考えてゆきたいこと

読者にどのように受け止められたかはともかくとして、「確認しておきたいこと」では新スキーム:土地総合情報システムに関わる原理原則的なことを述べたつもりであ。
見えてくること」では、現在の試行作業の次に見えてくること、見えなければならないと考えることを述べたつもりである。さて、ここではより具体的にこれから考えてゆきたいこと、即ち実行してゆきたいと考えることを述べてみたい。


何度も何度も繰り返していることではあるが、いわゆる「新スキーム」にとらわれていると見えるべきものが見えてこないと考える。しかも、自分の経験のみにとらわれていればなおさらのことである。それにしても昨年の7月以来の試行であり、既に10ヶ月余が経過し、取引価格情報の開示も行われたのである。今では幾つかの事柄が見えるようになったことと考えられる。
新スキームで収集された事例資料の内、一般的な取引事例である「土地及び土地建物取引事例」はその多くが地価公示事例として作成されて公示評価員等の利活用に供されていることであろう。
(注)回収された土地取引事例、土地建物取引事例は、共に二次PDF事例として調査担当公示評価員がオンライン閲覧し、その閲覧結果を中央管理ファイルにオンライン書き込みする。この調査書き込み結果を三次データと云う。
(注)地価公示事例資料は、公示評価員が三次データを基礎として判断結果や追加調査結果の補足・補充を行って作成する。これを四次データと云う。
ここまではそれほどのトラブル無く進められてきた模様である。
しかし地価公示に直接関連する土地、土地建物取引事例を除く分野では、既に幾つかの問題点の存在が指摘できるのである。
一つは、区分所有権事例である。東京都区部第3〜第4四半期における区分所有権事例(公開された調査済み三次データ)は既に2425件に達している。多いか少ないかは判断が分かれるであろうが、試行早々において二千数百件のデータが存在すると云うことがとても重要である。今後ますます蓄積されてゆくであろう膨大な有益データをどのように利活用してゆくのか、未だ何も見えてこないのである。(ちなみに同期間同エリア内で、開示される更地事例は1710件、建付地事例は2386件である。)
留意しておきたいのであるが、これらのデータは地価公示事例としては作成されることのない事例であり、したがって地価公示の事例管理の枠組みからは漏れ落ちているのである。即ち、三次データとして中央管理ファイルには存在するが、多くの公示評価員の立場からすればアクセスできず退蔵されていると云って差し支えないのである。
同じような意味において、もう一つ指摘できるのである。それは主に地方圏において顕著な事柄である。今回の調査が悉皆調査であるが故に生じていることであるが、地価公示が設定されていない自治体や地域に関わる事例並びに、地価公示と直接関連しない農地・林地等事例が区分所有事例と同様に中央管理ファイルに退蔵される状況にある。いずれも担当する公示評価員の努力により調査済みの三次データであるにもかかわらず、理不尽にも退蔵されているのである。
都市圏地方圏に共通するであろうと考えられるのは、底地取引事例も(借地権負担事例)、その属性情報等が退蔵もしくは非活用状況にあると考えられるのである。
ここまでは収集された三次データの面的な意味での課題点である。さらに指摘されるのは時系列的な課題である。三次データの作成は毎月々々休み無く行われているが、この作成集積された三次データが公示事例化されて広く公示評価員等が利活用する迄には相当の時間が経過するのである。三次データ作成から四次公示事例としての共同利用までの期間は最短で三ヶ月程度と考えられ、最長では7ヶ月前後と推定される。
この惰眠期間を短縮する方法がないのかといえば、そんなことはないのであり、様々な迅速化の方法手段が考えられるのである。障害は実行しようとする意志が無いだけである。
以上のように、H17新スキーム試行により調査回収された不動産取引価格情報の各種類毎の作成・管理・利活用状況を眺めてみれば、そこに自ずからこれから為すべき事柄が浮かび上がってくるというものである。
土地総合情報システム(新スキーム)が地価公示の枠組みのなかで施行されてゆく以上、地価公示に直接リンクしない事例資料も地価公示の枠組み、なかでも士協会における事例収集・作成・管理・共同利活用の枠組みを拡大し充実して進めてゆくべきではなかろうか。
同時に、新スキームの全国展開、新スキームデータの有効活用は「地価公示のさらなる精緻化に大きく寄与する」ものであるという点を、鑑定協会は広く声高く広報すべきであると考える。
ところで士協会の地価公示の枠組みの拡大充実とは何を指すかと云えば、これも繰り返し繰り返し述べてきたことであるが、士協会ブロードバンドネットワークを速やかに構築することである。ネットワークの構築は公示作業の迅速化・円滑化、さらなるオンラインデジタル化、安全管理の充実に大きく寄与するものである。このオンラインネットワーク上において、様々な公示等関連情報ファイルを有効に安全に稼働させることが鑑定評価全般の向上に寄与するものなのである。
重ねて云おう。ネットワーク構築は安全対策向上、省力化・迅速化・効率化実現、多機能化実現の手段である。でも、自ら進んでやる気が無ければ、多少のリスクはとってでも構築する気がなければ、仮に受動的に実現しても使いこなせないであろう。よく云うではないか「馬の耳に念仏、豚に真珠、猫に小判」と。そうそう、馬耳東風と云うのもあった。
少しばかり言い過ぎではと思わない訳でもない。でもそこまで云う背景はこういうことである。しばらく前に「地価調査の安全管理」という記事をアップした。鑑定協会関係者の目に留まったか否かは定かではない。メールマガジン配布等で少なからぬ関係者の目には留まるようにしたつもりである。
でも何も変わらない。地価調査委員会や企画委・個人情報保護法対応検討小委員会等で検討はされたのかもしれない。でもどのように検討を行ったところで、目に見える形で状況が変わらなければ何も行わないのと同じである。何かが起きれば、不作為の責任、先送りの責任を痛感して頂く必要ありと云わざるを得ない。かくして柳に風、暖簾に腕押しのさまを慨嘆するのである。
「事例閲覧の安全管理」もご覧下さい。

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