競売評価所感 (投稿)

【茫猿遠吠・・競売評価所感(投稿)・・03.03.16】
 森島さん、ご無沙汰しております。
競売については、自分がこの業界にはいったときに
宅建業を営む叔父から、よく文句を言われていました。
「金になる不動産は最低売却価格なんか関係なく落札される。
どんな不動産でもうまくやれば金になるのだが、最低売却価格が
邪魔して落札できないのだ」と。
 つまり、どんなにひどい不動産でも0円に近い価格であれば、
やりようがあるのに、最低売却価格がその0円に近い価格になって
いないから、落札できないのだそうです。
単に高すぎるということを言いたかったようですが、
無視できないなと思っていました。
 森島さんのほうがよりお詳しいと思いますので、
いわゆる釈迦に説法で恐縮ですが、
競売ブローカーが数多く占める入札者にしてみれば、
落札時の最低売却価格はあまり意味を持たないものであり、
最低売却価格により落札ができなかったときは邪魔なものでしかないのです。
不良債権をはやく処理したい債権者であれば、
両者にとって不幸な結果となります。
 おそらく、競売市場の担い手であろう競売ブローカーの方々や
不良債権の処理を早く進めたい債権者は
みんな同じような感覚をお持ちだろうと思っています。
 もうひとつ気になるのが、最低売却価格制度は、
競売申立から落札まで、時間がかかる要因の一つであろうという点です。
評価命令から評価書の納品までご担当する先生にもよると思いますが、
3カ月や4カ月平気でかかったりしています。
実際の評価、製本等の作業自体は1週間程度で可能だと思いますが
遅れて納品するのが恒常化してたりします。
 結局、森島さんのおっしゃるとおり、
世の中の流れを止めることはできない、
すなわち、廃止の方向に向かうことを覚悟しなければならないと思っています。
 競売だけでなく、今ある、不動産鑑定士が行っている公的評価は、
すべてについてその安定的継続を求めることはできないと思います。
地価公示、地価調査、相続税路線価評価、固定資産税評価といったものは
いずれ廃止のお声がかかるような気がします。
もっとも、地価公示はなくなったほうが、鑑定士の仕事が
逆に増えるような気もしますが。
上記のような公的評価については、不動産鑑定士の存在意義は
薄れていると思います。
 存在意義について考えたとき、たとえば、
どこかで聞いたようなフレーズですが、
不動産を有用に扱える不動産鑑定士こそが、
社会で存在感を増しているように思います。
 これは不動産鑑定士ではなくてもよい仕事がほとんどなのですが、
適切に評価できてその不動産のポテンシャルを発揮するための仕事が
できる不動産鑑定士という人が重用されるように思います。
見方によっては、不動産鑑定士だからというよりも、そういう仕事ができる
人間ということですので、不動産鑑定士の存在意義という意味ではないかも
しれません。
 もう不動産鑑定士だからという時代は終わって、
不動産鑑定士である私は何ができるかということで、
自己の存在意義を個人個人が見つけていく時代だと私は考えています。
もちろん、言うのは簡単ですが、行うのはかなり難しいと認識しています。
もっとも、私はこういう厳しい時代に不動産鑑定士になった新米鑑定士ですが
こういう状況を別に悲観してるわけではありませんのであしからず。
以上
『鄙の堂守の所感』
 いやいや、手厳しいが、頼もしい。投稿者T.K氏のおかれた環境を推察すれ
ば、恵まれた高みから眺めた一刀両断という気がしないでもない。
 でも、雑踏のなかで現実に翻弄されていては、見えてこないものを見据えて
おられるようにも感じます。少なくとも今の鑑定業界が置かれる状況を悲観し
ていないのが佳いことだし、自己の存在意義を求めようとする若さは好ましい
しウラヤマシイ。

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