ADRと不動産鑑定士

【茫猿遠吠・・ADRと不動産鑑定士・・04.06.11】
 ADR問題に関して、不動産の鑑定評価に関する法律を抜本改正して不動産鑑定士法を制定すべきと云う、ミニキャンペーンを『鄙からの発信』サイト上で行っています。 この件に関して誤解が生じているといけないので、茫猿が知る範囲及び理解できる範囲で、背景説明を致します。


1、ADR機関の設立
 ADR機関については、士会でなければならないと云うことはありません。
現在の不動産鑑定法のもとで、鑑定協会がADR機関を設けることは可能であろうと、茫猿は考えます。 例えば、鑑定協会のなかに、カウンセラー会が存在するように「不動産調停センター」とか「不動産紛争処理機構」などという組織を設立することは十分に可能です。
 ADR基本法がどのような組織態様を要請するかは、未だ定かではありませんが、問題は鑑定協会や不動産鑑定士が設立したADR機関が、法のもとで主務大臣等の認証が受けられるか、否かにあります。 なお、認証機関であるかのような誤解を招く類似名称の使用は禁止されるであろうと、予測されます。
 なお、この件に関して、先般制定公布された総合法律支援法は、その第一条において「裁判その他の法による紛争の解決のための制度の利用をより容易にするとともに弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者 云々」と規定しますことからも理解できるように、裁判外紛争処理も視野に入れているものでしょう。だから、同法第三条の規定は重きを為すと考えます。
2、なぜ認証機関であらねばならないか
 鑑定協会等が設立するADR機関が認証機関でなくとも、一向に構わないわけですが、紛争解決の手段としての社会的認知度・重要度が低くなることは否めないでしょう。それは、認証機関でなければADR検討会資料等から推察するに、以下に示す各事項について認められないであろうと予想されるからです。
(1)認証機関であることを示す表示権限
(2)弁護士法第72条の適用除外
(3)訴訟手続きとの連携(時効中断、訴訟手続きの中止、調停前置の特例)
(4)和解の執行力(検討継続中)
3、認証機関の重さ
 前項が認められると云うことは、逆に認証機関であることの負担は相当に重いものといえます。
ですから認証審査事項として、
 a.役員構成及び手続き実施者候補者、
 b.紛争解決業務を提供する施設等、
 c.紛争解決業務の方法及び計画、
 d.収支計画又は財産的基礎等が、挙げられているのです。
 これらに応えてゆくことは、相当の負担であろうと予想されます。
しかし、この問題に真正面から対応することが、不動産鑑定士にとって、社会において名誉ある地位を獲得できることとなるのではないでしょうか。
4、未だ流動的である
 H16.5.31開催の第33回ADR検討会議事録を読んでみても、未だ討議が収斂する方向に至ってない事項が多いように見受けられ、流動的である。
であるからこそ、鑑定協会並びに不動産鑑定士は、意志を統一し、自らの対応姿勢を固めてゆくことが必要なのだと考えますが、如何なものでしょうか。
 即ち、鑑定法を士法へと改正するか、士法の制定を求め、「必ずしも法に拘束されず、紛争の実情に即し、条理にかなった解決を目指すADR機関」として、前掲の「不動産紛争処理機構」等の設立を目指すのが、不動産鑑定士の責務であろうと考えるのですが、如何なものでしょうか。
(注)1.H16.5.31開催の第33回ADR検討会議事録
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/adr/dai33/33gaiyou.html
(注)2.文中の隣接法律専門職者について
総合法律支援法第三条(公布:平成16年6月2日 法律第74号)
 隣接法律専門職者団体(隣接法律専門職者が法律により設立を義務付けられ
ている法人及びその法人が法律により設立を義務付けられている法人をいう。)
 http://www.ron.gr.jp/law/law/sogohori.htm#1-sousoku
(注)3.司法制度改革推進本部 ADR検討会 資料20-1検討状況整理案
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/adr/dai20/20siryou1.pdf
 ADR検討会全議事録並びに資料等
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/03adr.html
(注)4.総合法律支援法(目的)第一条
 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、法による紛争の解決が一層重要になることにかんがみ、裁判その他の法による紛争の解決のための制度の利用をより容易にするとともに弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の隣接法律専門職者(弁護士及び弁護士法人以外の者であって、法律により他人の法律事務を取り扱うことを業とすることができる者をいう。以下同じ。)のサービスをより身近に受けられるようにするための総合的な支援(以下「総合法律支援」という。)の実施及び体制の整備に関し、その基本理念、国等の責務その他の基本となる事項を定めるとともに、その中核となる日本司法支援センターの組織及び運営について定め、もってより自由かつ公正な社会の形成に資することを目的とする。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
ADR検討会・資料21-3
 日本証券業協会証券あっせん・相談センター提出資料が一つの示唆を与えてくれます。
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/adr/dai21/21siryou3.pdf
(社)日本建築士会連合会と(社)日本建築士事務所協会連合会の組織構成並びに対応も参考になるでしょう。ただし、この両者ともに、茫猿の知る限りに
おいては、ADR検討会で意見表明は行っていないようです。
(財)住宅紛争処理支援センター、並びに指定住宅紛争処理機関
 http://www.chord.or.jp/

関連の記事


カテゴリー: 不動産鑑定 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください