他人の懐事情

 国交省サイトに、平成20年不動産鑑定評価事業実績報告の集計結果が公表されている。 暑気払いにとちょっとした集計組み直しを行ってみたら、意外な結果が認められた。 ただしH20年実績報告はH21年固評評価替の報酬を含むものであることから、平年次は自ずと異なる結果が出ることは当然である。 ちなみにH20年実績は知事登録業者において対前年比+52%、大臣登録業者において同12%、平均して+39%であるから、変動予測も加えれば、H20数値の100/145辺りが平年次:H21実績値になると予想しておけばよかろう。 また結果は意外なものではなく、全国の実態を承知していれば意外でもなんでもなく当たり前のこととも云えるのであろう。
《追記:09.08.07》
 国交省公表のH20事業実績集計の内、都道府県別集計:表11.都道府県別事務所数及び鑑定業者に従事する不動産鑑定士等数について、滋賀県数値には鑑定士数が事務所数の二分の一という、明らかな誤りが認められましたので、組み替え集計結果を訂正しました。 ご指摘をいただいたM.Y氏にお礼申し上げます。


 評価受託件数も報酬総額も東京都がダントツの一位である。 これは経済の中心地であり、鑑定士数も多いのだから当たり前である。 しかし、大臣登録、知事登録合わせた鑑定士等一人当たり報酬額では佐賀県が一位、次いで秋田県、青森県の順になる。佐賀県は平均値の2.6倍である。 この三県は鑑定士数が少なく、いずれも二十名前後である。
【H20年事業実績集計・組替ファイルを開く】
 興味あるのは依頼1件当たりの報酬額では、神奈川県がダントツ1位、次いで東京都、大阪府の順になる。神奈川県では平均値の2.2倍である。 鑑定士一人当たりの受け取り報酬額では、24位の神奈川県を別にすれば、不動産鑑定士数が百名以上のいわゆる都市圏域はいずれも37位以下に並んでいるのである。
 都市圏域といえども固評業務に全く無関係というわけではなかろうから、平年次数値は多少変わるにしても、業者単位でなく鑑定士単位で見れば都市圏必ずしも余裕有りというわけでも無さそうである。 並行して興味あるのは大臣登録業者に属する鑑定士等数がH17年1,153人をピークとして減少しつつあり、H20年では960人になっていることである。 この間、知事登録業者所属鑑定士数は減少は示しているが、大臣登録ほどの減少率ではない。
 ただし、知事登録業者における平年次実績報酬額とみてよい、H16年が対前年比▲5%、同じくH19年が▲4.2%と漸減傾向を示しているのが一番気にかかるのである。 H21年数値もさほど期待できそうにないことから、この漸減傾向を回復させる手立てが最も期待されることであろう。 東京会が「いまこそなりたい不動産鑑定士」という書籍を刊行しているが、業務量漸減傾向のなかで、いつまで楽観的なタイトルを広報できるのか、よそ事ながらも気がかりと云えば皮肉になろうか。
 実績報告集計からは他にも興味深い事柄が読めるが、つまらない誤解を招くといけないから、詳細は添付ファイルや国交省公表詳細データに譲るのである。 なお、先にも述べたことであるが、H20年事業実績値は固評評価替え年次であることにより、平年値を乖離する結果が得られている。 平年値あるいは通算値という意味では、H19~H21通算集計値が最も実態を表しているものと云えよう。

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