鑑定協会のパラダイム転換

【茫猿遠吠・・鑑定協会のパラダイム転換・・04.06.20】
「鑑定協会のパラダイム転換」という言葉にご記憶がありますか、当時は「鑑定協会のパラダイム(思考の枠組)を転換しよう。」でした。1999.04に、茫猿が全国の会員に配布した冊子の惹句がこれでした。 この十日間ほどのあいだ、何やかやと書き散らしてきましたが、ぼちぼち取りまとめに入らなければいけない時期です。


 取りまとめに際しては、改めて「鑑定協会のパラダイム転換」というテーマ
で考えてみたいと思うのです。では、何をどう変えてゆくのかと同時に、取り
まとめる改革は、次の要件を満たすものでなければならないと考えるのです。
1.具体的な日程を持つ、実行可能な改革であること。
2.社会の支援を受けやすい改革であること。
3.不動産鑑定士への、社会の信頼度をさらに高める改革であること。
4.何よりも「規制緩和推進3か年計画」を基礎とする改革であること。
 同計画は、行政改革推進本部・規制改革委員会発議、H12.12.12閣議決定
 茫猿は実行可能性と優先順位を検討して、三段階の「鑑定協会パラダイム転換計画」を提案します。
『第一段階(目標年次2006度末)』
 現在の鑑定協会は士・業混在の組織であるが、これを不動産鑑定士等から構成される組織に改編する。その為には、不動産の鑑定評価に関する法律施行規則第36条の改正を国交省に提起する。現行施行規則36条第二項には不動産鑑定業者とあるが、この字句を削除することを求める。次に、規則改正を受けて、協会の正会員を不動産鑑定士等に限るように定款を改正する。
 鑑定法第52条には団体の目的は示されているが、構成員についてはふれていない。構成員についてふれているのは規則であるから、規則を改正すればよいのである。 現実の問題としては、規則改正よりも協会や各単位会の定款改正の方が難しかろうが、自らの定款改正もできない組織が、外に向かってもの申すことなどとてもできる訳はないのだから、この程度のことが、できなくては困るのである。なお、この際に参入障壁と受け取られかねない、高額の入会金や会費は妥当な金額に改められなければならない。
※現行・不動産の鑑定評価に関する法律
(不動産鑑定士等の団体)
第五十二条  不動産鑑定士及び不動産鑑定士補の品位の保持及び資質の向上を図り、あわせて不動産の鑑定評価に関する業務の進歩改善を図ることを目的とする社団又は財団で、国土交通省令で定めるものは、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣又は都道府県知事に対して、国土交通省令で定める事項を届け出なければならない。
※現行・不動産の鑑定評価に関する法律施行規則
(不動産鑑定士等の団体)
第三十六条  法第五十二条 の規定による国土交通省令で定める社団又は財団は、同条 に規定する事項を目的とする事業を行なう社団又は財団で、次の各号に掲げる条件に該当するものとする。
一  事業が一の都道府県の区域の全域に及ぶもの及びこの区域の全域をこえるもの
二  社団である場合には、当該社団の構成員である不動産鑑定士及び不動産鑑定士補並びに不動産鑑定業者の合計数が、当該社団の構成員の二分の一以上を占めているもの
『第二段階(目標年次2007度末)』
 次は、現行鑑定法に鑑定法人の設立に関する条文を加えることを提起する。これは、前述の平成12年12月12日閣議決定された「規制緩和推進3か年計画」に記載されている事項を具体化しようとするものであり、行政府並びに立法府の理解は得易いものと考える。
 規制緩和三カ年計画15-3「業務独占等を中心とする資格制度の見直し」
2.見直しの基準・視点(17)には、次のように明記されているが、この条項の
早期実施を図ろうとするものである。
「資格者に対する利用者の複雑多様かつ高度なニーズに応えるとともに、資格者による継続的かつ安定的な業務提供や賠償責任能力の強化などの視点から、必要に応じて資格者の法人制度の創設を検討する。」(鑑定法人創設)
『第三段階(目標年次2010度末)』
 鑑定法人制度創設後十年程度経過した後においては、更新登録も含めて鑑定業登録は不動産鑑定士または鑑定法人に限るものとする。
 茫猿は一連の記事のなかで再三にわたって述べてきたが、現行の制度は40年の歴史を有し、それなりに安定して推移してきたものである。今直ちに急激な変革を求めようとすれば、当然のことながら変革のリスクも大きいだろうし、
その障壁もまた大きいものがあろうと考えられる。 だから、性急な改革は求めない。
1.まず、鑑定協会を都道府県単位士会も含めて、不動産鑑定士等から構成される組織に変更する。当然、現行社団法人のままである。(第一段階)
 なお、この段階において、業者団体の創設も検討されようが、そのことに関
してはご随意にと考える。監督の便宜上必要と行政庁が考えるのであれば、それはそれでやむを得ないであろうが、この件は別途検討すればよいことであろうし、第三段階に至るまでの経過措置を考えれば済むことであろう。
(準会員制度や業者部会制度も検討できるであろう。)
2.鑑定法人制度の創設を提起する。この段階においては、鑑定業者は個人事務所、商業法人事務所、財団法人事務所、鑑定法人事務所の大別して四形態が併存する状況にある。(第二段階)
 これは、このまま推移しても構わないが、かなうことなら、鑑定法人制度創設後十年程度経過した後においては、更新登録も含めて鑑定業登録は不動産鑑定士または鑑定法人に限るものとなることを希望する。これが第三段階である。具体的には、鑑定業登録は不動産鑑定士または鑑定法人に限られるが、経過措置として十年間程度は商業法人等の業登録も認めることとするのである。
 十年後に、何処に落ち着くか、十年待たずして商業法人等鑑定業者が消滅するか、それは判らない。時代の趨勢が自ずと決めてゆくことであろう。
『補足事項』
 士法による士会、特に強制入会制を伴う士会は求めない。
なぜ求めないかについては、前述の「規制改革についての見解 15 公的資格制度」を一読して頂ければ、御理解願えると思いますが、この見解中の一文を転載しておきます。
同見解・各論15-1(強制入会制の実態及び特色)
 当委員会は、資格試験によって認定された能力と個人の意思とにかかわらず資格者団体に入会しなければ資格者としての業務を行い得ないという点で、強制入会制は一種のギルドであり、法定されたボイコットに他ならないと考える。
 なお、今回の鑑定法改正による試験制度の大幅改正は、これらH12.12.12閣議決定の「規制緩和推進3か年計画」を受けてのものであることは、既に各位ご承知の通りである。一読頂ければお判りになるであろうが、資格者や資格者
団体の認識と世間の認識は相当に乖離しているのである。
 それとても、行政改革推進本部・規制改革委員会の認識に過ぎないと嘯くこ
ともできようが、しかし、そのような旧態依然たる認識に浸っているとすれば、
いつの日か我々は時代の変化のなかに埋没し、『本来の目的を離れ、当該資格者の既得権益を擁護し独占的利益を維持するために新規参入者を排除したり、資格者間の競争を制限するなど排他的に機能し、かえって国民の利益を損なうものである』と、否定されかねない危険も認識しておくべきであろう。
 茫猿は、鑑定協会のパラダイム転換に際しては、「規制緩和推進3か年計画」に即して進めてゆけば、各界の理解を得やすかろうと考えるのである。
同時に、以上が実現するか、実現までの日程が明らかになれば、今話題のADRに関する課題の多くはクリアできるとも考える。
 即ち、一連の改革行程に従って改革を行おうとするものである以上、司法制
度改革推進本部もこれを無視することはできないであろう。
 総合法律支援法第三条の規定に関しても、我々は、隣接法律専門職者のみで構成される団体として、法の規定に該当するとの確認を求めるか、法の援用もしくは改正を求めてゆけば、こと足りるのである。
※行政改革推進本部・規制改革委員会
 http://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku-suishin/index.html
※規制改革についての見解・平成12年12月12日
 http://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku-suishin/12nen/1215kenkai/
※15 公的資格制度
 http://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku-suishin/12nen/1215kenkai/kakuron15.html
※参考3:規制緩和推進3か年計画(再改定)(「横断資格制度」関係抜粋)
 http://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku-suishin/12nen/1215kenkai/pdfs/15-3.pdf

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