新基準-収益還元法(T.I氏投稿)

【茫猿遠吠・・新基準-収益還元法(投稿)・・02.10.21-3】
 読者から頂いた投稿です。特に匿名を希望されてはいませんが、念のために仮
名掲載とします。茫猿がレイアウトの一部変更を行う以外は、原文のままです。
『投稿・・北陸会 T.I氏』
 DCF法と直接還元法についてですが
DCF法は投資分析を目的に発展した分析手法といえます。
これは最終的に内部収益率IRRを求めることといえます。
この手法を逆転して不動産の価格を求める手法にするためIRRを所与としたも
のが鑑定評価への応用だと考えられます。
 IRRをふくめDCFを鑑定評価に活用するには各種利回りを外部から判定し
て前提条件とすることが必要です。
米国では利回り等の基本的な決定は類似投資物件の事例分析によるものでしょう。
 投資という側面で株価インデックスの応用もおこなわれたりして分析手法が発
展するとともに、不動産の証券化によって投資の一元化が進んでいったと思われ
ます。このような背景で米国ではDCF法の精度が高まったといえますが、結果
的には市場の収益物件の、収益と価格との関係のみが求める不動産の価格を担保
しているのだとの思想が貫かれているのではないでしょうか。
 このことは説明責任については別でしょうが、結果として直接還元法と同じで
あるというところに行き着いているようです。米国での収益還元法、もちろん収
益還元法のみならず鑑定評価の概念は極めて現実の市場重視の世界であると思わ
れます。それも投資資型本主義の発達に伴って益々スタンスが短くなった市場の
概念です。
 日本には目先の利益にとらわれてはいけないという商売の鉄則というようなも
のがありましたし、朝三暮四という格言も教えられた記憶があります。
今、不良債権処理の名目で短期フロー市場に適合しない企業等の切り捨てが進め
られていますが日本経済のファンダメンタルを崩壊させることとなるのではない
かと暗澹たる思いです。
 数年前、経済学者という方がIT革命を産業革命になぞらえて世界が変わると
講演されていましたが、一夜にして変わるのでしょうか。よくは知りませんが、
産業革命も長い歴史の中で人間が日々の営みの中で受け止めていったのではない
でしょうか。米国のITバブルが崩壊し、不動産バブルの行方もどうなるのでし
ょうか。果たして、米国のDCF法は土地と人間との関係を受け止めるものとい
えるでしょうか。私には投資分析から一歩も進んでいないと思われます。
 鑑定評価基準の改定によって現実の市場価格を求めよという鑑定評価のあり方
が一層鮮明になりましたが、収益還元法においては経済環境や投資環境とややミ
スマッチ、米国直輸入の弊害がある危険性を感じます。
 かってのあるべき価格あるがままの価格論ではないが、今ある価格といっても
明日を保証しない価格は間違いです。
できれば、明日といわず、もう少し数年先の価格を保証する今の価格を求めるの
が鑑定評価であるといえないかと考えています。
 この価格をもって現実の市場価値を表していないといって非難することが本当
にいいのでしょうか。
 話を収益還元法に戻せば、収益還元法のエッセンスは利回りにあると思います。
DCF法では割引率はどのような考え方でもほとんど変わりないと思います。
内部収益率を変化させるのは自己資本期待収益率と自己資本割合、並びに最終還
元利回りです。一つの考え方に、投資主体の条件がどのように変わろうとも、最
終的に市場で成立する価格は一つである。
 よって上記の利率等を積み上げるのは間違いである。これについては、私は価
格が先にありきといっているようで疑問です。
 ここらで私の意見の結論に飛ばせてもらいますが、収益還元法は鑑定評価の主
体の意見であり判断であっていいのではないかということです。
 利回りでいえば、今の投資環境、日本のみならず米国でも、最終還元利回りの
判断は大きく揺らいでいると思います。
 無限に投資が繰り返されるとしても、投資環境が変化すれば今の条件を復帰価
格に求めるのは困難でしょう。このことが最終還元利回りに反映されるべきでは
ないでしょうか。自己資本収益率と借り入れ割合の関係はある程度数値化できる
のではないでしょうか。
 直接還元法とDCF法を併記した鑑定評価基準のあり方については米国流だと
思いますが、更に内容の検討を要すると思います。
以上、私の意見をお送りしました。内容は詳細な検討もしないで誤りもあると思
いますが、鑑定評価の行く末に危うさを感じている気持ちだけをお伝えしたいと
思っております。(以上、投稿です)

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