ガイドラインと泥縄

【茫猿遠吠・・ガイドラインと泥縄・・04.09.07】
 連日に亘って、耳慣れず生硬い話ばかりで恐縮です。
ですが、読者にとっては選択権を行使して、読みたくない記事は無視すればよいのですから、茫ケ猿の一念でもう一押し申してみようと思います。
 今回の一連する物語のポイントについて、茫猿は以下のように考えます。
そして、予想される最悪(鑑定業界の将来にとって)のシナリオを考えてみたいと思います。最悪のシナリオでは、鑑定士が土地情報を駆使して社会還元する余地は殆どありません。
 土地情報事業に協力関与するなかで、鑑定士は社会還元事業を増やしてゆき、自らのレーゾンデートル(存在意義)を高めてゆかねばならないと考えます。
その意味で、一連の物語を目出度く完結するために、多少は泥縄的といえども進めなければならない対策を提案するものです。
 語呂合わせになりますが、ガイドラインを充足するオンラインシステムの早急な構築であり、事例収集新スキームを更に充実するためにスキルを向上させて、新事例フレームを提案すべきと考えます。
一、日本鑑定協会の拠ラシムベシ、知ラシムベカラズ体質
 そのような意向が無かったとしても、情報開示に消極的であること、或いは保有する情報の開示優先順位を付けないことが根底にある。
 03/05/30に制定の個人情報保護法は05/04/01施行です。
 法の施行を目前にしながら、何ら対応策を打ち出せない協会役員の認識の甘さが、とても残念です。
 勿論のこと茫猿とても、全容を把握できたのは9月に入ってからです。
 ですが、茫猿は協会役員でも地価公示幹事でもありません。
 士協会役員でもありません。(士協会役員には、一部情報が流れています。)
 茫猿は鑑定協会の情報流通の末端に位置している一会員です。
 それでも、世の中には見捨てる神ばかりではなく、茫猿を拾う神もございまして、04/07/13 開催の資料委員会配布資料(8/3開催地調委員会配付資料もほぼ同様と推定される。)をご提供頂きましたので、サイトに掲載しました。
以下のURLよりご覧下さい。
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=1094403971
 保護法制定後の一年間を無為に過ごした鑑定協会理事者並びに士協会理事者をイタズラニ責める意図はございません。ただ、地価公示事例、異動通知書データは個人情報に該当するのかしないのか、鑑定協会や単位士協会は個人情報取扱事業者に位置づけられるのか否か位は考えておいてもよかったのではと、残念に思います。
二、土地情報(一次)と取引価格情報(二次)の混同及び事業所管主体
 今回の新スキーム案に限らず、一次情報である土地取引情報は、紛れもなく個人情報であると考えます。取引価格情報は取引当事者情報を含まなければ、個人情報ではないかもしれません。しかし、「機微情報(センシティブ情報)」になる可能性は高いと考えます。
 住宅地図情報と取引価格情報をマッチングさせる場合の他にも、取引物件地番が判明していれば、取引当事者を確定するのは、コストを別にすればさほどに困難なことではありません。(その結果、何が起きるかは想像して下さい。)
 地価公示事業と土地情報事業は事業主管課が異なるものです。
両事業は共に国交省土地・水資源局が所管しますが、主管課は片や地価調査課・地価公示室であり、後者は土地情報課が所管します。相似点や類似点は多いものの、事業目的も事業経緯も異なっています。
 また、土地情報事業は法務省から一次データである土地取引情報(異動情報)を得ることからスタートし、取引価格調査を行いその結果を国民に提供する事業です。この点を鑑定協会は的確に認識すべきです。
三、土地取引情報(価格のない取引情報)と取引価格情報の差違
 特に、一次情報である土地取引情報の利用価値について、鑑定協会が的確に認識しているとは思えません。 このことは、一次土地情報無しで公示評価を行う危険性を考えれば、理解できることです。
 公示標準地隣接地等、向こう三軒両隣の異動を把握せずして、
 たとえ、価格は不明であっても、異動成立自体を承知せずに、
鑑定評価を行う怖さについて、考えが及ばないとすれば、黙するのみです。
四、鑑定業界の状況、一般企業の状況
 多くの単位会や分科会において、前述の個人情報をどのように扱ってきたかを考えて見るときに、その取扱状況の継続を前提に新スキーム実施を考えてみたい。前提とは異動通知情報や取引価格情報をFD、CD-R、E-Maill添付ファイルで取り扱い、管理している状況を指すが、実際状況は承知していない。
 今や、FDやCD-Rでの情報取り扱いは否定される方向にある。
通販会社やツーリストなど個人情報を扱う企業においては、FDDやCD-RDが容易に利用できる端末パソコンは既に否定されている。
同時に個人情報にアクセスできる端末が設置される部屋へは、特定の人間が最低限IDとパスワードを提示しなければ入室できないようになりつつある。
五、予想されるシナリオ 『茫猿が最悪と考えるシナリオ』
 前項を前提条件として考えるとき、茫猿が最も安全を重視する事業遂行担当者であれば、描くシナリオは次のようになる。
a.国交省は法務省から一次異動通知データを入手する。(土地所有権売買移動)
b.(財)土地情報センターにて、取引価格アンケート。(地価公示利用明示)
c.回収取引価格データを鑑定協会に提供する。(厳重な守秘義務契約)
d.全国の公示分科会所掌範囲にデータを分割貸与する。(配布方法は安全優先)
e.分科会幹事は事例作成評価員に作成範囲内データを貸与する。
f.評価員は定められた期限内に事例カードを作成し、幹事に納付する。
d.以下、幹事から鑑定協会、そして国交省へ事例カードデータが戻る。
 このデータの貸与、納付に携わる者には厳重な安全対策、守秘義務、管理責任等が課せられるものであり、事故等に際しては法56条以下の罰則が適用される。
 分科会における取引事例カードの取り扱いに関して推測すれば、
 作成された取引事例カードは、評価を担当する公示標準地毎に利用が許されるが、隣接分科会或いは隣接士協会等の閲覧はガイドラインに応じたマスキングが為される可能性が否定できないであろう。
 二次データの複写保存も否定されるであろうし、マスキング以前の事例カードの分科会間統合も、安全性の観点からは否定される可能性がある。
其処まではと考えたいのですが、鑑定業界以外の情報産業関連の友人知人に話を聞けば聞くほど、あり得ないことではなかろうと考えます。
 また事業者(鑑定協会等)が取り扱う情報は、事業者が収集した民間情報ではなく、行政府が収集した行政情報であるという点を考えるとき、通販関連個人情報と同一視できないと考えます。
 同時に鑑定事務所と営利企業(市場調査会社や建築会社、新築等関連物販会社等々)が混在する鑑定業界の現況も、安全管理対策上は多くの問題点を残しています。
六、起こり得る問題への対策
 いずれにしても、新スキーム案で、将来はオンラインによる取引事例カードデータの納付が予定されていることからすれば、今直ちにオンラインシステムの構築を開始すべきであろう。
 しかし、システムを構築したとしても、今後起こり得る問題は、
(a)万が一ですが情報漏洩です。CD等で域外へ意図的流出。
(b)調査票、事例カード等を不用意にゴミとして道路に出す等、不備な管理。
(c)本人からの利用停止申立、主務大臣の勧告等への対応。
 今、一番心配なのは、(c)のケースです。
どのような漏洩防止対策をとっているのかと、本人から問われたときに今の状況では、答えようがありません。
特に、協会会員事務所での漏洩防止策はお寒い状況です。
各会員が利用するパソコンの第三者アクセス防止策、パスワード設定対策、従業員の訓練・教育、誓約書提出等対策、アクセス許可事務所監査対策等が未整備な状態で、外部から異議が申し立てられたら、対応できません。
 安全対策のポイントは漏洩事故を起こさないことにありますが、
情報提供者本人から苦情申立が出た場合に、適切な対応ができない状況を放置することは許されません。(未対応で事故を起こせば管理者の未必の故意が問われる可能性があります。)
※首相官邸・個人情報保護法
 http://www.kantei.go.jp/jp/it/privacy/houseika/hourituan/
※個人情報保護と安全対策  http://www.prisec.org/
 プライバシーマーク認定  http://privacymark.jp/
 NTTの対策ガイド http://www.ntt.com/vcn/security/gaiyo3.html
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
(個人情報取扱事業者から除外される者)
第二条  法第二条第三項第四号 の政令で定める者は
 その事業の用に供する個人情報データベース等を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数(当該個人情報データベース等の全部又は一部が他人の作成に係る個人情報データベース等で個人情報として氏名又は住所若しくは居所(地図上又は電子計算機の映像面上において住所又は居所の所在の場所を示す表示を含む。)若しくは電話番号のみが含まれる場合であって、これを編集し、又は加工することなくその事業の用に供するときは、当該個人情報データベース等の全部又は一部を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数を除く。)の合計が過去六月以内のいずれの日においても五千を超えない者とする。
・・・・・・いつもの蛇足です(2)・・・・・・
 国税庁が発表した土壌汚染地評価の基本的な考え方(04.07.05)
 http://www.nta.go.jp/category/tutatu/sonota/hyouka/2680/02.htm
・・・・・・痛ましい事件です・・・・・・
 ロシア南部の北オセチアで起きた、学校占拠事件並びに軍隊の突入に伴い多数の子供達が死傷した事件は、言葉を失う悲惨な出来事だ。
 テロの撲滅は云うまでもないが、スローガンでテロが無くなる訳もなく、軍事警察力で押さえ込めば別のテロを生み出すだけなのは、パレスチナでもイラクでも同じことである。
 パレスチナもイラクも千年の昔からつい五十年前までの地政学的に或いは歴史的に錯綜重複する多くの問題が解けない状況にあることが一番の原因であろう。
南ロシアも、旧帝政ロシア以来の南下政策の結果として積み重なった多くの、地政学的に或いは歴史的に錯綜重複する問題が、ソ連解体後の現在に至って吹き出したものであろう。
 ロシア南部はかつてソ連の柔らかい豊かな腹と云われたことがある。その柔らかい腹を守るために、ソ連はアフガンに出兵したし、中近東へのプレゼンスを高めることはあっても退くことはなかったのである。

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