事業予算について
 北海道会にて聴取した事業予算の概略は以下の通りです。記憶違い等もありま
すし、地域の実情違いもありますから、あくまで参考資料として受け止めてくだ
さい。インデックス作成の標準地数「建築想定ビル数(4棟)や調査対象賃貸ビル
数 (7棟)」によって予算金額は変動しますから、数値はおおよその目安です。
 経費科目       単価   箇所数   金  額
ビル調査基本報酬    60,000   2件    120,000
調査基本報酬       60,000   7棟    420,000
入居テナント調査      7,500   70社   525,000
設計事務所報酬     250,000   4棟   1,000,000
担当委員業務報酬    20,000   9名    180,000
印刷費その他諸費    300,000   1式    300,000
  合  計                     2,545,000
2.事業予算の捻出
 各単位会共に予算編成が厳しい時期にあろうと存じます。
そのような折りに、多額の予算額を必要とする新規事業の創設が困難なことは云
うまでも在りません。しかし、この事業の必要性を認識さえすれば、予算は捻出
できるモノであると考えます。
 例えば、インデックス作成者とその利用者を分離する組織やシステムの創設を
考えても好い頃ではなかろうかと考えます。
 全てを士協会内部で行えればそれにこしたことはありませんが、中間法人制度
などを利用して、事業主体をそれら業益法人に移管して、公益法人からの委託事
業或いは鑑定事務所へのデータ配布収入による運営を考えてもよい時期であろう
と考えます。
3.作成者と利用者
 こういった事業実施に際して、よく発生する問題であり、ときに事業の継続を
困難にする問題として、作成者(実施担当会員・委員)と成果利用者の分離或いは
意志の疎通を欠くということがあります。
いわば、ひたすら汗をかく会員と、ひたすら寝て待ち利用の恩恵にのみあずかる
会員とが分離してゆく傾向です。作成者に妥当な報酬が支払われれば問題はあり
ませんが、得てして仲間内だからと無報酬や低廉報酬に甘んじざるを得ないこと
となります。この問題を解決するためにも、前掲の組織分離も視野に入れたいコ
トです。
4.資料の作成並びに公開のもたらすもの
 北海道会研究資料委員長が巻頭言で申されているとおりであり、インデックス
公開により直ちに業務拡充につながると期待するのはあまりにも早計でしょう。
しかし、地域の実情を正確に反映した「不動産投資インデックス」を持たないD
CF法や直接法収益価格が、如何程の意味を持つと云えば言い過ぎでしょうか。
同時に、日影規制や斜線制限も踏まえた詳細精緻な建築資料や、実態を正確に反
映する賃料事例や空室率等の把握が、鑑定評価全般の精度と信頼性に波及するも
のは限りなく大きいと考えます。
 この件に関して云えば、机上プランによる当初の想定建物設計が、実は冬季に
おいて雪や氷柱が駐車場に駐車中の車上に落下する危険性が考慮されていなかっ
たという、北海道会担当委員氏の述懐は興味あるものでした。岐阜県においても
高山市内で建築想定する場合には、必須考慮事項であるからです。
 尚、この件は地価公示標準地類似画地を前提に、最大実効容積を求めた結果で
生じたことであり、不注意や過誤ということではありません。
5.いわゆる公的評価等と不動産投資インデックス事業
 地価公示・地価調査は云うに及ばず、固定資産税標準宅地評価、相続税標準地
評価、さらには競売評価等は、大なり小なり、単位会全体の協力体制と資料収集
体制に裏打ちされて評価作業が行われているものです。
 そのことに思いを致せば、公示・調査報酬や固評標宅鑑定報酬等から応分の負
担を得て、事業実施費用をまかなうことにそれ程の異論はなかろうと考えます。
ただし、このことは地方圏において云えることであり、既にインデックス情報市
場が成立している或いは成立間近な都市圏では自ずと様相が異なるでしょう。
 公益法人である社団法人鑑定士協会が、公益性の呪縛の中で業益を追うことに
躊躇し、作業報酬の金銭換算というとりあえずは合理的なシステムを導入できな
いとすれば、業益を追い合理的システム導入可能な新しい組織を創設することも
視野に入れてよかろうと考えるのです。
6.その他の事項
 尚、見過ごされている問題でありますが、競売評価において「競売対象である
賃貸物件の競売結果」を基礎とする粗利回り把握という事柄があります。
デフォルト状態に於ける取引利回り資料を把握する上で有効な資料であると認め
られますが、多くの士協会や評価人会では手付かずのままのようです。 (名古屋
地裁評価人会では、数年前からファイル作成が実施されているようです。)
 また、不動産投資インデックス事業は一単位会が行えばよいというものではあ
りません。単位士協会事業でも多くの成果は得られるでしょうが、状況が類似す
る地方圏に位置する多くの単位士協会が協同して実施し、データの交換や相互検
証或いはノウハウの交換を行うことは、さらに大きな実りを得ることとなると考
えます。その意味では、是非とも北海道会と手を携えて事業実施に向かいたいモ
ノですし、全国の単位士協会のご賛同も得たいモノであると願います。
・・・・・・・本稿終わり・・・・・・・

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