旧盆の一日、京都市左京区岩倉實相院に遊ばせていただきました。岐阜県の多治見市では観測史上国内最高気温の40.9度を記録したという暑い日のことでした。
なぜ岩倉實相院なのかといえば、今月一日に慮外の死をとげた弟がいただいた法名は「釈實相」と申します。彼の名前から實を、それに相という字を組み合わせて實相という名を頂戴し、實相とは真実の姿という意味があると導師から教えていただきました。その時は良い法名だなと有り難くお受けしたのですが、葬儀が進むうちに實相という名前に遠い記憶が蘇りました。学生時代に過ごした京都の市バスに「岩倉実相院」行きという路線があったのを思い出したのです。ネットで調べますと實相院門跡という由緒在るお寺があると知りました。弟の法名と同じ名のお寺にお参りするのも彼の供養だと考えて、お盆の一日を實相院で過ごさせていただこうとお参りしたのです。
実相の「実」とは虚妄に対していわれる。すなわち真実の意味である。相は無相の義であるといわれる。「実相」とは真実が無相であるということをあらわす。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
京都市の北山郊外にある實相院は、地下鉄国際会議場駅から市バス実相院行きに乗るか、叡山電車出町柳駅から岩倉駅に向かい駅から15分くらい歩くという方法がありますが、行きは市バス帰りは叡山電車を利用しました。暑さを避けて早朝八時半に到着したので、まだ開門前の實相院門前です。
實相院の御門です。
比叡山に連なる山並みを借景にする實相院の石庭です。
吹き抜ける風が涼しい回遊式庭園です。
紅葉の頃は参拝者も多いと伺いましたが、この日は訪れる人もまばらななかで静かにお庭を眺め、狩野派の障壁画や寒山拾得の襖絵などを拝観し、御本尊の不動明王にお参りして供養のお供えなどをさせていただきました。いまさらの供養とも思われますが、供養は仏のためでもありますが何よりも遺された縁者の心の在り様に係わるものと思います。弟の法名にゆかりのあるお寺が実在するということも何かのご縁と思えば、照りつける陽ざしも爽やかに感じられる時間を過ごさせていただいたことでした。
ひんやりとほの暗い寺院の一室で「床緑」と愛称される磨き込まれた黒光りする床に映える庭の緑は心を洗いますし、遠く比叡山の山並みを借景にする石庭も美しく拝見しました。いずれ来る秋には「床紅葉」も拝観したいと思いながら、学生時代以来何十年ぶりかに乗る叡山電車岩倉駅へ向かいました。お寺から叡山電車岩倉駅までの夏真昼の道のりもさほどに思わなかったのが不思議なことでした。
岩倉駅に到着する出町柳駅行き電車です。
涼を求めて鞍馬や貴船、大原方面に向かう人で混雑する終着出町柳駅です。
弟の享年は62歳、茫猿は63歳です。昨夏には享年65歳の叔母と別れ今年は弟と別れてみますと、茫猿に残された歳月はそれほど多くはない、何よりも来月こそはと、来年にこそはと先頼みすることの無意味さというか頼り無さをしみじみと実感します。今為したいことを今為すという生き方の意味を大切にしたいと思える一日でした。
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