独自の視点から鑑定評価や鑑定協会運営について問題提起を続けているBlogに元鑑定協会副会長・平澤春樹氏の主宰する「APPRAISAL OPINION」というサイトがある。このサイトの最近のエントリーは「地価公示制度を考える」であり、既に四稿が公開されている。
この論考の中で氏は「いわゆる新スキーム・取引価格情報公開制度と地価公示取引事例について述べている。平澤氏の論点の幾つかを茫猿は肯定するものであるが、いささか急進的に過ぎると考えたり、急がば廻れと考える論点も少なくない。
氏は地価公示制度が曲がり角に差し掛かっているという。
「地価公示価格が発表され続けて30年以上も経過しており、その目的や使われ方も時代と共に変化していると思われるので、制度の発足当初の社会経済状況に立ち返って、改めて考えてみる必要があるのではないかと思います。」
茫猿も同様に考える。コンピュータもネットワークも存在しなかった制度創設当時の地価公示であれば、一月一日時点の公示価格を三月下旬に公示するのも致し方なかったであろうが、デジタル化が進みネットワークが整備されている今は、さらなる速報性が求められると考えるのである。公示評価の現場にいる者として、価格時点と公示時点の一段の短縮には相当の困難さが内在していることは重々承知している。地価公示というものの存在感や正確さを重視すれば、今以上の期間短縮は難しいのかもしれない。それでも他の政府公表資料や指標との対比を考えれば今少しの速報性があってもと考えるのである。
その意味では、地価公示速報とか四半期概報というような現行制度を補完する情報開示が考えられてもよかろうと思われる。この点に関しては、以前の記事でもふれたことであるが、今回の2008/01公示では「地価LOOKレポート」が公表されているし、以前に実施されていた「短期地価動向調査」の再実施も検討されてよいのであるが、折りしも1970年に発足した公示制度が2010年には制度創設40年を迎えるのであり、この機会に様々な改定が検討されていると聞こえてくる。この改定には鑑定協会が主体性をもって市民や市場の要求に応えてゆくべきであろうと茫猿は考えるのである。
また取引価格情報開示制度により収集された膨大なデータを有効に活用した「取引価格情報リポート」とでも云うような新しい情報開示も検討されるべきであろうし、『鄙からの発信』で以前にもふれたような、それらのデータを基礎資料とする統計解析結果も世に問うべき時期にきているのではと考える。
前述のコンピュータ利用やネットワーク化という観点からすれば、従来型スタイルの延長線上における鑑定評価のデジタル化という現在追求されている方向と並行して、大量データを駆使する統計解析的あるいは数値比準的な評価スタイル(傾向分析的スタイル)も検討されて然るべきと考えるのである。
何より大事なことは、そういった作業に不動産鑑定士が主体性をもって取り組むことが望まれていると思うし、そのような不動産鑑定士や鑑定協会の取組が不動産鑑定士の社会におけるプレゼンスを向上させてゆくと考えるのである。
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