省みて、ことの本質

【茫猿遠吠・・省みて、ことの本質・・04.06.14】
『鄙からの発信』サイト上でのミニキャンペーンは、ADR問題に傾いているように見えます。しかし、投稿者H.K氏が申されているように、ADRは端緒です。ADR対応だけが目的ではありません。 キャンペーンの主旨は、ADRを端緒とし動機付けとして、鑑定法を業法から士法へと、改正を目指そうとするものです。


 ADRはボランテイア的な要素が大きいと予想され、不動産鑑定士の収益向上に寄与する割合は低いでしょう。いいえ、時間的・経済的負担の方が多いのかもしれません。将来的には代理権付与等から派生するであろう、多方面への展開が予想されますが、今ではまだ茫漠としていて、確実なものは何もありません。不動産に関するADRが社会に定着するには相当の時間を要することでしょう。
 しかし、ADRに正面から取り組む不動産鑑定士の姿勢は、社会の共感を呼ぶことでしょう。不動産に関する裁判外紛争処理に不動産鑑定士が一丸となって取り組むことは、不動産鑑定士の能力的・倫理的資質向上に大きく役立つものとなるでしょうし、法曹界はじめ他の隣接法律専門職者及びその団体も含めて、社会の信頼を高める基となるでしょう。
 ADR基本法の制定後であっても、ADR機関の設立、或いは認証は十分に可能であろうと予測します。今、ADR機関の設立に短絡するよりも、将来を見据えて鑑定協会が本来の資格者団体に生まれ変わることを優先すべきと考え
ます。その結果としてのADR対応であろうと考えます。
 四十代五十代の働き盛りの不動産鑑定士にとって、変化に伴うリスクはできれば避けたいと考えるのは当然のことです。不動産鑑定士が商業法人に所属していようと、公益法人に所属していようと、個人事業主であろうと、法改正は
自らが所属する組織の変更・改編・ときに解体を伴うものであり、そこには何
らかのリスクが見込まれるものでしょう。
 ことの本質は、そういった多くの障壁やリスクを乗り越えて、将来の不動産鑑定士制度の在り方を揺るぎないものにするか、しないかであろうと考えます。不動産鑑定士とて霞を食って生きているわけでなく、日々の糧は必要であり、扶養する家族もあるわけで、今得ている安定した収入や地位を変化の過程で不安定なものにしたくないのは当然のことです。
 それでもなお、不動産鑑定士が不動産鑑定士として存在するために、今を得難い機会として、何を為さねばならないか、何を為すべきかを、一人々々が真剣に考えることが一番大事なことだと考えます。 鑑定法の士法への改正は、短期的にはマイナスに働きかねない法人事務所も少なくないであろうと予想します。でも、長期的には大半の不動産鑑定士にとって歓迎すべき変化だと茫猿は考えます。
 また今こそは、『不動産鑑定士法』を希求する我々の姿勢が、社会一般、なかんずく永田町や霞ヶ関に理解されやすい時であろうと考えます。逆にこの好機を逸すれば、あの折りに君達不動産鑑定士は『士会』を望まなかったではないかと問い返されるハメに陥るのではないでしょうか。
 茫猿は今、省みて落ち度の有りや無しやと思います。
 このキャンペーンでは、一方的に他者を責めることはしてこなかったつもりです。過去の経緯に流される怠惰な姿勢、情緒的な見通し、不用意な他隣接法律専門職者団体批判等々、問題が多すぎる事業報告案でありますが、既に
04.04.20発行のHIROBA・41頁に掲載済みの原稿です。
 その折りに、問題点を見過ごしたのは鑑定協会理事役員だけでなく、茫猿を含めて全ての会員なのです。読んで見過ごしたのでなく、読みもしなかったことが、会員全員に問われているのです。ADR問題とて、昨日今日の話題でなく、研修などを考えれば、少なくとも一年以上前からの話題であった訳です。
 この間に、茫猿のスピリットは怠惰・事勿れであり、センサーは錆び付いていた訳であり、センスは無様には眠っていた訳です。そういった茫猿を含めた会員一般の緊張感のなさが、理事会や委員会にも反映しただけのこと、今はそう省みています。責められるべきは他者でなく自身である、そう思い至っております。
 もう還暦を過ぎたのだから、俗事などどうでもよい、次世代が好きにやってくれと、無関心に過ぎたことを省みています。三十年以上鑑定業界に籍を置き鑑定評価で日々のたずき(生計)を立てていた訳であり、老境に差し掛かった今は後世の為に(明日の不動産鑑定士のために)、できる何かを為してゆくことが努めなのでなかろうか。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
※総合法律支援法については、その意図するところを、よくよく吟味する必要がある。日本司法支援センター(政府出資法人)の役割も、その意味するところには深いものがあるようです。
『総合法律支援法案について概要』
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/houan/040302/sougou/gaiyou.pdf
『総合法律支援法』
 http://www.ron.gr.jp/law/law/sogohori.htm
『総合法律支援法案に反対する』
 http://www.jlaf.jp/seimei/2004/sei_20040427.html
法第三条 情報提供の充実強化(隣接法律専門職者団体も含まれる)
法第四条 民事法律扶助事業の整備発展
法第五条 国選弁護人の選任態勢の確保(弁護士会から支援センターへ)
法第六条 被害者等の援助等に係る態勢の充実
法第七条 連携の確保強化
法第十条 日本弁護士連合会等の責務(等には隣接法律専門職者団体が含まれる)
※ADRについては、
 司法制度改革推進本部・ADR検討会の議事録及び配付資料を読むのが 一番である。
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/03adr.html
※他に、日本弁護士連合会などが主催する「ADR JAPAN」というサイトがある。このサイトのコラムADRなどは、理解を深めるのに役立つものである。
 http://www.adr.gr.jp/index.html

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