岩隈と江川 (野球残照)

【只管打座・・岩隈と江川・・04.12.18】
 プロ野球前近鉄バッファローズの岩隈投手の帰趨でもめている。
オリックス・バッファローズは岩隈投手の保有を主張し、
岩隈本人は楽天イーグルスへの移籍を希望して対立している。
 プロ野球規約からすれば、選手の保有権は球団にあり、近鉄とオリックスが合併した以上は、合併後存続球団のオリックスがプロテクト(保有宣言)した選手はオリックスに保有権がありる。
だから、岩隈投手もオリックスと次期契約を結ぶのが当然であり、
それを拒否するのはただの我が侭だといえる。
 しかし、ことはそう単純ではない。
プロ野球ストライキ騒ぎの今秋、9/23の労使交渉(選手会とプロ野球機構との交渉)の席上、プロ野球機構並びにオリックスは「プロテクトに際しては、選手の意志を尊重する。」と申し合わせている。
 そして、その申し合わせに従って、
何人かの旧近鉄選手について選手本人の意志を尊重して楽天に移籍させている。
 では、なぜ岩隈投手について本人の意志を尊重しなかったかといえば、それは岩隈投手が近鉄のエースであり、オリックスでもエースたり得るからである。オリックスのエースどころかパシフィックのエースの一人といえる存在だからである。多分、旧近鉄選手のなかで一番残したかった選手なのであろう。
 高額年俸で大リーグ志望しかも年齢的にトウのたち始めた中村紀洋よりも、選手会長として煙たい磯部よりも、若くて将来性豊かな岩隈に一番の魅力を感じるのは当然のことであろうと考える。
 ここまでは、オリックスの申し合わせ破りである。このことも問題なのであるが、さらに問題を複雑にしたのが、パシフィック小池会長の問題提案である。
 パ・リーグの小池唯夫会長は12/14のパリーグ理事会で、岩隈久志投手の問題について、来季1年はオリックスでプレーし、1年後にあらためて球団と岩隈で移籍問題を話し合う案を「強い要望」という形で提示したのである。
 思い出すではないか、もう二十年も前に、江川選手のジャイアンツ入団契約紛争の時の解決方法を。
 空白の一日を利用した「読売巨人軍」に対して当時のセリーグ会長だったかコミッショナーだったかが、(1)ドラフト通り阪神タイガースと契約、(2)続いて、阪神と巨人でトレードを行う、という解決案を示して実行された。
 原則や規則を無視し、現状を曖昧に糊塗する拙劣な弥縫策を弄したものである。思えば読売巨人の長期凋落はこの時より始まったと云える。
そして、この夏の読売渡辺会長の「たかが選手」発言である。
 「来年一年間は取り敢えずこのチームでプレーし、一年後は考えましょう。」などという提案は、チームプレー競技者にとって何の解決にもならない。
ならないどころか、一年間をどんな思いでプレーしろというのか。
「たかが選手」発言と、同じ水脈につながる発言である。
プロ野球の経営者や管理者の意識は、とてもお粗末といえよう。
 小池パリーグ会長の発言は野球という競技を知らず、ルールを守らねば成り立たないスポーツ競技に関わる者として、最低限のルールもマナーもわきまえない愚かな発言である。
 だいたいが、チームの合併という愚策をゴリ押すよりも、ライブドアや楽天という新規参入者が現れた時点で、近鉄球団の売却先をライブドアか楽天にしぼって検討すればよかったことである。その後に、ダイエーホークスがソフトバンクに売却されるに際しての審査をみれば、なぜあの時に近鉄の売却を進めようとしなかったのか疑問が残る。
 つまり、オリックスと近鉄の合併は、パシフィック解消・一リーグ化へのスタートラインであり、そこに秘められた密約実行のためにはパシフィック4チーム化は必須条件だったのであろう。
 近鉄とオリックスの合併、次いで西武とロッテもしくはダイエーの合併である。日ハムだけは北海道移転直後だから合併対象とならなかったのであろう。
 プロ野球チームが企業の広報宣伝媒体であることは否定できない。
しかし、企業の私物ではない。公共・公益的存在であるし、何よりも日本野球界の頂点に立つ存在である。その意義とか存在責任というものを考えれば、プロ野球経営者の時代錯誤的経営感覚は糾弾されなければならない。
 西武やコクドの様々な問題点はかねてから指摘されてきた。今それらは白日のもとに曝されようとしている。読売新聞を始めとするマスコミの問題点も糾弾されなければならない。
 それにつけても、我々市民は、足して二で割る主義、マアマア主義、ナアナア主義といった、本質を見えなくさせる言動や行動に対して、しっかりと眼を開いて観てゆかねばならないと思う。

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