蕎麦の話題が続いたついでに台抜きの話です。
台抜きとは、薬物(ヤクモノ)蕎麦例えば天ぷらそばの蕎麦抜きのことを云います。天抜きと称するお店もあります。
池波正太郎氏の世界などではよく登場するモノです。
昼下がりや夕刻少し前、そば屋が混み合っていないときに、小揚がり座敷で台抜きの天蕎麦とお酒を頼み、酒が終わったらザルかモリを頼んで一餐にするという食事です。この場合にお酒の追加は行わないのが礼儀です。そば屋は居酒屋ではありませんから、薬物の天ぷらで食前酒的にお酒を頂き、ザルで締めるというのがマナーです。尚、台抜きから派生したのが「板わさ」です。掛け蕎麦の蒲鉾のみを下さい、山葵をつけてというオーダーが単品品書きになり、蒲鉾変じて「板わさび」となりました。 今や」死語になりつつある「カマトト」は「素人ぷりが、板に付いている(蒲鉾)、お魚(トト)」という隠語が俗化したものです。
某月某日のこと某有名蕎麦店(上野池之端・藪)で天ぷら蕎麦を頂いたときのこと。
たまたま小揚がり座敷に席をとっていたことでもあり、天蕎麦の台抜きとお酒を注文して頂きました。藪の天蕎麦は、芝海老のかき揚げ天ぷらでして、ごま油でパリッと揚げたかき揚げ天ぷらがとてもおいしいのです。しかも、このかき揚げが温かいつゆに浸されて供されます。おつゆのなかの天ぷらなんて、すぐにグチャグチャになりそうですが、カリッと揚げてあるので銚子を一本空にするまで天ぷらが崩れないのです。
あまり旨そうに食していたから同行した息子達も、鴨南蛮やざる蕎麦のオカワリニ天蕎麦を注文していたことです。何よりも上野の美術館巡りなどの帰りの昼下がりのひとときに、ソバ種を肴に一献というのは至福中の至福です。
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