鑑定評価モニタリング

 昨日届いた2007年7月5日発行日本不動産鑑定協会 メールマガジンは、「証券化対象不動産の鑑定評価のモニタリングに関する基本的な考え方について」と題して、国土交通省と鑑定協会常務理事会の意見交換会ニュースを伝えている。 さらに改正不動産鑑定評価基準(証券化不動産鑑定評価基準)の施行(7月1日)にあわせて、こんな報道もある。
不動産価格情報を集約・データベース、国交省が構築へ(07/06/27)
国交省、不動産鑑定の監視強化・価格算出の基準を統一(07/06/14)
「不動産ファンド、私募も監督対象に・金融庁(07/05/16)」

 平成19年7月3日(火)に国土交通省と常務理事会メンバーとの意見交換会が開催され、同省から6月27日の不動産鑑定評価部会で決定された標題モニタリングに関する基本的な考え方(1.モニタリングの必要性と目的、2.モニタリングを実施する際のポイント、3.具体的な取組み、4.モニタリングの実施とあわせて検討の必要な課題)について、要点説明が行われました。

 モニタリングとは、「監視、傍受、(調査)」の意であり。ビジネスITの分野では「システム・業務を含めビジネス全般のオペレーションが遅滞なく実行されているかどうかを監視すること、またはその仕組み」を指すとネットでは教えてくれる。またこの問題は7月より施行されている「改正不動産鑑定評価基準(証券化)」の運用に伴うものでもあり、実務レベルのフォローアップの場形成でもある。
 添付されている資料からは「モニタリング」実施の具体的詳細が今ひとつ判らないのであるが、証券化事案に限るとはいえ鑑定評価報告書そのものについて詳細報告を求めたり、一定の書式やフォーマットに基づくデータ提出を求めたりするようだ。(資料等は鑑定協会会員専用サイトに掲載されている。)
 ちょうど地価調査納期に差し掛かっているので詳細について評するのは後日とするが、「国土審議会・土地政策分科会・不動産鑑定評価部会・第23回(平成19年 3月27日) 議事録」に興味ある発言が掲載されていた。
 それは村木委員が前日の小委員会における金融庁の氷見課長の発言を紹介するものである。『行政のほうから考えると、役所というか行政側からする規制と、自主規制のいいところと悪いところも考えるべきだ、自主規制のほうは、専門性があり、かつ機動力があるけれども、ガバナンスの面で問題で工夫が必要だ』との指摘があったとのことである。
 この発言を面白いと読むか読まないかが、多分分かれ目だろうと思う。折角の示唆をどう受け止めどう理解するかだと思うのだが、その後の経緯はまだ判らない。
 少し長いが、「第6回(平成19年3月26日)投資不動産鑑定評価基準等検討小委員会議事録」より該当発言を再掲してみる。

【氷見野金融庁監督局証券課長】
  一定の基準を設けました際に、モニタリングをどういうふうにやっていくかというのは、あらゆる行政分野で似たような問題が起こり得る話だろうと思いまして、金融庁の例えば私ども証券課の仕事でも日々悩んでいる世界の話ですので、ちょっとご参考までに、私どものほうで基準のモニタリングといった点について、どういうふうな考え方をして悩んでいるのかというのをご紹介させていただければと思います。

1つは、一方のあり方としては、もう役所がやればいいのだという考え方があり得まして、役所の場合は一応、中立であるとか、国会のコントロールのもとにあるとかという点はあるわけですが、他方、どうしても実務から距離があって、場合によって機動性が欠けて、またどうしてもとり得る手段がかなり粗いといいますか、きめ細かい措置がとれないといったようなマイナスもあろうかと思います。

 それで、金融の面でもいろいろ自主規制という仕組みを活用しているところであります。いろいろな業界団体・協会等で、モニタリング活動をお願いしている面もあるわけですが、その場合は、専門性ですとか、柔軟性ですとか、機動性ですとか、そういう面では非常に強みがあるわけですが、他方、やはりどうしても一種の利益相反といいますか、自分たち自身に対してのことであり、また身内に対することでもありますので、どうしてもガバナンス面で工夫が必要になるだろうということで考えております。

 私どもの所管の協会の場合には、業界団体機能と自主規制機能で、それぞれ別の意思決定なり、ガバナンスの仕組みを設けて、イメージ図の真ん中に書いてあります学識経験者のような方などにも入ってもらって、モニタリング活動をやるというような仕組みをやっておりまして、おそらく、今日、ご議論の世界では、それぞれの協会の現時点でのあり方ですとか、役所のほうで持っておられるリソースですとかが私どもの場合とまた事情は違いますでしょうから、一番いい制度の設計の仕方というのは、また変わってくるのだと思いますが、やはりそうしたいろいろな主体の長所を生かして、うまく専門性、実務への近さと意思決定のイッシュー、利用者の目も含めた中立性みたいなものと、どう両立させていくかというのは、いろいろな場面で課題になっている話で、おそらくこの場合も似たような面があるのかなとお話を伺って思いましたので、感想としてご参考までに申し上げます。

 不動産鑑定-2007-04号・鑑定セミナーでパネリストの小林信夫氏が紹介したBELCA関係者の言葉を改めて思い出すのである。

 「なぜ法律や協会を持たないのか?」と尋ねたときに彼らからは「法律は最低基準を定めたものであり、協会や団体もそのレベルを維持するために設立されたものである。現在のように内外投資家の厳しい要求に応えるためには、法律や基準の制定によりレベルダウンすることは避けなければならないのではないか。」との回答があった。

さて、どうする鑑定協会というところであろうか。
「国土審議会・土地政策分科会・不動産鑑定評価部会
部会長 緒方 瑞穂 (株)緒方不動産鑑定事務所代表取締役
委 員 村木 信爾 住友信託銀行不動産コンサルティング部不動産鑑定室チームリーダー
・・・・・・いつもの蛇足である。・・・・・
しばらく、土地総合情報ライブラリーへの訪問をしなかったら、すっかり面目を一新していた。一度訪ねると宜しかろう。
なお、鑑定協会メルマガが伝える6/27開催の不動産鑑定評価部会議事録はまだ掲載されていない。

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