公益法人改革&連合会化の要件

 最近はNSDI-PT案件に没頭していたから、標題のテーマについて語るのを避けてきましたが、鑑定協会企画委員会では制度改革第二次答申について、鋭意審議が進められているところです。審議の経緯については鑑定協会・会員専用サイト・委員会報告に掲示されていますから、そちらをご覧下さい。
 茫猿が両問題について何を申し上げたいかと云えば、2008年12月1日を期して鑑定協会は五年間の猶予期限付き特例民法法人となります。 その後に鑑定協会が何処を目指すかと云えば、解散はあり得ないから選択肢は「公益社団法人の認定を受ける」か、「一般社団法人移行の認可を受けるか」の二者択一となるのでしょう。


 鑑定協会内部並びに各単位士協会内部においても、公益法人認定を目指すという意見が大勢を占めているように見受けられます。現に公益法人としての活動を継続している以上は(新)公益社団法人認定を受けるのは所与であると考えられますが、ここに大きなハードルが待ち受けています。それは当該法人の主要事業が公益目的事業であるか否かの認定という課題です。この認定は公益等認定委員会が行いますが、未だガイドライン以上に具体例は示されていません。

「公益認定要件(公益法人認定法第2条第4号)」
a.学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、
b.不特定かつ多数の利益の増進に寄与するものをいう。
(鑑定協会が該当する分野としては「調査、資料収集」事業が該当すると考えられる)

 関係筋から漏れ聞こえてくる話では、関係省庁においては「地価公示は公益認定対象事業に該当すると考えられる。」とのことのようです。ここで誤解してはいけないのは、地価公示事業全体が公益事業であるというのは法の規定に基づき国費を費消する事業である以上、自明のことであるけれど、それに関与する業務、具体的には「地価公示仕様書、第一.総則並びに第二.請負業務」に記載されるところの、受注者:鑑定協会が行うところの「いわゆる取りまとめ業務」について、公益事業と認定されるか否かということです。
 地価公示関連業務が公益認定対象事業と見なされるのであれば、地価調査関連業務や相評関連業務も同様に認定対象となり得るであろうと考えられます。さらにいわゆる四大公的評価業務と数えられる固評関連業務については如何なものでしょうか。価格時点を同じくし一斉に発注されるという点からすれば同様と見なしてもよいように思われます。 また少なからぬ単位士協会では固評受託業務が事業全体に占めるウエイトが高いようにも見受けられます。
 同時に単位士協会がほとんど関与していない地域も存在するようですから、固評受託取りまとめ業務を鑑定業界としてどのように位置づけるかは重要なポイントのように思われますが、議論がそこに至っているとは見受けられません。茫猿は固評事業についても、地価公示と同様同等に位置づけるべきだと考えますが、鑑定業界のコンセンサスが其処にあるという確信はございません。つまり、『地価公示、地価調査、相評、固評の四大公的評価に関わる取りまとめ等業務は全て公益事業である。』というコンセンサス形成が必要であろうと考えますが、読者諸兄姉は如何にお考えでしょうか。
 同時に各事業の所管省庁の見解を確認することや、鑑定業界内部における『機会は均等なれど、結果の平等は保証しない。』という不文律の確立も重要であろうと考えられます。多くを語る必要はないでしょうが、固評業務受託(受注)の実態は、士協会受託、組合受託、鑑定業者受託など多様であり、そこへ【単位士協会が執り行う固評受託関連取り纏め業務は地価公示と同じく公益事業である。】とされたときに引き起こされかねない、既得権業者会員とその他の会員との軋轢を懸念するのです。このことに言及することなく、あるいは座視したままで公益法人認定を目指すことが妥当なことかなと茫猿は問い直すのです。
 四つのいわゆる公的評価、すなわち地価公示関連事業、地価調査関連事業、相評関連事業そして固評関連事業の全てについて、公益事業認定を獲得して鑑定協会並びに単位士協会事業として確立することが執行部の秘められた意向であるのならば、それはそれで良しとしましょう。 でも一部業者会員にとってはその存亡につながりかねない事柄であるから、起こりかねない事態を予見しているのか否かを茫猿は老爺心ながら懸念するのです。蛇足ながら競売評価についても、この際は鑑定協会として明確な態度を示すべき時期にあると考えられますが、如何なものでしょうか。
 公益法人認定問題と並行して、新公益法人の公正さと透明さを確保するために、組織改編が必要であり、組織改編の方向は連合会化であると云われています。各単位士協会の「自治、自律、自主」を目指す上からは、全国組織が連合会化することも時代の要請であろうと考えます。 しかし、そこに数の論理のみがまかり通ったり、少数意見無視の趨勢が形づくられるのは避けるべきと考えます。審議されている改革案では現在の全員参加型総会が代議員総会に移行することが予定されています。予想される200名前後の代議員数からすれば会員数50名未満の士協会が派遣できる代議員数は1名ということになります。 そうでなくとも都市圏に偏重しがちな鑑定協会運営がさらに偏重しかねないのではと危惧されます。
 他にも別組織として原則対等であった鑑定協会と士協会は、運用次第とはいいながら連合会という枠組みに縛られることになります。また、士協会が一括徴収する連合会費の負担割合なども負担なきところに投票権無しとはいいながら、どのような割合で負担するかも見逃せません。
 以上の二大課題は、士協会数において3/4を占めるが会員数においては1/4を有するに過ぎないと云う地方圏域と、士協会数は1/4なれど会員数は3/4を占める都市圏域との相克という長く続いている命題を、今一度問い直すことが必要なのであろうと思われます。また士業併存という基本方針が好ましく望ましいものであるのかも今一度問い直されるべきでしょう。 地価公示は云うまでもなく固評などの公的評価が業務全般に占める割合が高い地方圏にとって、それら業務の位置付けはとても重要であろうと考えられます。同時に自らの自治、自主並びに自律を考える上で連合会組織形成の有り様も座視できない命題であろうと考えます。
 士業併存問題についても、事実上、士協会である地方圏域と士業併存士協会である都市圏域とは自ずからこの問題に対応する姿勢が異なることは理解できます。であればこそ、どちらが好ましいのか望ましいのかと茫猿は問いかけるのです。 茫猿がREA-NETに関わった折りに、REA-NETは安全管理の上からも鑑定士個人加入を提唱しましたが、結果は士業併存に近い士業併用とも云うべき加入資格になっています。 茫猿はREA-NETの加入資格は個人資格によるべきと、もう一度提唱します。そしてこのNET加入資格を端緒にして、四つのいわゆる公的評価と称される評価業務についても、鑑定協会や士協会が取り纏め業務を執り行うことにより、地価公示と同様に鑑定業者が契約行為に介入することを排除して事実上の鑑定士協会を目指すべきではなかろうかと問題提起するものです。
『追記』
 08/12/01より各単位社団士協会は特例民法法人と変わるわけである。この機会に鑑定協会の対応に任せることなく、それぞれが独自にかつ連携を保ちながら、公益法人認定を目指すべきであろう。 そしてその公益事業の柱は地価調査と固定資産税標準宅地評価である。 両者の法的背景は異なっており幾つかの乗り越えなければならないハードルはあるものの、要は地価公示仕様書に準拠する仕様書による契約を目指せばよいのである。 それこそが単位士協会の自主・自治・自存・自律ではなかろうかと考える。 個々の士協会単独では難しくても各士協会が連携を保つことにより道は開けると信じるのである。 

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