新スキーム施行地域拡大の背景

10/10に全国士協会会長会議が名古屋市で開催され新スキーム拡大の方向性が説明され、10/20には新スキーム小委において直面する課題が検討された。REA-INFOにはその概要を記事にしたが、REA-Cybozuが試用期間満了に伴い閉鎖されたこともあり、読者にとっても筆者自身にとっても隔靴掻痒の感が拭えない状態にある。したがって、その背景を茫猿なりの推理を加えて記事にしてみようと思うのである。


ところで、10/21付けのREA-INFO茫猿投稿記事は概略次のようなものである。

『昨日10/20に新スキーム小委員会が開催されました。
議事概要は以下のとおりです。
1.三年間の試行期間を経て次年度は全国展開が見込まれる新スキームについて
(1)地域拡大の考え方について
(2)新スキームデータ活用基準の策定について
(3)実施体制の充実について
2.士協会システムの検討課題
第二WGとしては、協会ネットワークについて、プロトタイプ構築作業は一定の成果を認められる水準にあると考えますが、次年度以降に実働タイプを構築するに際して、幾つかの事項を検討整理して透明化を図った上で、次年度以降のネットワーク等構築作業に入るべきであろうと考えます。(以下、略)』

H16年度に始まった新スキーム(取引価格情報提供制度)は、3年間の試行期間が残り数ヶ月で満了するのである。主宰者である国土交通省ではその総括を始める時期に入りつつある。
つまり、こういうことなのである。平成16年3月19日に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」の中に「不動産取引価格情報の開示」が規定されてあり、それが現在進行中の「新スキーム試行」の実施根拠であることは前に記事にしました。
この三カ年計画『事項名25 不動産取引価格情報の開示』を再掲する。

『事項名25 不動産取引価格情報の開示』
正確な取引価格情報の提供は、市場の透明化、改定・住取引の円滑化・活性化等を図るために早急に実現しなければならない重要な政策課題であり、このような制度を、個人情報等の保護に対する国民意識にも配慮しつつ構築し、さらに充実していくためには、幅広い国民の理解が得られるよう、実施上の課題も含めて、実績を通じて検証していく必要がある。このため、以下の施策を講ずる。
a 国土交通省は、法務省と連携し、現行制度の枠組みを活用して、取引当事者の協力により取引価格等の調査を行い、国民に提供するための仕組みを構築する。 (平成16年度(国土交通省、法務省)措置済)
b 上記の仕組みに基づき、取引当事者の協力により取引価格情報の調査・提供を行う。(平成17年度(国土交通省)措置済)
c 価格情報の正確さが確保されること、個人情報保護の観点から情報提供方法に関する技術的側面が解決されること等を実績を通じて検証し、この結果等を踏まえ、取引価格情報提供制度の法制化を目標に安定的な制度の在り方について検討し、結論を得る。 (平成18年度(国土交通省) 検討・結論)  【再掲終わり】

「取引価格情報の調査・提供」に関してはH17年度から照会調査が開始されインターネットを通じた情報提供も行われている。試行実施地域も最終H18年度は全国の政令指定都市に拡大して実施中である。そういった試行状況を踏まえて国交省は「取引価格情報提供制度の法制化を目標に安定的な制度の在り方について検討し、結論を得る。」時期に入りつつある。
新聞報道に拠れば、国交省では「取引価格情報の提供制度に関する検討委員会」を設置して10/13に第1回の会合を開催した模様である。同委員会は年内にも結論を得て次年度以降の事業展開方針を答申する模様である。
判りやすく云うと、三カ年間の試行結果は関係各方面において肯定的に評価されているようであり、即ちH19年度以降の本格運用が期待されている状況にあり全国的展開も期待されるのである。では何故、地域拡大について検討しなければならないのか、其処にどのような問題が生じているのであろうか。「新スキーム、その杞憂と蜘蛛の糸」などという記事を掲載しなければならないのであろうか。
背景を推理するとこういうこととなる。つまり、事業の本格的展開は、取引価格情報の提供という面でも地価公示の精緻化という側面でも、相応の評価を得ておりほぼ既定の事項と云える。主管庁においても鑑定協会としてもH19年度以降の本格的全国展開に関して異論はなく、全国展開に向けて準備が進められつつある。とは云いながらも、主管庁において試行結果に不満が無いわけではない、照会票回収率や調査結果納付率及びその内容について完成度が低い事例もあるという意向は聞こえてくるのである。鑑定協会としても、調査事例開示から調査結果オンライン納付に至る期間の短さや、事例実査が難しいこと等に関して地価公示評価員の不満は決して低くはないのである。
そういった小異や不協和音が存在するのは事実としても全国拡大の方向はほぼ既定であるが、しかし、その内容は未定なのである。その拡大内容未定のなかには決して小さくはない障壁が介在するのである。障壁の具体的内容については次号記事で述べるとして、REA-INFO記事後半の「士協会システムの検討課題」に関しては、先々号記事から「士協会NW構築答申」をお読み頂ければご理解いただけることであろう。

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