パラダイムを転換しよう

06/16総会に茫猿が提出しています質問三項目は、一見してバラバラに見えますが、三項目は相互に関連する質問であり、提案です。 茫猿は10年前に鑑定業界のパラダイム転換を提唱しました。
それは変わることを厭わない、畏れないということです。 変化はリスクを伴います。 しかし、リスクを取ろうとしないことが、実は最大のリスクであると気付いてほしいのです。


質問一、新スキームについて(総会書類73頁5項)
新スキームが全面施行されて既に三年になります。いつまでも新スキームという呼称ではなかろうと思われます。調査の実態を的確に表す表現、例えば不動産センサス、せめて取引価格悉皆調査などという表現を採用される時期に至っていると考えます。

新スキームという表現が鑑定協会に現れてから既に5年以上を経過しました。 この表現が、「地価公示スキームを利用した取引価格情報開示制度」というものを、「業界内取引価格収集体制」に矮小化しています。 会員は負担の重さばかりを言い、得られた調査結果情報の閉鎖的管理に向かいがちです。 本来的に「国費を費消して実施した国民共有の財産」であり、鑑定協会と士協会はその管理を委ねられているに過ぎないということを忘れがちです。 だから、不動産センサスとか取引価格情報悉皆調査といった実態を表す表現に改めるべきであろうと提唱します。

質問二、関心を持って頂きたい関係機関の調査研究(同、75頁2-(2)項)
国土交通省土地・水資源局・土地政策課が、2008.06.05付けで公表している調査研究に、「敷地細分化抑制のための評価指標マニュアル」というものがございます。 また、第269回理事会では、「三次データの外部提供について」という報告が行われたと伺っております。
それら取引データを用いた研究対象である「ヘドニックアプローチ」や「プライシング・カーネル」について鑑定協会会員が容易に理解できるとも、それらの研究成果を直ちに鑑定評価に援用できるとも考えませんが、それらは鑑定評価が科学としてさらにその位置を高めてゆくであろう得難い機会と考えます。

現行の新スキームと呼称される取引情報収集体制が、脆弱なガラスのスキームであることは賢明な執行部の皆さんはお気づきであろうと思います。 鑑定協会は学術研究目的の利用については、管理する資料の開示に積極的であるだけでなく、さらに一歩進んでその種の調査研究を主導すべきであろうと考えます。 そして、そこで得られた研究成果や分析結果を社会に開示し、その情報開示を通じて鑑定士のプレゼンスを向上させ、脆弱なガラスのスキームをディファクト・スタンダードに転換させるべきと考えます。 それは鑑定評価の精度向上にも、技術力向上にも、より科学的アプローチの実現にも大きく寄与するものであろうと考えます。

質問三、地理空間情報の活用について(同、74頁5項)
各位のご理解のおかげで、地理空間情報活用については昨年度NSDI試用版モデルを構築して全会員に公開できました。 しかし、今年度運用版モデルの構築並びに情報開示モデルの構築に着手するに際しては、協会内部においては関係する委員会相互の緊密な連携、試験運用に参加していただける士協会や地価公示分科会の募集、さらにNSDIモデルは地価公示業務や取引価格悉皆調査(新スキーム)と不即不離の関係にあることから関係機関の理解と支援が不可欠であると考えます。

新スキームが不動産センサスとして名実共に存在するために、また社会に有益な不動産情報を発信するためには、現状の時系列的取引価格情報(テキスト・データ)に”地理情報:緯度経度情報”を加えること(イメージ・データ化)が必須であろうと考えます。 地理空間情報を加えて不動産情報が三次元化することにより、その基礎データの有用性は飛躍的に向上するものであり、分析結果の有意性が向上し、社会への発信情報の有効性が高まると考えます。 なによりも鑑定士自身の情報利用効果の向上発展が期待されます。
鑑定士は変わることを畏れてはならない。 変わろうとしないこと、リスクを取ろうとしないことが、実は最大のリスクであると気付いてほしいと考えるのです。
【いつもの蛇足である。】
麻生内閣と自民党は「かんぽの宿問題」、「マンガハウス問題」、さらには「敵基地攻撃能力問題」などで、四分五裂状態にある。まさに末期的症状といえるであろう。 鑑定業界も逆風が激しく、近年勢いの強かったカタカナ名鑑定事務所(業界ではデューデリ&ファンド系新興勢力とも云う)を中心にリストラの嵐が吹いていると聞く。 こんな時こそパラダイム転換を畏れてはならないし、神戸会長はじめ、緒方、小川、内田各副会長の指導力と先見性に期待申し上げるのである。

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