三陸気儘旅・晴耕雨鑑

以前に記事にした予定のとおり、10/03~10/05と三陸路気儘旅をしてきました。南三陸鉄道やら気仙沼大島の朝陽やら貌鼻渓やら、他にも中尊寺に毛越寺などなど記事の種には事欠きませんが、先ずは読者にも興味のあることから。


【仙台の活断層と地質・地盤等に関する調査研究】
10/03は東北六県士協会連合会と宮城県士協会共催の「活断層調査結果報告研修」に参加したのは既報のとおりです。活断層地図についても汎用的な地図情報化が待たれることですが、さて、評価書にどのように記載するのかが結構な難題だろうと思われます。 宮士会のご報告では幾つかの記載例が示されていましたものの、活断層の位置と評価対象不動産との位置関係の記述など多くの課題が残されていると云えましょう。  さりながら、活断層の位置やその評価(将来活動確率)などを評価書に付記することは、今後避けて通れない要因の一つになりつつあると云えるのでしょう。
なお、「都市圏活断層図」は国土地理院で整備が進められつつあり、iNet公開も順次、充実しつつあります。
【竜安寺石庭の如き畑】
気仙沼市郊外に東北会会長小野寺氏が耕作される約一反歩ほどの畑があります。 氏いわく、「最近は晴耕雨鑑の日々です。ぜひ我が畑に栗を拾いに来て下さい。」 誘われて案内を受けたのが、写真の畑です。 竜安寺の石庭など寺院の砂庭は毎朝、敷き詰めた砂に箒目(砂紋)を描きます。その箒目のごとく、または流水のごとく畑の畝が作られているのです。 オシャレな畑造りだと感嘆しましたら、「いえいえ、栗の木を避けて畝を作っていったら、こうなっただけ。」と謙遜されましたが、どうしてどうして、流水のように曲線をもった畝を作るのはお手間なことだろうと思います。
それに、里芋、薩摩芋、大根、白菜、牛蒡、仙台長茄子、獅子唐、茗荷、それらに加えてハーブの数々、実に七十種類もの作物を栽培しているとのこと、まさに晴耕雨鑑の日々なればこそと思います。 小野寺氏いわく、「土に親しむようになって、より深く不動産というものが判るようになった気がします。」とのこと。 山に入って、山の荒れようを見れば、植林後間伐もせずに放置すれば、やがて山抜けを起こし災害のもととなる訳であり、耕作放棄農地が増えることは、水源涵養を阻害し景観を破壊することであり、今や公共事業自体を「鉄とコンクリート事業」から「里山保全、中山間地農地保全へ」と向かうべき時期であろうと、鄙の堂守とて思います。 鑑定士がただただ不動産鑑定評価の枠内に納まっておればよい時代は過ぎ去ったのであろうと思われます。
見事な流水曲線美の草一つ無い畑畝(ハタウネ)。毬栗も見えます。

にこやかに晴耕雨鑑を語る小野寺氏

【気仙沼大島のはま家さん】
10/04の朝、仙台駅から気仙沼線の乗客となり、南三陸海岸を車窓から垣間見ながら昼前に気仙沼駅についた鄙の堂守と同行の友人は駅前の閑散さに驚いて、観光案内所を訪ねたところ、食事の場所や観光船乗り場は南気仙沼駅ですよと教わるのである。 一駅区間だからとブラブラと二十分も歩きながら、南気仙沼駅前に着くと、ちょうど大島へ渡る船が出るところ、切符も買わずに乗船し、大島に向かいました。
大島では二組のツアー客総勢二十名ほどの後を付いてゆくかどうか迷った末に、中年以上の女性が三分の二を占める団体と一緒の昼食は避けようと、波止場付近を見まわすと目に入ったのが「磯料理・はま家」という看板です。 ダメもとと数分歩いたところ、暖簾が風に揺れています。 やれ嬉しやとオトナイをいれて尋ねれば、「ようこそイラッシャイマセ。」と迎え入れられて、先ずはビールを頼んだところ、お通しにでてきたのが『自家製・塩雲丹(ウニ)』です。 それも小鉢にたっぷりと出てくるではありませんか。 これが美味でした。

ビールよりもお酒が欲しくなりましたが、まだ昼下がり、宿も決まっていないことから深酒はよそうと衆議一決とはいっても、前期高齢者層の男二人ですが、ビールの追加に留めました。 刺身の盛り合わせは、秋刀魚、海鞘その他でしたが、酢味噌で頂くサンマも、汐洗いのホヤもこれまた美味でした。

気仙沼の秋はやはりサンマだなと言いながら、次に何かと尋ねたら鮑のバター焼きなどいかがと勧められたことです。 これも旨かった。大振りのアワビがとても香り高く、柔らかかったのです。 何よりも深い緑色をした肝の旨いこと、磯クササさえないのです。 先月、氷見の寿司屋さんで伺った「新鮮な魚は臭くありません。」という至言をここでも再確認しました。 ビール数本を加えた以上のお勘定はといえば、「岐阜の相場から気仙沼ならこのくらい。」と、二人が予想した金額のほぼ半値でした。
この「はま家」さんには後刻談がございまして、その夜、島観光の後に投宿した宿の食事がありきたりでもの足らず、昼に「はま家」さんで見かけた「気仙沼大島産の松茸」がまだ残っていますかと電話したら、「ございます。」とのこと。早速に女将に迎えを依頼して、その夜は気仙沼大島産の焼き松茸とイカ焼きなどで大いに盛り上がりました。 はま家のご主人は宮城六鱗調理士会の副会長ですから包丁捌きは言うまでもなく、その和やかな客アシライも楽しいものです。
それに気仙沼美人の女将の、少し訛りのある語りがまた耳に心地よいのです。 語尾の柔らかい語り口は上手く文字に表現できませんから、機会が有れば「気仙沼大島・はま家」さんを訪ねて下さい。 波止場に立って亀山へ登るリフトを探せば、その乗り場前です。 ご夫婦で仲良くお店を切り盛りされているから、とても和やかで、美味しくて、草枕気儘旅を十分に堪能できます。

ところで、小野寺農園で頂戴した栗は甘露煮にして、仙台長茄子と茗荷は糠漬けにして、氏の笑顔を想い出しながら楽しみました。
『追記:08/10/12』
小野寺氏に気仙沼港を車でご案内いただいた時に、たくさんの遠洋漁船(まぐろ延縄漁?)が港に係留されていました。 遠洋からマグロを満載して帰ってきた船ですかと問いましたら、「いいえ、全部廃船です。 二百海浬問題でダメージを受け、次いで燃料高騰でマグロ御殿など今は昔のこと、廃船に追い込まれて解体処分か売却処分を待っている船ばかりです。だから港は閑かなのです。」というお答えでした。 まだまだ新しい漁船が廃船となり処分を待っているという、日本漁業のつらい現状を気仙沼港岸壁に見たわけです。

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