中古マンション急騰

 ProgresNewsが伝える「東京カンテイ・プレスリリース:07/04/17」及び「三井不動産販売・リハウス・プライスリサーチ:07/04/19」によれば、首都圏の中古マンション価格が急騰している。


「株式会社東京カンテイ プレスリリース 2007 年 4 月 17 日」

三大都市圏・主要都市別/中古マンション70㎡価格月別推移
東京都で前年同月比22.4%、前月比7.1%の大幅上昇
首都圏、近畿圏は上昇傾向が顕著、中部圏はやや下落

 2007年3月の首都圏・中古マンション価格は、前月比で5.2%上昇し、2,779万円となった。2か月連続の上昇で、1月から約200万円上昇した。都県別にみても全て上昇しており、東京都が同7.1%、神奈川県では同6.5%、千葉県では同1.8%、埼玉県では同0.9%上昇した。特に東京都では前年同月比で22.4%も上昇し、この1年間で約700万円上昇している。
近畿圏は1,809万円と前月比3.0%上昇した。1,800万円台は63か月ぶり。大阪府で同3.0%、兵庫県で同3.9%とともに上昇しており、近畿圏も上昇傾向が顕著である。
中部圏は1,447万円と前月比1.1%下落したが下落幅は小さく、概ね安定推移している。愛知県では同2.2%下落し、9か月ぶりに前月比で下落となった。

三井不動産販売:第40回リハウス・プライスリサーチ

平成18年度(18年4月~19年3月)年間上昇率 住宅地価格+9.7%、中古マンション+6.2%~住宅地、中古マンションとも調査開始以来の最高上昇率を更新~
◆今後の見通し
住宅地、中古マンションとも、全体的な上昇基調は今後も継続するものと予想される。ただし、都心部郊外部にかかわらず、再開発や新線の開通などにより利便性や収益性が向上した地域とそうでない地域との二極化が一層鮮明になっていくものと推測される。

住友不動産販売:【不動産情報コラム】

日本レインズの中古住宅マーケット・データ『マーケット・ウォッチ』(首都圏-物件所在地別)による、17年度10-12月期の首都圏・中古マンションの成約平均価格は2,167万円と、前年の同じ期に比べて5.6%の上昇を示しました。

 東京カンテイ発表によれば、「中古マンション70㎡価格月別推移:対前年同月比+22.4%」であり、三井不動産販売発表によれば、「東京区部四半期変動率3月期は+2.1%(年率換算+8.4%)」である。両者の数値は大きく開いているがともに急騰気配を伝えることに変わりはない。両者の開差は変動率計算基礎データや計算方法の相違によるものと思われる。
住友不動産販売公表データでは前年同月比+5.6%であるが、この数値は首都圏数値であり東京都だけをとればさらに高い上昇値が認められるようだ。
 また東京カンテイ公表データで注目されるのは名古屋市が下落に転じていること、千葉市も横這い・下落傾向が認められることである。三井不動産販売公表データにおいても、千葉県、埼玉県、神奈川県横浜川崎以外の地域ではやはり横這い・下落傾向を示している。首都圏マンション市場の二極化が顕著ということであろうか。
 さて問題は中古マンション価格急騰の背景である。
さまざまな要因が取りざたされているが、金利の先高気配や、長期下落が底をうち反転上昇期に入ったとか、新築マンションの価格上昇や供給減少の影響などが挙げられているようだ。JREITや私募債の物件買いあさりも影響しているだろう。
 茫猿が一番疑問なのは、首都圏なかでも東京区部集中に歯止めを掛ける必要はないのだろうかということである。過密都市東京がさらに過密化してゆく都心集中現象が疑問なのである。首都圏直下型地震の到来が高い確率で予想されるなかで、都心やベイエリアに超高層マンションを集中させてゆく都市計画行政の在り方がとても疑問なのである。二極分化とか一極集中と、関連業界はともかくとしてマスコミや政財界がはやし立てるだけでよいのだろうかと思うのである。
 中長期的に見れば少子高齢化なのであり、好むと好まざるとに関わらずグローバル化の波は避け得ないのであり、日本の農林地価格も工場地価格も海外市場との競合は避けられないのである。住宅の質量的転換、ライフサイクルの変化、日本全体としての土地資源の最適配分といった先を見据えた都市計画行政が必要だと思われる。
 この点に関して、小泉国政・石原都政が行ってきた規制緩和、都心集中・再開発という行政目標は結果として大きな成果を得たと云うべきなのであろう。だが実態は東京都・首都圏にとって内部経済極大化でありそれ以外の日本に対する外部不経済極大化ではなかったろうか。六本木・青山、丸之内、汐サイトなどの変貌と繁栄は、県庁所在地を含む地方都市のシャッター商店街化と無関係なのではなく、一極への集中が多極の過疎を招いたということに過ぎず、しかも集中した一極は集中故の脆弱さを内部に抱え込むことになったと云える。
 国家百年の計といった発想が待たれるのである。なによりも一極集中による脆弱さを避ける考え方、いわば国家的リスクマネージメントと云った考え方が待たれるのである。東京とか首都圏に対置するカウンターパート(バックアップと云ってもよい)の存在を育成するという事業は、経済論理に委ねていたのでは決して実現しないであろう。何も首都圏移転などという古証文とか、ミャンマー軍事政権を模倣するようなことを云うのではない。
 東京商工会議所が主張するように近畿圏や中部圏から首都圏に集中するのは効率を旨とする経済論理の帰結するところであり、市場に任せておいては止めようがない。だから施策として近畿圏や中部圏あるいは地方都市優遇策や推進施策が必要なのである。それが政治というものであり、ひいてはそれらの施策の結果こそが東京都の保険とかバックアップというものになるし、国土の均衡発展をもたらすものと考えるのである。茫猿は沖縄や九州・北海道の自治州化、或いは連合国家化でもよかろうと考える。
『東京の新しい都市づくりに関する提言』(東京商工会議所)
 少し視点を変えて見れば、東京都民が必要とする水も酸素も新鮮野菜も新鮮牛乳も、東京は自給できないのである。東京は東京以外の支えなくして自立できないのである。単に企業が集中しているからとか人口が多いからと云った要因で税収が東京都や首都圏に集中する現状を放置しておいてよいのだろうかという視点が必要なのである。

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