改めて事例新スキーム

先号記事のとおり、取引事例新スキームに関わる懸案は着々と前進しつつあるようだが、未だに課題の本質が整理されているようには見えない。
日本鑑定協会においても、全体を整理総括した説明が茫猿の知る限りにおいてはなされていない状況にある。


標題に云う「取引事例新スキーム」とは、取引事例調査に関わる新スキームであり、これには三つの異なる課題が関連するものなのである。そして、それぞれの課題毎に我々が準備しなければならないことが異なるのである。
一つは、再三にわたって『鄙からの発信』でも取り上げてきた、個人情報保護法に関わる課題である。05.04.01より全面施行される個人情報保護法について、そのガイドラインに即応した対策が、日本鑑定協会において、都道府県士協会において、さらに個々の鑑定事務所において求められており、その残された時間は2ヶ月をきったということである。
間違えてはならないのは、新スキームが稼働するから個人情報保護法対策が必要なのではなく、既に鑑定協会も士協会も個人情報取扱事業者なのであり、個々の鑑定事務所はその構成員として同ガイドラインを遵守する義務が発生しているということに留意すべきことである。
その意味において、2月から3月にかけて、全国で開催される個人情報保護法に関する研修会は重要であり、受講修了証の持つ意味は大きいのである。
一つ目の課題は、ガイドラインを遵守した安全管理措置対策であり、セキュアな士協会ネットワークの構築なのである。その期限は05年03月末といってもよいのである。
二つ目は、新スキームは二つの内容を有するものであるということである。
そもそも、新スキームは「取引価格情報開示制度」(国交省土地情報課主管)の発足による新事態であり、主として土地取引価格情報を広く社会に開示するために、不動産取引価格を調査してWebにより公開しようとするものである。
しかし、なんらの加工無しに取引価格を開示しても有益な情報とならないばかりか、混乱を招きかねないという側面がある。つまり多様な不動産(同じものが二つと無い不動産-特に土地-について)について、その不動産固有の付随情報無しに単に取引価格だけを開示しても、意味を為さないのである。
したがって、取引された不動産について、その固有付随情報についての調査を行う必要があり、その調査協力依頼が不動産鑑定士に為されようとしているというのが二点目であり、その具体的ツールとして鑑定協会に設けられる「中央管理サーバを起点とするネットワーク」が構築されるのである。
この調査に不動産鑑定士がいかに関わろうとするのかについては、ここでは詳細は述べないが、中央管理サーバを起点とするネットワークを介して、鑑定士は取引対象不動産に関わる幾つかの要因情報を調査し入力する作業を行うという形で関与するのである。
ここまでは新しい業務であり、地価公示等に関連して行われてきた従来の取引情報に関する閲覧・調査等業務とは関係がないのである。無関係と考えた方が理解しやすいであろう。
二つ目の課題に我々が直接関与することは少ないであろう。
鑑定協会の企画・地価調査・資料合同委員会において、着々と進められている準備を見守ればよいであろう。もちろんのこと、審議検討の状況は随時開示されて然るべきと考えるし、広く意見を求めるべきことを要望してゆかねばならないとも考えるものである。
ここでの主な検討ポイントは次の5項目と考える。いずれも次号記事で詳述するが、ここでは課題項目だけを列挙しておく。
1.調査の事業年次
付随情報調査入力の担当期間について、地価公示期間及び地価調査期間に区分するか、通年作業とするかである。
2.業務管理について
業務管理主宰者と責任者に関する問題である。
つまり、公示分科会を主体として調査担当者委嘱が考えられているが、個人情報保護法の観点から業務責任者は士協会となるのではないかという問題である。
3.調査範囲について
照会調査対象土地種別は全てであるが、付随(要因)情報調査対象は山間地なども含めて全てが必要であるか否かという問題である。
4.要因調査項目について
付随情報調査項目は、画地条件、街路条件、接近条件の一部、及び法規制に限定すべきであり、調査主体の判断を伴う項目は除外すべきではなかろうかということである。
5.データ移管及び管理について
こうして形成された取引価格情報データは、逐次、中央管理サーバより士協会サーバへ複写移管されるであろうが、このデータの安全管理措置が喫緊の課題なのである。
『士協会に移管されるであろう取引情報は、一次データとしてデジタル化済み異動通知書データがあり、二次データとして取引価格照会結果入力済みデータがある。さらに三次データとして、鑑定士の調査により形成された付随情報調査入力済みデータがある。この区分からすれば、地価公示等事例カードは四次データと称するのが適当であろう。』
三つ目は、こうして形成された取引価格情報を地価公示等に活用して、公示取引事例カードを作成する作業につながるのである。この作業は中央管理サーバを介して行うことは様々な問題を生起しかねないから、都道府県士協会のネットワークを介して行うべきものと考えられるのである。
すなわち、ここからは従来の事例作成と変わりはないが、しかし個人情報保護法に即応した作業対策が求められるのであり、それは中央管理サーバ・ネットワークと同程度以上の安全管理措置が求められると解するのが妥当と考えられるのである。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
鑑定協会公式サイトの最新記事を紹介します。
●地価「最終」暴落(立木誠、光文社ペーパーバックス)への反論についてを掲載しました。(2005.1.28)
起草者:日本不動産鑑定協会地価調査委員会副委員長・小川隆文氏
>>>詳細はこちら
http://www.fudousan-kanteishi.or.jp/japanese/new_j/bouraku20050128.pdf

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