NSDI-PT・2010

 NSDI-PTについて、2009年度事業の実施概要が固まりつつある。 もう二月だから、今頃に2009年度事業云々もないのだが、しょせん、どのようなセクションでも期限が近づいてから慌てるというか、一気呵成に進めるというのが相場というものである。 先送りよりはましだと思うし、それなりの下準備は進めてきたから別段”泥縄”とも思わない。 いずれにしても100%を目標にして80%が実現すれば上々なので、ひとりで動いているわけでもないし号令と共に進撃という訳でもない。 60%で良しとせねばなるまいし、それがオトナの考えというものでもあろう。


 さて、今の時点で総てを開示できるものでもない。そうでなくとも微妙なプロジェクトである。 扱う情報・データの範囲についてさえ同床異夢だし、その開示範囲も開示方法もいいや開示自体についてさえ異論続出というか、コンセンサスがさっぱり得られていない。 禅問答に聞こえるだろうが、茫猿としては環境整備を最優先にしてきたつもりである。 先に述べたことは環境という場さえ用意すれば、いずれ落ち着くところに落ち着くというよりも、流れの先は見えていると考えている。 情報というものは、今やそういう類のものと理解しているのである。
 今後の日程であるが、近く上部委員会(情報安全活用委員会)にて、企画提案見積書並びに今回の面接調査結果を踏まえてASP業者が決定し、業務発注が行われる予定である。 それらに関して茫猿は全く関与しないが、概ね今の心証が覆ることは無かろうと思っている。
 2008・β版のバージョンアップ並びにGIS-ASP利用に関して、その構築を終える時期は今年度末を予定し、一般開示は2010/04早々が予定されている。 2010/05に開催が内定していると聞く「2009不動産鑑定評価シンポジウム(東京にて開催)」に併催して、プレゼンテーションを実施したいとも考えている。 実証実験に応募いただいた14士協会では2010/04以降のなるべく早い時期に、所属会員宛の事例等のオンライン地図閲覧・運用を開始したいと考えているところでもある。 並行して固評標宅についても、2010年前半の早い時期に、オンライン閲覧が可能となることが望ましいと考えている。
《2008・β版のバージョンアップ》
 さて、NSDI-PTのうち、2008年度構築β版のブラッシュアップは特にふれる必要も無かろう。 REA-NETと一体化したREA-MAPの構築は既に既成事実になっている。 あと二ヶ月もすればその姿が見えてくると云うか、少なからぬ範囲に開示されるであろう。 現在REA-NETにてREA-JIREIなどを使っている鑑定協会会員ならば容易にイメージできるであろうが、REA-NETのTOP画面にREA-MAPアイコン(ボタン)が表示され、其処をクリックすれば所属士協会エリアの地図が表示されるのである。
 地図が表示されたあとは、地図上に何を表示させるかである。 地図の中心とする所在地を地価公示や地価調査から指定するか、所在地番を入力するかという程度のことであり、現在既に利用可能な各種ネット地図の利用方法と大差はない。 大きな差といえば、所属士協会エリアに地図表示が限定されるということである。 この点はセキュリテイを重視したイントラネットでの地図閲覧だから当然のことである。
 続いて取引事例や固評標宅の表示であるが、これは各単位会の方針によって表示されるデータの種類も内容も異なる。 ただ冒頭に述べた環境整備という立場から云えば、利用可能なデータ総てを表示できる基盤は整備する方向で進められている。 誤解が生じるといけないから、これ以上は述べないが、原則としてJIREI10.txtというフォーマットをベースに考えればよいのであり、そのフォーマットでのデータベースを準備し、総てのデータをそのフォーマットで受け取れば表示が可能ということになろう。 方法論とか技術論としては様々な展開があろうが、それは茫猿の役割ではなく技術スタッフの持ち場であると考えている。
 一つ一つを造り込まないという考え方を以前に述べたことがあるが、この場合も同様である。一つの限られたデータの搭載に特化すればするほど他のフォーマット(形式)のデータ搭載が煩瑣になるものである。 一つ一つのデータについてその質及び量について不満が残る程度がすべからく佳いと考えている。 どうしても何か特定の項目を実現したいのであれば、それはその際にカスタマイズすれば済むことである。
《2009年NSDI-PT:GIS・ASPの利用》
 かねがね述べてきたことであるが、NSDI-PTと云い、REA-MAPと云い、総てはどのような地図を利用するかが肝心なことと考えている。 地図自体もさることながら地図を提供するASP業者が提供するAPIも含めた有り様が無視できない重要事項であると考えている。 以下に今の段階で開示できる、開示しても構わないであろうと考える項目について述べてみるから、読者自身で考えてみていただきたい。 この比較で重要なのは当然、毎年のランニングコストであるが、それのみの比較では不十分であって機能比較が欠かせないのである。
『A社の提案』
 A社の提案は毎年のランニングコストは比較的低額であるが、地図の印刷フィーとジオコーデイング費用が追加加算される。 他社と比較して著しく多額とは認めないし、詳細地図(1/2500)には定評を認める。 しかし、A社の提案ではルーテイングデータのクライアント側サーバ保存を認めていない。 それではお絵かきシステムと何ら変わりないこととなる。 NSDI-PTの主眼が自動取得データによるデータ解析、ひいては地価動向分析にあることからすれば、ルーテイングデータの取得並びに保存は欠かせないところである。(総合比較C)
『B社の提案』
 B社は都市圏域を中心にしてファンが多い。見積額については見込PV数を小さく見たことから結果として多額になったが交渉の余地はあるだろう。 ルーテイングデータの保存も認めている。 しかし、地図印刷フィーが高いことと、詳細地図に難点が認められる。 今後に搭載が企画される都計図や学区図、状況類似地区等のポリゴンデータへの対応に疑問が残ることも留意されなければならない。(総合比較B)
『C社の提案』
 C社は提案内容や既存の提供先からすれば、公開地図サービス業種中心のように認められる。NSDI-PTにおける利用とは若干姿勢が異なるように見受けられる。 同時に印刷フィーとジオコーデイング並びにAPIの開示性に不確定要素を残している。 特徴的なのは京都市や札幌市に存在する通名にも対応しているところである。 (総合比較A)
『D社の提案』
 D社はランニングコストが定額かつ低額である。 詳細地図もあるし京都・札幌の通名にも対応しており、印刷フィーやジオコーデイング費を追加するとしても、総計額として安価と認められる。またNSDI-PTの趣旨も他社比較の上では理解されているように認められる。 もし難点を認めるとすれば、見積額が比較低位であることかもしれない。 安さで選択することに躊躇するのである。 (総合比較A)
※ジオコーデイング
 所在地のテキストデータから緯度経度情報を取得することをいう。 デジタル地図に地点を表示するために必須アイテムである。 カーナビで住所を入力したり、電話番号を入力すると目的地を瞬時に示してくれる機能がこれである。 いわゆる新スキーム調査でこのカーナビ機能を利用している読者も多かろうと思われる。
 ジオコーデイングには日本測地系と世界測地系があるが、国土地理院は世界測地系に移行しつつある。 基本的に住居表示対応であるから、不動産登記簿情報とは若干の差異が生じることが多い。 この差異について、どのような方法で修正を加えるかが、次年度以降の課題ともいえる。 最も望ましいのはGPS機能を有している携帯電話で現地から緯度経度情報をサーバに送信する方法であるが、まだ時期尚早という認識である。
※PV
 アクセス数の単位の一つで、ページビューという。 普通は地図画面をスクロールする毎にカウントされる。 5千名の会員が年間に百回、REA-MAPに接続し、画面を十回スクロールすれば、PV数は5百万である。 会員の年間接続数、1接続当たりの画面スクロール等回数の推定によって、数値は大きく変動する。 試行しなければ判らないと云うのが本当のところである。
※ルーテイングデータの保存
 ある地点からある地点までの経路をたどること。 本件ではある地点を指定し、当該地点から最寄りのJR駅、一般私鉄駅、地下鉄駅、市区町村役場、小学校、大型・複合商業施設、等々の施設を検索し、さらに当該施設までの道路距離を計測することをルーテイングと称している。 さらにそこで取得された施設名称と距離データを鑑定協会サーバに保存して、事後に解析データとして利用することを指している。
 ルーテイングデータが何故重要かと云えば、調査主体の恣意性が介在しないこと、計測ミスが存在しないこと、そして調査主体の負担を軽減できることにある。 最も重要なのはそういった自動取得される属性データを基礎にして、地価の動向分析等をリアルタイムに行い、その結果を広く社会に開示してゆくことにある。 いわば鑑定士が自らの総力を挙げて作成する”地価のベンチマーク”を世に問うてゆくということにある。 云うまでもないことだが、属性データを含めたそれらの基礎資料は鑑定評価を大きく変えてゆく端緒になるであろうと考えている。 いわば”鑑定評価に科学的思考方法”を導入しようと云うことである。
 いうまでも無いことだが、ASPサーバへのアクセス時点での随時データが必要なのではない、調査時点(取引時点に準じる)のデータが必要なのである。 また取得する施設の種類項目は士協会毎での初期設定を考えており、任意設定は当面のところ考慮外である。
※ASP (Application Service Provider)
 、業務用のアプリケーションソフトをインターネットを利用して、クライアントに提供する事業者あるいはそのサービスを云う。 クライアントはインターネット接続環境で、ブラウザを使ってアプリケーションソフトを利用する。 本件の場合は地図ソフトを利用することである。
※API (Application Program Interface)
 あるソフトウェアを開発する際に使用できる命令や関数の集合を云う。 その出来不出来、開示の範囲・姿勢が開発に際して大きく影響を与える。 そこから先は、こちらで請けましょうなどというASP業者は心許ないのであるし、開発費用も多額になったり満足できないものとなる場合がある。
※鑑定評価に科学的思考方法の導入を目指すということ
 鑑定評価基準は、鑑定評価は鑑定士の知識、経験、判断力に依存すると云うが、いわば高度な職人的手法とは次元を異にする方法論を模索したいのである。 これは「練達堪能な技術力に支えられる鑑定評価」を否定するものではなく、新たな方法論の構築であり、結果として鑑定評価を支えそして裏打ちする手法を得ようと云う試みである。
 無原則のカオスに見え、ひたすらエントロピーの増大に向かうようにみえる社会事象にも「有効利用の実現」とか、「効率的資源配分」といった人智が働くことにより、エントロピーの減少に向かうのではなかろうか、同時にそこには何かの法則が潜んでいるのではなかろうかという仮説に拠るのである。 その仮説に基づいて解析手法を組み立てることができれば、何かが見えるのではと期待するのである。
 鑑定評価基準が世に公表された1965年にはパソコンは存在しなかったし、新スキームと呼称される全数・悉皆調査もその暦年データも存在しなかったのである。それらが共に存在するようになって数年を経過した今において、パソコンと悉皆調査データと地理情報を駆使することにより何かが得られないか、得られるであろうという仮説に身を委ねるのである。一つ一つの取引事例は様々な個別事情によって形成されるであろうが、全体としては社会的かつ経済的存在である「不動産の然るべき価値」というものに導かれて、それらの取引価額は形成されているであろうという仮説から出発するのである。 
《 三次元にあらず  (2009年8月 2日) 》
《 情報は皆のために  (2009年6月25日)  》
《 新スキーム(名)を捨てる時  (2009年6月20日)  》
 

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NSDI-PT・2010 への1件のフィードバック

  1. GIS-REA のコメント:

    お疲れ様、プレゼンを楽しみにしています。

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