価格競争という黒船

 鑑定評価業者選定に関して随意契約採用を主張する鑑定協会や鑑定業界に考えてみてほしいことがある。
断っておきますが、茫猿は官公庁が鑑定評価業務委託に際して競争入札や見積もり合わせを採用することを歓迎するモノではない。考えるのが辛いけれど、あり得るだろう世間の反論や異論にどう答えるかを問うているだけである。


一つは先方(発注者側)の論理である。このような先方の論理にどう答えますかね、伺ってみたいのである。 
・あなたがたは、国家資格を有する不動産鑑定士でしょう、
・高度な知識経験に支えられた人格高潔な方々でしょう、
・地価公示や地価調査等とも秤量比較されるわけだし、
・鑑定評価手続きは定められているのだし、
・そのような方々の成果物に差異が生じるとは思えない、
・まして不当な報酬ダンピングなど為さるとも思えない、
 であれば、多少でも報酬が安い方が、というよりも鑑定業者選定に透明性が求められているのであり、国民・市民・議会・会計検査院に説明責任を果たすことが求められている。だから見積もり合わせや、競争入札をします。
随意契約を採用するに際して、透明度が高く、効率的かつ効果的な鑑定業者選定方法があれば、その方法を示して欲しいのです。
もう一点は、既に蔓延している競争入札である。それらを長い間、放置してきた不作為についてである。
・99/06に地価調査の競争入札が実施されたが、鑑定協会は容認した。
 今や地価調査の入札は多くの自治体で実施されている。
 少なからぬ自治体では固評標宅鑑定も競争入札に付されている。
・02.10の郵政事業庁の鑑定評価大量発注並びに入札行為も鑑定協会は容認した。その後に多くの独立法人が発注した鑑定評価入札も容認した。
 ネットを検索すると、こんな情報がヒットします。
・住宅金融公庫H18年度入札実績
・独立行政法人雇用・能力開発機構
・三友システムは、こんな風に云います。
・こんな情報開示もあります。
・島根県の入札公告
・会計検査院 平成19・20年度 競争参加資格申請書作成要領
この説明書の2.作成要領  2.申請書作成方法 (6) ア 競争参加者が参加希望する業種 別表業種区分が注目です。 別表に不動産鑑定評価が明記されています。これを削除させることが重要なのではないでしょうか。
 業界の識者が指摘するように、入札で叩き合いをすれば、マイナスのスパイラルに陥ってゆくのでしょう。最近10年以内に開業した若手の鑑定士は、それでも入札参加を望むのではないでしょうか。
 彼等にすれば「寝ているよりはマシなのです。」 もう一つ言えば「東京の大手に三割も四割もピンハネされて、大量処理評価に追い回されるよりはマシなのです。」
 云ってみれば、古参業者がパイを分け合う社会から容認される正当なスキームを考えてこなかった罪でしょうし、新規業務拡充に努力してこなかった罪でしょう。
 さらに大事なことは、交渉相手先が財務省でも国交省でもないということです。交渉相手先即ち、随意契約を認めさせなければならないのは、会計検査院です。会計検査院が随意契約をNOと言っている間は、何ともならないでしょう。
 我々鑑定業界が随意契約の採用を求めるよりも、鑑定協会側から次のような提案をする勇気とか、準備とかがあり得ましょうか、いささか疑問です。
 鑑定評価報酬には随分と問題があります。今や従価報酬ではなく業務従量報酬であるべきでしょう。 そうすることにより、事案毎に仕様書作成に基づく非価格競争があり得ます。
 何よりも、官公庁が委託する鑑定評価書は全面公開を原則とする。
少なくとも個人情報を除き鑑定業者&不動産鑑定士名を明記した公開用調書を作成し開示する。(相当に危険な思想ですが)その公開情報を基礎に我々の側でボランテイア・レビューを行う。
 この二つを鑑定協会として仕様を定めて実施してゆけば、
 実施する鑑定士や鑑定業者を協会として支援してゆけば、
 少なくとも理事・役員は軽々に入札に参加することなく
 業務従量報酬と評価書開示を実行すると宣言できれば
 事態の転換はあり得るかとも・・・・・・・・・・・・
 書いてて辛いし、消そうかと思う。反論、異論も多いだろうし。
 反論というか異論というか、その一つがここにありあます
 今や、積年の弊を感じます。この問題は軽々に語れない。
 でもというか、だからというか、足跡的にこの記事を残しておきます。

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