恥知らずな面々

 恥知らずな人たちだと思うのである。
誰達のことかと云えば、TV社会に棲む人たちのことである。世間では彼等のことをジャーナリストと呼称し、彼等自身もジャーナリストを自称することが多いようである。自尊心も大きいし給与水準も高いようである。
 その彼等彼女等の底の浅さ、ジャーナリストとしての矜持の無さを露呈する事件が起きている。どういうことかと云うと、「チワワの可愛さ」を売り物にしたCMで関心を集めた「消費者金融・アイフル」に関する事件についてである。全ての番組を見たわけではないが、いくつかのニュース番組、特にワイドショー系番組では「声高なアイフル叩き」が横行している。


 曰く、取り立ての横暴さ凶暴さ、一括返済は嫌がり借入継続を喜ぶ、グレー金利に誘導する、等々いくつかの悪事をニュースとして報道するのは、4/14に金融庁が発表した業務停止行政処分以降のことである。
彼等は4/14以前は何も知らなかったというのであろうか。
 そんなことはない。周知の事実である、茫猿でも彼等大手消費者金融の二面性は具体的に知っている。
 しかし、ジャーナリズムは報道しない。特にTVは報道しない。例えば「アイフル被害対策全国会議」は昨年の4月に発足し活動を始めているが、TVはいっかな報道しない。TVにあふれるのはかわいいチワワのCMばかりである。片隅では報道しているのかもしれないが、少なくとも大きく取り上げられることはない。武富士裁判事件もマスコミでは全くといっていいほど取り上げられているのを見たことがない。
 「アイフル」など消費者金融業者たちは、トヨタ自動車、松下電器、花王石鹸に並ぶ、ひよっとしたら上回るCM提供者であろうから、CM収入で自らの給与が用意されている以上、最大のスポンサーの面を逆なでするような報道を行い得ないのは理解できる。広告収入に頼るジャーナリズムの限界はそこにあると理解しよう。
 でも、そう、だからといって、金融庁処分が発表されたら、「水に落ちた犬を叩くように」一斉射撃を浴びせるというのは如何なものだろうか。せめて、「チワワ犬」に惑わされた自らの過ちというか怠慢というものを詫びるのが先ではなかろうか。視聴者のなかにはチワワに目くらまされて多重債務者に引きずり込まれた人もいるであろうに。
 ホリエモン騒動の時も同じ思いをしたのであるが、日本のジャーナリズムが弱体化していると思うのである。つまらない発行部数競争や視聴率競争に明け暮れているうちに、ジャーナリズム本来の役目を放棄してしまったTVや新聞ばかりになってしまったのである。皆んなで渡れば怖くないと云った報道ばかりが増えて、自らの調査報道とか意志や見識が明らかな報道といったものが随分と減ってしまったと思うのである。
 もちろん、彼等TV人や新聞人ばかりを責められない。そういった似非ジャーナリズムを唯々諾々と受け入れてきたのは、愚かな私たちであるのだから、彼等を責めることは、実は自らを責めるというか天に唾する行為なのかもしれない。ジャーナリズムは「社会の木鐸」であると云う。しかし、木鐸を木鐸たらしめる為には読者や視聴者の見識というかカウンターパワーといったものが求められるのではなかろうか。ジャーナリズムが我々に警鐘を鳴らしてくれる存在であり続ける為には、我々読者・視聴者の側でジャーナリズムやマスコミを選択し育てて行く姿勢が必要なのである。
 何処か一社でも、「これからはサラ金のCMは謝絶します。」というTV局は現れないものだろうか、現れたら支援するのだが。でも無理だろうな、今やマチ金を通り越えてト金と結びつくサラ金だから、逆らうのは無理だろうな。
【ト金とは都市銀行のことで成金と読んでください。マチ金とは信金や地銀のこと(いいえ茫猿が云っているのではなく、ト金が云っているのだそうです。】
 

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恥知らずな面々 への1件のフィードバック

  1. モモンガ のコメント:

    某ネットポータルの広告出稿リストでは、圧倒的にサラ金・ノンバンクが多いのです。パーソナルメディア的な側面が強いネットでは如実なのですが、テレビの場合だとそれほどでもないのでしょうが。。。
    おそらくどのメディアでも、この種の広告を全面的に止めると、経営に影響が出るレベルまで、そのウェイトは高まっていますね。
    ちなみにネットで次に儲かるクライアントは求人・派遣・転職コンサルタントなどの人材分野。カネに密接に結びついた分野ほど、広告屋さんのメシになるようです。

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