2/15付けで、各メデイアが伝えるところに拠れば、証券取引等監視委員会は上場REITであるDAオフィス投資法人の運用会社であるダヴィンチ・セレクトに行政処分を行うよう金融庁に勧告した。
同社が05/07~06/10に行った資産組み入れ不動産の鑑定評価手続きに法令違反の事実が認められるというのである。
記事はさらに、こうも伝えている。「3月発表の公示地価を先取りして不動産株全般に内需関連人気が高まっているが、「REIT(リート)バブル」に警鐘を鳴らし反省場面が続く展開も想定される。 」
「証取監視委:ダヴィンチ社の行政処分を金融庁に勧告」(毎日msn)
証券取引等監視委員会は14日、東京証券取引所に上場する不動産投資信託(J-REIT)「DAオフィス投資法人」の運用を委託されているダヴィンチ・セレクトが、ずさんな不動産評価手続きを行っていたとして、投資信託・投資法人法に基づき行政処分するよう金融庁に勧告した。
監視委によると、ダヴィンチ・セレクトは05年7月~06年10月に取得した商業ビル38物件のうち5物件で実際とは異なる賃料収入や光熱費などのデータを誤って不動産鑑定会社に提出。この結果、2物件を実際より高い価格で「DAオフィス投資法人」に取得させていた。
ダヴィンチ・セレクトは取得したいずれの物件でも不動産鑑定会社に提出するデータを事前に十分チェックしていなかったうえ、鑑定評価の内容も十分確認しておらず、監視委は「投資信託委託業者としての注意義務を怠った」としている。
※【証券取引等監視委員会による検査結果】(DAオフィス投資法人 07.02.14)
※「DAオフィス投資法人(438) 」(REIT掲示板)
※「処分勧告、鑑定評価取得の手続き不備で」(Nikkeibp 07.02.14)
※証券取引等監視委員会が指摘した評価手続不備事項
1)収入とすることができない敷金償却収入などの計上
2)過大収入および過少費用の申告
3)フリーレントを反映しない収入の過大計上
※「ずさん鑑定でダヴィンチに処分勧告 証券監視委」(Sankei WEB 07.02.15)
※「ダヴィンチは資産運用子会社の行政処分勧告嫌い売り気配」(Asahi.Com 07.02.15)
※「ダヴィンチ・セレクトの問題、実質的影響なし=ダヴィンチ」(Asahi.Com 07.02.16)
メディアが伝えるところだけでは、鑑定評価自体に直接的不備が存在したかどうかは判らない。どうやら見えてくるのは、デューデリジェンス・リポートもしくは依頼者提供資料に不備があり、その不備を点検することなく鑑定評価を行った結果、実際より高い評価額を鑑定したということのようである。
デューデリ・リポートの不備を見抜けなかった鑑定側が落ち度を問われるのか否かというのは、今まさに開催されようとする「証券化対象不動産の鑑定評価基準」及び「実務指針(仮称)」に関する研修会に関わる問題である。
騙した方が悪いのか騙された方に落ち度があるのかという問題なのかもしれないが、ここで問われるのは『不動産鑑定士は専門職業家』であるということであり、「一旦発行された鑑定評価書は、専門家の判断であり意見として社会に流通してゆく。」ということなのである。
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